台湾プロ野球データベース コラム集

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2022CPBLドラフト指名選手リスト 台鋼(1~11巡目)

*1

 

曾子祐(ツェン・ズーヨウ) 平鎮高中 180cm 80kg 19歳 右右 SS

〇守備 コンタクト 走力 △外角 メンタル

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 不作と呼ばれる今年のドラフトで飛び抜けて評価が高い高卒SS。中平國小-新明國中-平鎮高中と桃園の名門でプレーを続けたエリートで、中学ではSS兼投手としてプレー、高校入学時は1学年上に李灝宇(フィリーズ)がいたため最初は2Bに回ったが、李灝宇の怪我に伴いSSに。高3ではキャプテンを務め「4番・SS」の重責を任された。そのような中でも高1、高2の玉山盃ではベストナイン、高2の高校野球リーグでは野手MVP、高3の高校野球リーグでは大会トップの打率.452、ベストナインに選出されるなど国内の大会では傑出した成績を残してきた。打撃は空振りが少なく、失投をしっかり捉える。一方で外角のボールには脆さを見せ、強豪校相手に結果を残せていないためメンタルに懸念がある。走塁は平均以上で積極的に次の塁を狙う姿勢が見え、守備はリズミカルで足捌きも良く、打球判断も素早い。「長打力を落として打率と守備力を高めた林承飛(樂天桃猿)」「江坤宇よりも守備力では劣るが、打撃では上回る」とのスカウトの評価がある。来年以降2~3年は同レベルの高卒遊撃手が出てきそうにないとの見立てからも、評価が高まっている。

 

伍祐城(ウ・ヨウチェン) 平鎮高中 181cm 86kg 18歳 右左 RHP

〇ストレート スライダー メンタル △健康

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 新球団のエースとなりたい右腕。中学から最速143kmをマークする投手兼外野手として大きく注目されるも、高校1年時は骨棘の除去手術を受けた影響でほとんど登板機会がなく、また2年に入ってからは地震による階段での転倒で右手を傷め手術を受け、2年後半からようやく実戦復帰。復帰後はリリーフ、先発の両方で目覚ましい活躍を見せ、昨年の黒豹旗ではリリーフとして重要な場面を抑えMVPを獲得。スムーズなメカニクスから速い腕の振りを見せ、ストレートはコントロール、質ともに申し分なく高め、低めどちらでも空振りが奪える。スライダーは125~130km前後で曲がりが鋭く、ベース前で急激に落ちる。また投球比率は少ないながらフォーク、チェンジアップも投じる。U-18ワールドカップではメンタルの強さを評価され抑えを務めた。台湾人エースが将来像だが、先発としてはスライダー以外に勝負できる球種を増やしたい。

 

紀慶然(ジ・チンラン) 中国文化大学 175cm 75kg 20歳 右左 SS

〇守備 走力 △パワー 攻守の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 華麗な守備が魅力の大学生SS。小学生からSSとしてプレーし、大学入学後は守備の動きがより軽快になり、すぐにレギュラーとして出場。今年の春季リーグでは打率.528をマークした。最大の武器である守備は捕球から送球がスムーズで、平均以上の肩を誇り、華麗なプレーを魅せる。走力は平均以上。打撃はスイングスピードが速く、バットコントロールも良いが、打球の多くはセンターから左方向で、引っ張った打球はゴロが多く、パワー不足。攻守の安定感もまだ不足しているため、二軍で経験を積み、新球団でSSレギュラー、そして上位打線を任せられる存在になりたい。

 

謝葆錡(シェ・バオチ) 国立体育大学 184cm 87kg 23歳 右右 RHP

〇球威 健康 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 大学で成長を見せた右腕。昨年のドラフトで指名されず、2度目の指名となった。高校時代は投手兼捕手で、大学入学後は1年から捕手としてレギュラーとなったが、3年の9月に投手転向。リリーフからスタートし、4年時は先発に転向。オーバースローから角度あるストレートは先発では平均136~140km前後をマーク。変化球は主な勝負球としている落差の大きいフォーク、スライダー、カーブ、チェンジアップと豊富だが、コントロールが課題。現状は変化球の状態が悪い際はストレート中心の投球で抑えているが、プロでは変化球のクオリティを高める必要がある。球威のある投手としては投手として肩の消耗も少なく、これが上位指名に繋がったか。2年後、一軍の先発ローテーションを守れる存在となりたい。

 

廖奕安(リャオ・イーアン) 国立体育大学 175cm 80kg 19歳 右右 C

〇キャッチング インサイドワーク △打撃

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 予想外の上位指名となった捕手。18年にはU-15ワールドカップ代表に選出。成徳高中でも攻守で高い評価を得ており、国立体育大学でも1年から主戦捕手として活躍、昨年の大学野球リーグ優勝の陰の立役者となった。打撃よりも守備に優れた捕手で、特にキャッチング、インサイドワークに優れているとの評価が多い。新球団が大学1年生の捕手をこの順位で指名したことからも期待の大きさが伺える。来季は二軍で経験を積み、攻守のレベルをより向上させたい。

 

顏清浤(イェン・チンホン) 台湾体育運動大学 175cm 75kg 22歳 右左 OF

〇走力 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 足とコンタクト能力でかき回す外野手。高苑工商時代は主に上位打線に入り、19年の高校野球リーグでベストナインを獲得。大学は台湾体育運動大学でプレー。細身の体格で、パワーはないものの野手のギャップを抜く打撃で、バントなどの小技も器用にこなす。俊足も武器としていることから、プロでも嫌らしさのあるアベレージヒッターとして活躍したい。

 

林家鋐(リン・ジャーホン) 国立台湾体育運動大学 175cm 72kg 20歳 右左 SS

〇バットコントロール 内野3ポジション △経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 内野のユーティリティーとして活路を見出したい選手。高校時代はパワー不足も、大学進学後体格ががっちりとし、パワーも向上。バットコントロールも良好で広角に打球を飛ばせる。守備はSS/2B/3Bの3ポジションをこなせ、守備範囲と安定感は平均。走力は平均以上。体格が細身で小柄であり、また高いレベルでの実践経験に乏しいことからプロで打撃に苦しむ可能性が高い。まずはバックアップから出番を得てアピールしたい。

 

黃紹睿(ホァン・シャオルイ) 国立台湾体育運動大学 175cm 80kg 20歳 右右 RHP

〇投球術 変化球 コントロール △球威 アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 完成度の高い右腕。興大付農では小柄な体格、球速も目立つものがなかったため注目を集めていなかったが、大学入学後から先発として頭角を現し、昨年の大学野球リーグでは2勝 31.2IP ERA0.57と活躍し投手賞を獲得。陳冠宇(樂天桃猿)から佐々木千隼(ロッテ)に似ていると評された投球フォームから、ノビのあるストレートは今年のCPBLトライアウトでは自己最速の146kmをマーク、平均130km後半。これに加えてスライダーと110km前後の遅いカーブ、125km程度の落差あるチェンジアップを組み合わせ、球速差と落差で打者を翻弄する投球が持ち味。コントロールも良く大崩れしないため、計算できる先発投手として存在価値は高い。体格が小柄でアップサイドは小さいとみられるがプロ入り後どこまでストレートの球威を増し、変化球のレベルアップを図れるかがポイントとなりそうだ。

 

陳宇宏(チェン・ユーホン) 安永鮮物 180cm 72kg 21歳 右右 RHP

アンダースロー コントロール △変化球

主要国際大会経歴(高校以降) 21年:U-23ワールドカップ

 苦難を乗り越え輝きを見せたアンダースロー。高校1年までは野手も、出場機会を増やすため2年生で投手に転向すると、3年時にエースとなった。大学は稲江科技曁管理学院に進学も、1年時に野球部が休部。その後環球科技大学に転校し、チームを大学野球リーグの一部昇格に導いた。昨年は社会人の安永鮮物に入団、U-23ワールドカップ代表に選出され、ERA0.00 2勝で最優秀防御率、先発投手としてベストナインの活躍を見せた。最速133kmのストレートは、アンダースロー特有のシンカーに近い軌道を辿り、スライダーと稀にチェンジアップを織り交ぜる。コントロールの良さも相まって内外角のコーナーに決まりだすと好調のサイン。一方でスライダーは110km程度と遅いためか打者に見極められることが多く、変化球の球威をアップさせたいところ。久々に純粋なアンダースローの先発投手が一軍で活躍できる日を楽しみにしたい。

 

黃劼希(ホァン・ジェシ 穀保家商 177cm 75kg 18歳 右右 2B/SS

〇コンタクト 走力 △パワー 守備の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 江坤宇(中信兄弟)のような存在になりたい高卒内野手。1年時は2Bメインも、2年以降はSSレギュラーの劉俊緯の故障などでSSを守ることもあった。20年の黒豹旗、昨年の高校野球リーグでは2Bでベストナインを獲得。打撃は低めのボールに強く、強いライナー性の打球が多い一方、パワーに乏しい。運動能力は高く、走力は平均以上。肩と守備範囲は平均で、守備は華麗なプレーを見せる一方で安定感を欠く場面も見受けられ、安定感アップが課題。今年はU-18ワールドカップに代表入りを果たし、3BとSSを守る機会も増加しているが、プロでも内野3ポジションを高いレベルで守れる選手として価値を示したい。

 

高聖恩(ガオ・シェンエン) 国立体育大学 182cm 74kg 22歳 右右 OF

〇守備範囲 コンタクト

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 走攻守にバランスの取れた外野手。南英商工では4番を打ち、国立体育大学に進学後もCFとしてプレー。守備範囲の広さ、コンタクト能力に定評がある。今年の春季リーグでは打率.353 OPS.862をマーク、U-23ワールドカップの強化チーム入りを果たした。

 

陳柏清(チェン・ボーチン) 安永鮮物 182cm 88kg 24歳 左左 LHP

〇コマンド △球種

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 先発ローテーション入りに期待したい左腕。南華大学を卒業後、社会人の安永鮮物でプレー。大学では3年時に肘の靭帯を部分断裂しPRP治療を選択しリハビリとトレーニングに励むと、4年時には自己最速の144kmをマーク。どっしりした下半身を持ち、130km後半のストレートと120km前後のスライダーをコーナーに集めて打ち取る。球威があるわけではなく、先発として活躍するには今後球種を増やすことが不可欠。貴重な左腕先発として新球団で試合を作れる存在になりたい。

 

曾品洋(ツェン・ピンヤン) 南華大学 188cm 83kg 23歳 右右 RHP

〇ストレート 体格 △経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ブランクを経て飛躍した大学最速右腕。兄は昨年まで中信兄弟でプレーした曾家鋐。中学3年時の右手尺骨の骨折の治療のため一度野球を諦め、高校ではプレーしていなかったが、大学で再開。入学は中華医事科技大学も3年時に南華大学に転校。プレー環境の整った南華でレベルアップし、今年のCPBLトライアウトでは参加者最速の153kmをマーク。変化球はスライダーとカーブ。メカニクス、デリバリーもスムーズ。実戦経験は少ないためこれから場数を踏み、恵まれた体格を生かした力で押せるリリーフ右腕として勝ちパターンに入りたい。

 

陳翊瑄(チェン・イーシュエン) 中国文化大学 175cm 75kg 20歳 右右 RHP

〇スタミナ 内外角の投げ分け △体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 2年生にして中国文化大学のエースとなった右腕。大学入学後はリリーフがメインだったが、2年生になりエースとして先発の機会が増え、今年の春季リーグでは16イニングを無失点に抑え投手賞を獲得。上背はないが、先発として平均142km前後、最速147kmのストレートで、浅いカウントではカーブでカウントを稼ぎ、130km前後のスライダーとフォークをウイニングショットとする。ボールに角度がない分を、内外角の投げ分けで補っている。先発として長いイニングを投げても球速が大きく落ちないのも長所。体格には恵まれておらずアップサイドは見込めないため、イニングイーターとしての先発またはロングリリーフでの活躍に期待。

 

鄧佳安(デン・ジャーアン) 輔仁大学 183cm 80kg 19歳 右右 RHP

〇投球フォーム △コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 将来の先発候補。鶯歌工商から昨年輔仁大学に入学し、1年生での指名となった。今年の春季リーグでは5試合 14.2IP ERA0.61の好成績。上から投げ下ろすフォーム+ショートアームで球の出所が見にくいフォームが特徴。先発として140km前後のストレートに、カーブとスライダーを組み合わせ、稀にチェンジアップも投じる。ストレートは角度があるものの、コントロールにばらつきがある。スタミナは平凡で、先発として使える球種が不足しているため、まずはじっくりと育成していきたい。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

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小楓康

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2022CPBLドラフト指名選手リスト 台鋼(12~26巡目)

*1

 

曾宸佐(ツェン・チェンズォ) 安永鮮物 178cm 75kg 23歳 右右 OF

〇守備 △右方向への打球

主要国際大会経歴(高校以降) 16年::U-18アジア選手権 21年:U-23ワールドカップ

 ディフェンシブな外野手。高苑工商を卒業後、中国文化大学に進学し実績、実力は申し分なかったが2年前、昨年のドラフトで指名なし。卒業後は安永鮮物でプレーし3度目のドラフト参加でようやくの指名となった。打撃はシンプルなスイングで、ボール球に容易に手を出さず、失投をしっかり捉える。打球も広角に飛ばせ、大学後半からはパワーも向上。右方向への打球を放つ際に長打が少ない点は改善したい。走力は平均レベル。最大の武器である守備は打球判断に優れ、CFとして広い守備範囲を誇る。肩は平均レベルながら送球は正確。上位打線を任されるCFとして全盛期の林哲瑄(富邦)のような活躍に期待したい。

 

陳致嘉(チェン・ジージャ) 国立台湾体育運動大学 180cm 85kg 20歳 右右 C

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ディフェンシブな捕手。2年ぶり2回目のドラフト参加での指名。17年にはU-15アジア選手権代表に選出。本人は中学時代に張志強監督(元統一)から教えられたインサイドワークに自信を持っている。憧れの選手は高志綱(元統一)。

 

馬許晧(マ・シューハオ) 普門中学 178cm 75kg 19歳 右左 3B

〇アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 率も見込める高卒3B。葉竹軒(富邦)は親戚。排湾族で、小学校から現在まで台湾南部の屏東県でプレーしてきた。打順は主に1、2番に入ることが多かった。がっちりとした体格で、スイングはスムーズでボールを捉え、広角に打ち分ける。中距離打者として育成していきたい。

 

黃秉揚(ホァン・ビンヤン) 美和科技大学 175cm 75kg 19歳 右右 SS/3B

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ディフェンシブな内野手。高苑工商ではキャプテンを務め、卒業後は美和科技大学に進学。1年生でプロ入りを果たした。大学入学後のポジションはSS/3Bを主に守り、打線は7番を打つことが多かった。

 

陳冠豪(チェン・グァンハオ) 開南大学 184cm 80kg 19歳 右右 RHP

〇投球フォーム △故障 コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 蔡仲南(元興農)のような、思い切り体を沈み込ませる投球フォームが特徴の右腕。全身を柔らかく使い、体のバネを生かしたエクステンション大のフォームから投じる、最速153km、リリーフでは145~150kmをマークするストレートで打者と勝負するファイアーボーラーだが、特別空振りを奪えるボールではなく、コントロールも平凡。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップを投じるがどれも平凡。特異な投球フォーム故に体への負担も大きく、長いシーズンを戦う上での耐久性には疑問。スタミナと技術を身に着け、タイプが似ている許峻暘(樂天桃猿)のようなリリーフとして生き残りたい。

 

蕭柏頤(シャオ・ボーイ) 美和科技大学 175cm 70kg 22歳 右右 RHP

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 大学でレベルアップした右腕。高校までは目立った実績を残せなかったが、大学に入ってからは科学的なトレーニングを取り入れたこともあり球速が10km以上アップし、去年の大学野球リーグでは自己最速145kmをマーク。先発では常時130km後半のストレートとスライダー、カーブのコンビネーション。対左打者対策としてチェンジアップなどの球種を増やしたい。

 

李欣穎(リ・シンイン) 崑山科技大学 182cm 75kg 22歳 右右 RHP

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 崑山科技大学からは初のプロ野球選手。コントロールと球質に自信があるとの本人評。最速は145km。

 

巴奇達魯・妮卡兒(バチダル・ニカール) 高苑科技大学 183cm 80kg 22歳 右左 OF

〇パワー 肩 △引っ張り中心 アプローチ 走力

 強肩強打の外野手。阿美族で、昨年原住民名に改名。爆発力あるスイングから、ボールをしっかり捉え広角に打球を飛ばす。引っ張った打球が多く、流して長打を打てる技術を身に着ける必要がある。アプローチに課題があり、変化球への空振りが多い。スピードは平均以下、肩は平均以上も送球の正確さを高めたい。現時点で攻守の成熟度は低いが、時間をかけて育成し、主軸を任せられるコーナーOFとなりたい。

 

孫易伸(スン・イーシェン) 中国文化大学 183cm 95kg 22歳 右右 OF

〇パワー アプローチ コンタクト △引っ張り中心

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 中国文化大学の4番打者。穀保家商から中国文化大学に進学。大学1年時に腕の怪我、2年時に肩の怪我で離脱があったものの、長打力ある外野手としてパワーアップ。アプローチ、コンタクトに長ける。スイング時の腕の使い方に課題があり、打球は多くが引っ張りで、右方向への打撃技術を高めたい。長打力ある選手が少ない若い台鋼では来季二軍で主軸を任される可能性が高い。

 

王博玄(ワン・ボーシュエン) 台北市立大学 184cm 76kg 22歳 右左 1B/2B/OF

〇ユーティリティー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 新しいチームで様々な役割を果たしたい野手。2年ぶり2回目のドラフト参加での指名。高校では1Bメインも、大学では加えて2B/OFもこなすユーティリティーとして活躍。昨年と今年のU-23ワールドカップレーニングチーム入り。

 

林建宏(リン・ジェンホン) 東石高中 183cm 75kg 19歳 右右 RHP

〇アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 細身の右腕。東石高中では盧孟揚に続く2番手投手として活躍。平均130km後半~140kmのストレートは今年の高校野球リーグで自己最速146kmをマーク。変化球は120km前後のスライダーがメイン。完成度は低いが、細身の体格でアップサイドは見込めるため、先発投手として二軍でじっくりと育てたい。

 

許育銘(シュ・ユーミン 台北市 180cm 85kg 24歳 左左 LHP

〇コントロール マウンド捌き △ウイニングショット 球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 安定感が武器の左腕。17、20、21年のドラフトに参加も指名はなく、4度目での指名となった。昨年の大学野球リーグでは決勝戦で先発し6.1IP/1Rで優勝に貢献。ストレートは最速144km、平均138~140km。持ち球はカーブ、スライダー、チェンジアップ。武器となる球種はないが、スムーズなメカニクスからコントロールに長け、内外角のコーナーにしっかり決める。冷静なマウンド捌きも良い。ストレートの強度が上がれば、左殺しのリリーフになれるポテンシャルを秘めている。

 

陳正毅(チェン・ジェンイ) 桃園市 181cm 68kg 22歳 右右 RHP

〇アップサイド △経験 ウイニングショット

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 離島・小琉球から誕生した初のプロ野球選手。中学まではソフトボール、高校では軟式でもプレーしU-18代表入り。環球科技大学を卒業後は社会人の桃園市でプレー。ショートアームから最速142km、平均130km後半~140km前後のストレートに、変化球は120km前後のスライダーを主に投じるが、打者を打ち取るウイニングショットに欠ける。先発としてはウイニングショットを磨き、また硬式でのプレーも日が浅いため、二軍で場数を踏みレベルアップしたい。

 

邱邦(チョウ・バン) 台北市 170cm 80kg 24歳 右右 C

〇パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 社会人でトップクラスの捕手。昨年に続く2度目のドラフト参加で指名となった。台東出身の排湾族で、高苑工商、台北市立大学を経て台北興富發入りし、強打の捕手として活躍。今年の春季リーグでは12試合 打率.487 1HR 10打点 OPS1.192をマーク。体格は小柄ながら長打力を活かし、打撃で新球団でのレギュラー争いで差別化したい。

 

林威漢(リン・ウェイハン) 高知中央 176cm 76kg 18歳 右左 OF

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 日本の高校を卒業した年にドラフト指名された初の選手。中学を卒業後、台湾の中学生の日本の高校への野球留学を支援する団体「ACE Program 台日野球留学支援」のサポートのもと、高知中央高に入学。入学後から積極的に起用され、1年時には練習試合で智弁学園を相手に投手として6回無失点の好投。しかしその後は結果が出ず苦しんだ。転機となったのは3年に入ってからで、主にクリーンナップに入るようになり、夏の高知大会準決勝の高知戦では森木大智(阪神)からタイムリーを放った。最大の武器は打撃で、3年時に監督として指導した太田弘昭監督からは「長打力が魅力」との評価。ドラフトでは全体最後の指名となったが、中軸を任された打力と日本で学んだ技術を新球団で発揮したい。

 

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小楓康

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2022CPBLドラフト指名選手リスト 樂天桃猿+統一+中信兄弟

*1

*2

*3

 

樂天桃猿(指名8名)

宋嘉翔(ソン・ジャーシャン) 穀保家商 184cm 87kg 19歳 右左 C

〇肩 インサイドワーク 打力向上 △走力

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 強肩強打の高卒捕手。高校入学時はレベルの高さに挫折しかけるも、地道に練習を重ねレベルアップ。当初はディフェンシブな捕手との評価も、3年以降は先輩捕手が卒業し出場機会が増加。打撃にも進歩が見られ、今年の玉山盃では打率.667、9打点でベストナインを獲得した。最大の武器は守備で二塁送球が1.9秒~2秒と強肩を誇り、インサイドワーク、フレーミングも良好。穀保家商の周宗志監督からの信頼も厚く、サインもほとんどを自ら出していた。樂天桃猿は林泓育の打力に衰えが見られ、廖健富が肩の故障で将来的な1B転向が噂されている中で、実力のある高卒捕手を1巡目で指名した形となった。本人は3年以内の一軍昇格を目指しているが、早期の昇格も十分にあり得る。

 

陳佳樂(チェン・ジャーレ) 平鎮高中 183cm 88kg 19歳 右左 1B

〇パワー アプローチ △走力 ポジション

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 将来の主軸になれる可能性を秘めた二世選手。父は守備型捕手として活躍した陳瑞昌(元兄弟)。高校1年、2年時は中軸として活躍も3年時は不調に陥り、7番や8番に入ることもあったが、無事上位指名を果たした。打撃が最大の売りで、今年の高卒選手では打撃に最も優れるとの声もある。しっかりとボールを引き付け、速いスイングスピードで長打を生み出し、アプローチも良好。一方で1B守備は平均レベル、走力は体格ゆえ平均以下。1Bレギュラーの陳俊秀が今年34歳で今年はまだホームランがなく、打棒に陰りが見えてきた。即戦力としての活躍は難しく1B専なのがネックだが、樂天桃猿に欠けている長打力ある若手野手となれるか。

 

劉家翔(リョウ・ジャーシャン) 穀保家商 181cm 79kg 18歳 右左 RHP

〇球種 投球数の少なさ アップサイド △変化球のコントロール メンタル

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 これから場数を多く踏みたい右腕。中学まではC兼投手で、高校入学後に膝を傷め約1年実戦から離れた。投手に専念したのは2年からで、リリースポイントが安定せずコントロールに難があったが、3年後半になってから修正されストライク率の向上、平均球速のアップに繋がった。メカニクスはスムーズで、エクステンションも良好。最速149km、平均140~145kmのストレートに、カウント球のナックルカーブ、スライダー、勝負球のフォークと豊富。レベルアップには変化球のコントロールを高めたい。投手に転向して日が浅く、大きな大会での登板も少ないため、今後プロの舞台でメンタルに変化があるかは未知数。高校ではリリーフでの登板が多かったが、先発として育成しても面白い存在だ。

 

邱緯綸(チョウ・ウェイルン) 穀保家商 180cm 86kg 18歳 左左 LHP

〇ストレート リリーフ向き △変化球のコントロール リリースポイント メンタル

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 速球派左腕。下半身がどっしりとしたパワーピッチャーで、高校では主にリリーフとしての登板し、ピンチを多く切り抜けてきた。高校入学時は130kmだったストレートは最速146km、平均139~143kmに成長。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップを投じるがコントロールが課題。またリリースポイントが不安定で、変化球を投げる際の癖が打者に見抜かれている可能性もある。樂天桃猿は左のリリーフの層が薄く、一番の実績がある賴鴻誠も今年34歳。未来の勝ちパターン候補として育てたい。

 

林耀煌(リン・ヤオホァン) 高苑工商 183cm 85kg 19歳 右左 OF

〇守備 アップサイド △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 俊足巧打タイプが将来像の高卒外野手。1年時は3B、2年からOFを守るようになり、3年からはCFを主に守った。OF守備は安定しており、打球判断も良好。打撃はバットコントロールが良く堅実にヒットを生み出すタイプで、当てに行くスイングが目立ちパワー不足。体の線もまだ細く、プロ入り後のアップサイドに期待。

 

董順傑(ドン・シュンジェ) 大理高中 181cm 80kg 18歳 右左 SS

〇複数ポジション 肩 △打力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 器用さが売りの高卒SS。高校ではSS兼投手としても登板し最速140km。また今年の玉山盃ではRFとしても出場し美技を披露した。守備範囲は平均ながら、キャッチングが安定しており肩が強い。内外野守れるユーティリティーが将来像か。

 

洪敏暘(ホン・ミンヤン) 三民高中 175cm 85kg 18歳 左左 OF/1B/P

〇二刀流 △体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 今後に期待の高卒外野手。離島の澎湖出身で小学校から投手、野手両方でプレーし、高校から高雄に引っ越し三民高中に入学。1年時は肘を痛めた影響で野手としての出場がメイン、2年から再び二刀流としてプレーするようになり、スタメンでは野手、ピンチの場面でリリーフ登板というケースが多かった。今年の高校野球リーグでは1Bとしてベストナインを獲得。また今年の東岸連盟では台鋼ドラフト1位指名の伍祐城からホームランを放った。打撃は藍寅倫(樂天桃猿)と似たスタイルとの評価。投手としても最速143kmで評価は高く、スライダー、チェンジアップ、カットボールを投じる。球団はまず二軍で二刀流として起用する方針。体格が小柄なのがネックだが、一軍で二刀流選手が見られる日に期待したい。

 

舒治浩(シュ・ジーハオ) 陽明高中 177cm 75kg 18歳 右右 RHP

〇ストレート ナックルカーブ スタミナ △体格 投球過多 故障歴

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 陽明高中から初のプロ入りを果たした右腕。双子の弟の舒治偉とは小中高チームメイトだった。高校3年時の黒豹旗で高苑工商を相手に完封勝利を挙げたことから、その名を挙げた。速い腕の振りから先発では142~146km、リリーフでは常時145kmを超えるストレートは空振りを奪え、内外角への投げ分けも良好。変化球はナックルカーブを武器としており、落差をしっかりコントロールできる。またフォークも投球比率は少ないが大きな落差を誇る。ストレートを投げる際に一塁方向に倒れこみすぎる癖は要修正。先発として回を重ねた後も球速が大きく落ちず、先発とリリーフ両方をこなせるが、ここまでの順位で残っていたのは薄い体型、高校時代の投げ過ぎ、中学卒業前に靭帯を断裂し復帰までに1年半を要した点が影響していそうだ。

 

統一(指名8名)

黃勇傳(ホァン・ヨンチュアン) 平鎮高中 173cm 82kg 18歳 右左 2B

〇バットコントロール アプローチ 守備範囲 △外角 体格

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 卓越した打撃センスが光る高卒内野手。強豪の平鎮高中で1年からレギュラーを掴み取り、1年と3年の黒豹旗ではベストナイン、今年の高校野球リーグでは野手MVPを獲得。台鋼にドラフト1位指名されたSSの曾子祐との二遊間コンビは高校の先輩である林靖凱(統一)、江坤宇(中信兄弟)コンビに匹敵するとの声も。天性のバットコントロールを持ち、粘り強いアプローチで失投を仕留める。小柄ながら外野の頭を超えられるパワーも備えている。課題は外角球への対応で、当てるだけのスイングになる場面が多い。本人が一番自信があると語る2B守備は範囲が広くセンスの良さを見せる。ただ、高校入学後に比べて体格ががっちりとしており、スピードや体の敏捷性が落ちている点と、ボールを引き付けるあまり詰まった逆方向への打球も多く、プロの投手のレベルに苦労する可能性が高いのが心配。野球センスに頼ってプレーしてきた点も多いため、しっかりとした技術を身に着け、レベルアップしたい。将来像は広角に安打を重ねる陳傑憲(統一)のような1番打者だ。

 

林培緯(リン・ペイウェイ) 大理高中 188cm 92kg 18歳 右右 1B/3B

〇パワー 肩 メークアップ △アプローチ 走力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 プロでパワーヒッターになれる資質を秘めた内野手。元々はバトミントンをしていたが、野球の才能を見込まれ中学2年時に野球を始めた。3年時には腰痛に苦しみ、リハビリに費やしたが、大理高中入学後は1年から打撃を活かし活躍。今年の玉山盃では1Bでベストナイン。打撃は1学年上の先輩である李展毅(味全)のようなパワーヒッターで、どっしりとした体型から速いスイングスピードで強烈な打球を飛ばす。ただバットコントロールは平凡のためミスショットも多い。アプローチも要改善で、低めの変化球や高めの吊り球に手を出すケースが多く、空振りも高い。肩は平均以上で3Bを無難にこなせる。走力は平均以下。運動能力からはどちらかというと1B向きか。統一は近年1Bレギュラーが定まっていない状況が続いているため、1Bメインで他ポジションも守れる中長距離砲として育成したいところ。林岳平監督はOFも練習させるプランを明かしている。

 

林詔恩(リン・ジャオエン) 平鎮高中 177cm 70kg 18歳 左左 LHP

〇投球フォーム ストレート △対右打者 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 完成度が高い平鎮の左腕エース。中学までは投手兼OFで、高校から投手に専念。昨年の高校野球リーグでは4勝、防御率0.00の活躍でMVP、玉山盃ではベストナイン、今年の王貞治盃では防御率0.00で投手賞を獲得と結果を残してきた。体格には恵まれないものの、上から投げ下ろすフォームから、ステップ幅の長さと長いエクステンションを生かし、打者に近い所でリリースでき、球速以上の球威を感じさせる。最速143km、平均137~141kmのストレートは内外角へのコントロールも良く、高い空振り率を誇る。縦に落ちるスライダーは威力はあるもののコントロールは平凡で、カーブはコントロールに苦しみ、ストライク率も低いため修正が必要。チェンジアップは右打者の外角に落とし打者のリズムを崩す。対左打者を上手く料理できる一方で、対右打者には球数が多くなる傾向がある。負担の大きい投球フォームのため、プロ入り後は先発として長いシーズンに耐えられるスタミナがあるかが気になるところ。左殺しのリリーフとしても面白い存在だ。

 

宋文華(ソン・ウェンホァ) パドレス 185cm 90kg 26歳 右右 RHP

〇変化球 △コントロール 投球フォーム

主要国際大会経歴(高校以降) 13年:U-18ワールドカップ

 CPBL奪三振マシーンになる可能性を秘めた右腕。宋家豪(楽天)はいとこ。小学生時代から突出した実力で大きく注目され、平鎮高中3年時には153kmをマーク。U-18ワールドカップでは抑えを任された。国立体育大学を卒業後、契約金67.5万ドルでパドレスに入団。17年は投球フォームの修正に取り組んだため登板が無かったが、18~19年はA-で計40試合に登板、昨季はA+で23試合 ERA2.52と結果を残すと、今季はA+で7試合 ERA2.35、3Aでも4試合 ERA1.50とメジャーリーグが見える所まで来ていたが、その後コロナ感染もありRkに落とされたことも影響してか、6月に自ら台湾に戻ることを決意。ストレートは145km前後と以前より球速は落ちているがノビで補っており、縦に大きく落ちるカーブとフォークと組み合わせ空振りを奪え、マイナー通算のK/9は12.9。一方でコントロールには苦しんでおり、マイナー通算のBB/9は4.1。アーム投げでボールが体から離れるフォームのため、故障リスクが気になるところ。マイナーでは計74試合全てがリリーフということもあり、今季は勝ちパターンとして実戦投入される可能性が高い。

 

尹柏淮(イン・ボーホァイ) 白河商工 176cm 95kg 18歳 右右 RHP

〇ストレート メンタル △コントロール 故障

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 リリーフとして活躍したい「台湾の平良海馬」。ダブルエースとしてチームを支えた中信兄弟4位指名の阮裕智と共に、白河商工から初のプロ野球選手となった。中学3年時に肘の靭帯を傷め野球を諦めかけるも、野球部ができたばかりの白河商工に入学。1年をリハビリに費やした後、2年から実戦復帰すると球速が大幅にアップし、最速は153km。上背はないものの爆発力があり、ストレートは右打者の内角に食い込む軌道を辿る。平均でも140km台後半を安定してマークし、空振り率も高い。内角へのコントロールが改善されればよりクオリティの高いボールになる。主な変化球は縦に落ちるスライダーでカウント球、勝負球の両方で用いる。他は投球比率が少ないながらカーブ、チェンジアップを投じるが。リリーフとして勝負所を切り抜けた経験も多く、勝負度胸があるため、プロでも勝ちパターンでのリリーフが将来像。チームの先輩である王鏡銘のキャリア前半のような力で押す投球を見せたい。

 

田子杰(ティエン・ズージェ) 平鎮高中 175cm 74kg 19歳 左左 OF

〇アプローチ 肩 △パワー 高め

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 高校で打撃が順調にステップアップした外野手。中学まではOF兼投手も、高校入学後はOFメインに。打順は1年では9番、2年では2番中心に6番、7番も打ち、3年に入り3番で固定された。昨年、今年の高校野球リーグではベストナインを獲得。低めのボールをミートする能力に長け、広角に打球を飛ばす。また粘り強いアプローチで、空振りが少なく、ボール球を追いかけることも少ない。パワー不足なため長打は少なく、高めのボールへの対応は要改善。走力は平均レベルで、LF、RFがメインのOF守備は守備範囲は平均レベル、肩は平均以上。投手としても評価する一部スカウトの声もあるが、高校以降は登板機会が少なく、プロ入り後はOFでプレーすることになりそうだ。全盛期に差し掛かっているOFレギュラー陣の壁に挑むには時間を要しそうだが、焦らず走攻守のレベルを高めたい。

 

鄭副豪(ジェン・フーハオ) 台北市立大学 183cm 74kg 22歳 右右 RHP

〇ストレート アップサイド △実績

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 潜在能力に期待の右腕。高校では先発、リリーフ両方で起用された。大学に入学後はリリーフとして起用されるも3年間は低迷し出場機会も少なかったが、4年になってから140kmをマークすると、平均143km前後まで球速がアップし、最速は148kmを出すまでに成長。郭俊麟(富邦)に似た投球フォームから繰り出すストレートにはノビがあり、変化球は125km前後のスライダーと稀にフォークを投じる。細身の体格のためアップサイドに期待。下位指名ではあるが、球威も一定あるため右のリリーフとして早期の一軍昇格も見込める。

 

潘磊(パン・レイ) 高苑工商 184cm 95kg 18歳 右左 C

〇コンタクト 盗塁阻止能力 △アプローチ インサイドワーク ブロッキング

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 廖健富(樂天桃猿)のような存在となりたい打てる捕手。台東出身の排湾族で、高校から高雄に引っ越し高苑工商でプレー。1学年先輩の捕手には毛英傑(樂天桃猿)がいたため、1年時は出場機会が少なかったが、2年からは1Bで出場機会を増やし、3年からはレギュラー捕手に。打撃はコンタクト能力に長け、チャンスでの集中力も高い。今年の高校野球リーグでは打率.360、14打点でベストナインを獲得。一方で一度前傾してからスイングするためパワーを生かし切れていない感があり、打撃フォームは修正が必要。またアプローチも要改善。守備はスカウトからもまだ時間がかかるとの評価で、盗塁阻止能力には長けるものの、インサイドワークやブロッキングはこれからプロで磨きをかける形となりそうだ。統一は昨年同じ高卒捕手で張翔を獲得したが、さらなる捕手陣の強化を図った形となった。

 

中信兄弟(指名9名)

鄭浩均(ジェン・ハオジュン) 米独立 191cm 93kg 24歳 右右 RHP

〇ストレート △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:世界大学野球選手権 18年:U-23ワールドカップ 21年:U-23ワールドカップ

 球威で押したい長身右腕。桃園農工(現・北科附工)を卒業し、国立体育大学進学後は2年まで球速が伸び悩むも、その後復調し国際大会に2度出場。大学卒業時はCPBLドラフトでも全体1位指名も狙えるほどの高い評価もアメリカでのプレーを選択し、19年にドジャースと契約。20年はマイナーリーグが開催されず台湾でアマ主催の大会やポップコーンリーグでプレーしブランクを補い、9月にはU-23ワールドカップで2試合にリリーフ登板し自己最速の154kmをマーク。昨季はRkで7試合全てにリリーフ登板しERA5.40。今季はアメリカの独立リーグアメリカンアソシエーションでプレー、10試合(3先発)でERA10.47、K/9・7.2、BB/9・7.7と制球力が課題。陽岱鋼(元巨人)とはチームメイトで、グラウンド内外で多くのことを学んだという。リリーフとして平均150kmをマークするストレートと、カーブが主な持ち球。勝ちパターンが固定しきれていない中信兄弟では7、8回を任される可能性が高い。

 

徐基麟(シュ・ジーリン) フィリーズ 188cm 92kg 23歳 右右 RHP

〇投球術 △故障 経験

主要国際大会経歴(高校以降) 17年:U-18ワールドカップ 21年:U-23ワールドカップ

 アメリカでの経験を台湾で活かしたい右腕。三民高中のエースとして活躍し、卒業後フィリーズに入団。19年は故障の影響でRkで1試合の登板のみに終わり、21年はRkで5試合 ERA4.85、Aで2試合 ERA3.38と登板機会に恵まれず。同年はU-23ワールドカップ代表に選出され2試合で4.1IP/1Rと好投。今年1月にリリースされたが、これは本人が希望したとの噂もある。4月から5月までは樂天桃猿の自行培訓選手(練習生に相当)として調整。その後杭州アジア大会の強化チームのメンバーに選出された。144km前後のツーシームにスライダー、大きく落ちるチェンジアップと、ボールを動かして打ち取る投球が持ち味。フロントドア、バックドアも有効に使え、投球の引き出しが多いのもメリット。17年に右肘の靭帯断裂でPRP治療を受け、渡米後もリハビリに長い時間を費やした過去があり、健康面に不安が残る。(U-18ワールドカップは故障のため出場無し)また登板機会がRk、Aの数少ない試合しかなく、実戦経験不足も気になるところ。中信兄弟はポテンシャルを評価し上位指名に至ったと考えられ、即戦力としての起用が見込まれる。

 

馮皓(フォン・ハオ) 穀保家商 180cm 79kg 19歳 右右 RHP

〇完成度 変化球 メンタル △アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 高い完成度を誇る右腕。中学卒業時に140kmをマークした有望株で、穀保家商に入学後は1年から147kmをマーク。2年時の黒豹旗と王貞治盃では投手賞を獲得と、エースとして実績を積み上げてきた。ゆったりと足を上げるフォームから、最速147km、平均138~143kmのストレートはコントロールも良好で内外角のコースをしっかりと突ける。変化球もカーブ、スライダー、チェンジアップもコントロール良く、高いレベルで扱え、今年からはカットボールも実戦投入。中学まではSSも守っていたためフィールディングも良く、長いイニングを投げてもメンタルに大きな起伏もなく安定している。高卒投手として完成度は高いが、1年で147kmをマークして以降は大きな成長がなく、ハイフロアーな投手と言える。プロではイニングイーター向きの先発投手になりそうだ。

 

阮裕智(ルァン・ユージ) 白河商工 180cm 85kg 18歳 右左 RHP

〇コントロール △アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 制球力に優れた右腕。中学2年時に野球への情熱がなくなり、中学の野球部を退部し地域の野球サークルでプレー。白河商工でも引き続きサークルでプレーする予定だったが、発足したばかりの野球部に惹かれ、入部した経緯がある。高校入学後は球速を120kmから大幅にアップさせ、ストレートは最速147km、平均139~143km。変化球はカーブとスライダーがメインで、チェンジアップは発展途上。内外角コーナーへの投げ分けのコントロールに長ける。手足が短く体格には恵まれていないため、アップサイドは小さいとみられる。変化球の精度、先発投手として将来的にローテーション下位に入れるか。

 

盧孟揚(ルー・モンヤン) 東石高中 185cm 65kg 18歳 右右 RHP

〇球種 アップサイド △スタミナ 変化球の精度

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 器用さが光る細身の右腕。昨年の玉山盃では東石高中初の3位に貢献。中学の先輩である劉致榮(レッドソックス)を参考にした、足を高く上げる投球フォームが特徴で、長い手足を生かしたメカニクスはスムーズ。フォーシームは最速147km、平均138~142kmで、ツーシームも投じる。変化球はカウント球としてナックルカーブを用い、他にもチェンジアップ、スライダー、フォークと球種は豊富だが、クオリティは今一つ。体質のため太ることが難しく細身の体型だが、それゆえ球威を維持したまま長いイニングを投げることは難しいため、二軍でじっくりと体を大きくしていきたい。

 

陳柏均(チェン・ボージュン) 国立台湾体育運動大学 175cm 77kg 21歳 左左 LHP

〇球威 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 力のあるボールを投げる左腕。双子の兄で、弟の陳致均とは小学校から大学まで共に同じ学校でプレーし、13年のU12ワールドカップ、16年のU15ワールドカップでは共に代表入り。平鎮高中では主に金属バットの部でプレー。最速はCPBLトライアウトでマークした143kmで変化球はカーブ、スライダーを投じる。メカニクスは上半身頼みのため、コントロールにばらつきが出ており、プロでは修正が必要。現状では球威を生かしたリリーフ向きか。

 

張祖恩(ジャン・ズーエン) 興大附農 180cm 73kg 18歳 左左 LHP

〇スタミナ 健康 アップサイド △球威 コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 今後の成長に期待の左腕。中学まではOF兼投手で、高校から投手に専念。1年から2年の夏休みに大きく成長し、2年からエースに。スムーズなメカニクス、デリバリーから投じるストレートは平均135km前後で、台鋼が行ったトライアウトで自己最速となる141kmをマーク。変化球は横方向に鋭く曲がるスライダー、空振りが奪えるチェンジアップ、発展途上のカーブを投じる。長いイニングを投げられるスタミナも持ち合わせるが、球威不足で粘られ球数がかさむケースが多い。完成度は低いものの細身の体格ゆえアップサイドが見込め、右打者を苦にしない投球スタイルのため、先発投手として大きく育てたい。

 

潘泓凱(パン・ホンカイ) 合作金庫 177cm 80kg 25歳 右右 C

〇パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 退路を断って見事プロ入りを果たした捕手。09年のリトルリーグワールドシリーズでは宋文華(統一ドラフト4位指名)、歐晉(味全)、高宇杰(中信兄弟)とチームメイトで優勝に貢献した。平鎮高中、輔仁大学を卒業後、社会人の強豪2チームである台湾電力、合作金庫でプレー。どちらかと言えば守備力よりも打力に優れる捕手。中信兄弟の捕手陣は黃鈞聲と陳家駒が今年33歳になり、中堅である吳明鴻も二軍で結果を残せておらず、社会人捕手を獲得した形か。

 

李承恩(リ・チェンエン) 桃園市 168cm 83kg 26歳 右右 2B/SS

〇パワー △体格 年齢

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:世界大学野球選手権 18年:U-23ワールドカップ

 小柄なオールドルーキー。平鎮高中、国立体育大学を卒業後、社会人の安永鮮物、桃園市でプレー。18年にはU-23ワールドカップ代表に選出され、日本戦では塹江敦哉(広島)からホームランを放った。国際大会の経験もある実力者ながら、今回が3度目のドラフト参加での指名という苦労人。打撃はパンチ力があり、守備では2B/SSを守れるが、年齢と小柄な体格がネック。中信兄弟の内野にはプロスペクトが多く控えており、二軍でも優先的に使われることは少ないと予想されるが、どこまで結果を残せるか。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

小楓康

https://www.sportsv.net/articles/95992

logic

https://www.sportsv.net/articles/93442

2022CPBLドラフト指名選手リスト 味全+富邦

*1

*2

 

味全(指名7名)

林凱威(リン・カイウェイ) 米独立 178cm 79kg 26歳 右右 RHP

〇ストレート スライダー 健康 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) 14年:U18アジア選手権 19年:プレミア12

 アメリカで経験を積んだ守護神候補。中学まではSSも、成徳高中の1年途中に投手転向。半年足らずで140kmを超えエースに成長、国内外スカウトの注目を集めた。高校卒業後にダイヤモンドバックスに契約金30万ドルで入団。16~17年はRkで経験を積み、18年はA-、19年はAでそれぞれERA3点台と一定の結果を残し、19年にはプレミア12代表に選出。昨年はA+で29試合 ERA4.78、今季は2Aで11試合 ERA4.41も5月にリリース。その後、米独立アトランティックリーグのロングアイランド・ダックスに入団し19試合でERA2.18。マイナー通算K/9が8.8と奪三振能力に優れる一方で、昨季と今季のBB/9が3.9と近年はコントロールにやや苦しんでいる。最速153kmのストレートに、メジャー級と高い評価を受けるスライダーは威力があり、カーブ、チェンジアップ、フォークも投じる。現在味全は伍鐸が抑えを務めているが、球威不足は否めない。大きな故障歴もなく頑丈であることもプラス要素で、即戦力としてダブルストッパーまたはセットアッパーとしての活躍が期待される。

 

冉承霖(ラン・チェンリン) 遠東科技大学 183cm 71kg 21歳 右左 OF

〇スピード 肩 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 サプライズ指名を受けた外野手。上位指名予想をしていたメディアはほとんどない中での2位指名となった。高校は台南海事でプレーし、19年に味全が久々のドラフトに参加した際は指名候補に挙がっていたが、大学での成長を見守るため指名を見送った過去がある。大学進学後は1年時は控えに回ることが多かったが、2年から成長を見せ、走力と強肩を強みとするOFとなり、今季の春季リーグでは打率.576で首位打者に。大きなストライドで三遊間に飛んだ打球が内野安打に、外野の深い場所に飛んだ際は三塁打になることが多い。ポジションがCFであることから陳晨威(樂天桃猿)と比較する声もある。味全は郭天信や林孝程など、似たタイプの俊足外野手が一軍で出場機会を得ているため、ポジション争いは厳しいが、ギャップを抜くパワーが身に付けば差別化できる要素となりえる。

 

吳君奕(ウー・ジュンイ) 中信金融管理学院 181cm 75kg 21歳 右左 RHP

メカニクス 奪三振能力 △スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 奪三振能力の高い右腕。5巡目で指名の鄭亦軒と共に、中信金融管理学院から初のプロ野球選手となった。高校までは投手以外にもCやSSとして下位打線に入ることが多かったが、大学では投手に専念し科学的なトレーニングを取り入れ体格が逞しくなり、エースとして活躍。球速は今年147kmをマークした。下半身がしっかりとしておりメカニクスはスムーズで、140~145kmのストレートは内外角の低めにコントロールできる。勝負球はストレートと同じ軌道を辿る約130kmのスライダーを組み合わせ、今年の春季リーグでは21IP/22Kと高い奪三振能力を示した。またフォークとチェンジアップも稀に投じる。先発としては回を重ねると球速が大きく落ちるため、リリーフ向きか。

 

林子宸(リン・ズーチェン) 国立体育大学 178cm 85kg 20歳 右右 3B/SS

〇パワー 肩 △アプローチ 3B向き?

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 長打力が武器の内野手。高校時代は前半はOFを守り、後半は走攻守三拍子揃ったSSとして評価を受け、昨年の高校卒業時はドラフト参加を迷った末に大学進学。しかし大学では思ったような成績を残せず、三振の多さが目立った。打撃はスイングスピードが速く、長打を意識した引っ張る打球が多い。一方で流し打ちの技術やボール球に手を出しやすいアプローチの悪さは要改善。走力は平均レベルも全力疾走を怠らず、出塁後も常に先の塁を狙う姿勢が見える。肩は平均以上も守備範囲は平均で、大学入学後に体格ががっちりとし、敏捷性が低下していることから、3Bとしても安定感ある守備が難しくなっている。攻守に粗削りだが、プロ入り後は体重を落として、打力のある3B/SSとしてアピールできるか。3Bとしては范國宸(富邦)のような存在になれれば面白い。

 

鄭亦軒(ジェン・イーシュエン) 中信金融管理学院 188cm 96kg 22歳 右右 RHP

〇球威 リリーフ向き? △コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 困難を乗り越えた火の玉右腕。中学時代から最速141kmをマークするも、高校では投球フォームを崩しイップスとなり、3年間はほぼ野手としての出場に終わる。一時は野球を辞めることも考えるほどだったが、大学入学後はフォームショートアームに修正、科学的なトレーニングも取り入れ球速が大幅にアップ。ドラフト前に台鋼が独自に行ったテストでは、参加者最速となる155kmをマーク。がっちりした体格からリリーフでも平均150kmを投げられ、上にホップする軌道で空振りを多く奪う。変化球は全体的に質を高める必要があり、カーブでカウントを稼ぎ、右打者にはフォークで、左打者にはチェンジアップで仕留めるパターンが多い。コントロールに難があり、今年の春季リーグでは15.2IP/13BB。球威を生かすには、リリーフの方がチャンスがありそうだ。

 

許元泰(シュ・ユエンタイ) 国立体育大学 180cm 80kg 20歳 右右 RHP

メカニクス 球種 △コントロール 経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 これからの伸びしろに期待の右腕。16年にU-15ワールドカップ代表入り。穀保家商では主にOF、稀に投手としてプレーも、2年の終わりまでは金属バットの部でのプレーし、チームが強い時期と重なったこともあり注目度は高くなかった。大学進学後、投手に専念。上背は大きくないもののメカニクスがスムーズで、フォームは美馬学(ロッテ)にそっくりとの声もある。ストレートは先発時は平均137~142km。変化球は勝負球として用いる縦に割れるスライダー、カウント球のカーブ、フォーク、チェンジアップと豊富。課題はコントロールで調子の良い時はコースに決まるが、悪い時は突如はっきりとした抜け球を連発してしまう。大学2年になってから先発として実戦経験を積むようになったため、完成度は高くない。二軍で先発として経験を積んでいき、自分に適したポジションを見つけたい。

 

藍翊誠(ラン・イーチェン) 安永鮮物 190cm 90kg 24歳 左左 LHP

〇体格 △コントロール 実戦経験 球種

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 プロ入りの夢を叶えたエリート左腕。高校は男子校の名門である建国中学、大学は台湾トップの台湾大学化学学部を卒業。同大学初のプロ野球選手となった。昨年大学を卒業後、会社員として働くもオフィスでの生活が合わず退職し、2年後までにドラフト指名を目指すため、科学的なトレーニングに定評のある安永鮮物でプレー。チャップマン(ヤンキース)に似たフォームから投じるストレートは、大学4年時にパーソナルジムに通い最速130kmから142kmまでアップし、平均135km前後。変化球はスライダーを投じる。上背はありストレートに角度はあるものの、リリースポイントが安定しておらず、コントロールに課題がある。また安永鮮物ではほとんど実戦登板がなく、未知数な部分も多い。現時点の実力ではプロでは厳しいものと見られ、まずは二軍で技術を向上させたい。

 

 

富邦(指名12名)

黃保羅(ホァン・バオルォ) 平鎮高中 185cm 80kg 18歳 右右 RHP

〇コントロール 投球術 △故障歴

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 未来のエース候補。中学までは野手としてプレーしU15アジア選手権に代表選出。高校入学後に投手転向するとすぐに金属バットの大会で活躍したが、2年になり肩の違和感で長期離脱し昨年12月に復帰。復帰後は球速もアップし、今年4月には自己最速となる151kmをマーク、今年6月の王貞治盃ではMVPを獲得した。長い手足から速い腕の振りで、先発時は平均142km~146km前後のストレートで内外角をしっかりと突け、130km前後の縦に落ちる勝負球のスライダー、カウント球である120km前後のカーブ、フォーク、チェンジアップと多彩な変化球を組み合わせ、少ない球数で打者を打ち取る術に長ける。高卒ではあるが完成度は高く、まとまりのある先発投手として、将来富邦の台湾人エースになれるか注目したい。

 

潘奕誠(パン・イーチェン) 台湾体育運動大学 185cm 75kg 22歳 右右 RHP

〇アップサイド △球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 意外な高評価を受けた右腕。これまで大きな実績は残してこなかったが、味全2巡目の冉承霖と並んで驚きの上位指名となった。富邦のスカウトの中では大学投手のリストでは5位以内に入っていたという。大学では主にリリーフとしてプレー。細身の体型から繰り出す最速148km、先発時は平均137~142kmのストレートは空振り率が低いのが課題。スライダーは曲がりが大きいもののコントロールに難あり。大学では大きな成長がなく、完成された投手とは言えないが、アップサイドに期待。体作りを行い球威が向上すればプロでもリリーフ向きか。

 

池恩齊(チ・エンチ) 新北市 173cm 76kg 19歳 右左 SS

〇守備 走力 △打力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 守備に期待がかかるSS。吳俊偉(中信兄弟)は兄。もともと右打だったが、高校在学中に左打に転向。高校卒業後は社会人の新北市でプレー。SSとして守備範囲は広く、打球への反応も良好。走力も平均以上だが、打撃は非力で修正するべき点が多く、3巡目での指名はオーバーピックとの声も多い。高卒社会人で若く、二軍で打力をどこまで伸ばせるかが今後を左右しそうだ。

 

蔡佳諺(ツァイ・ジャーイェン) 開南大学 183cm 84kg 20歳 右右 OF

〇パワー

主要国際大会経歴(高校以降) 19年:U-18ワールドカップ

 主砲になるポテンシャルを秘める実力者。小中高で世界大会代表に選出され、19年にはU-18ワールドカップ代表として世界一を経験。国内大会でもタイトル獲得の常連だった。大学は中国文化大学に進学したが、出場機会を求めて開南大学に転校。がっちりとした体格から、スイングスピードの速さと爆発力で長打を生み出す。走力は大学で体重を増やしたことから平均レベル、肩と守備範囲も平均レベルなため、コーナーOFを難なく守れるだけの守備力は備えている。富邦OFの課題である「打てるけど守れない」を解消できる存在になれるか。

 

林岳谷(リン・ユエグ) 国立体育大学 178cm 70kg 21歳 右右 2B/SS

〇守備 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 華麗な守備が売りの内野手林英傑(樂天桃猿コーチ)はいとこにあたる。穀保家商時代から足捌きや打球判断に長けた守備型の内野手として高い評価を受けた一方で、打撃は大きく成長を見せず。大学では1年からレギュラーとなり1番打者を務め、2Bをメインに守るも去年からSSに挑戦。SSとしては守備範囲が広く華のあるタイプで、肩の弱さを送球の速さでカバーしているが、エラーが多く安定感については改善の余地がある。細身の体型ながら大学進学後はパワーに向上が見られたが、スイングのフォロースルーが大きすぎるゆえゴロの打球が多く、長打が出にくい。また外角のボールを体ごと追いかけ引っ掛けてしまう癖を修正したい。現状の打力では池恩齋と同じくプロで苦労する可能性が高く、富邦の穴であるSSを埋める存在になれるかは疑問。

 

周佳樂(ジョウ・ジャーレ) 輔仁大学 172cm 65kg 23歳 右左 OF

〇コンタクト △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 走攻守三拍子揃った外野手に成長したい選手。スイングスピードが速く、コンタクト能力に長ける。富邦はOFが右打者に偏っており、左打者のOFを確保するため指名したとみられる。目指す将来像としては陳文杰(中信兄弟)や郭天信(味全)のような上位打線を任せられ率も見込める俊足巧打タイプか。

 

林栚(リン・ジェンチェン) 美和科技大学 195cm 83kg 22歳 右右 RHP

〇角度 アップサイド △コントロール 線の細さ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 荒削りの長身右腕。ボールの出どころが見えにくいフォームから、長身を生かした角度のあるボールを投げ込み、最速は146km。線が細く、上半身優位のフォームでコントロールに課題がありまだまだ粗削りだが、アップサイドは大きい。球威を生かして勝ち継投に入れると面白い存在。

 

郭泰呈(グォ・タイチェン) 彰化芸中 178cm 80kg 19歳 右左 RHP

〇フォーム 球種 △投手経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 彰化の二刀流右腕。投手兼OFとしてプレーも、プロ入り後は投手に専念するものとみられる。投手としては元々コントロールが悪かったが、約2年間かけフォームを修正し球速、コントロールが改善。3年以降もリリーフ中心の登板だったが、実戦でのイニング数を増やしていった。ショートアームを取り入れたフォームから、平均137km~140kmのストレート、トライアウトでは自己最速タイの146kmをマーク。変化球はスライダーとチェンジアップがメインで、最近はフォークも勝負球にしようと習得に励んでいる。投手としての経験が少ないため、じっくりとリリーフとして育成していきたい。

 

黃子宸(ホァン・ズーチェン) 嘉義大学 188cm 78kg 19歳 右左 RHP

〇体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 バランスに長けた右腕。南英商工では1学年下に阮裕智と尹柏淮がいたため、存在感は薄かった。長身を生かしたフォームから135km~140kmのストレート、スライダーを投じる。昨年の玉山盃では自己最速145kmをマーク。長身痩躯で身体的な伸びしろも見込めるため、今後の大化けに期待。

 

賴柏均(ライ・ボジュン) 輔仁大学 173cm 68kg 21歳 右左 SS

〇SS守備 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 下位指名の隠し玉となりたい内野手新北市出身で、キャリアを通して新北市の学校でプレー。大学入学後はSSのレギュラーに定着。最大の武器は守備で、広い守備範囲を誇り、逆方向の打球も難なく処理でき強肩も併せ持つ。打撃ではバットコントロールは良好もパワー不足。その点では5巡目指名の林岳谷と重なる点が多い。富邦はSSの人材難に喘いでいるが、高い守備力で差別化できるか。

 

豊暐(リー・ウェイ) 台北市立大学 176cm 83kg 23歳 右右 C

〇パワー 肩

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 強打の捕手。「豊」姓のプロ野球選手は史上初。高校は平鎮高中に進学するも、同期は古林睿煬(統一)、江坤宇(中信兄弟)、林靖凱(統一)などがいる黄金世代であり、出場機会に恵まれず。そのため1年後に地元・宜蘭にある中道中学に転校した。台北市立大学ではC兼OFとして3年から出場機会を増やし、4年からは主戦捕手に。長打力と盗塁阻止能力に高い評価を受ける。小学校では右打、中学で左打に転向も、大学3年時に打撃で結果が残せなかったことから再度右打に転向した。張進德以外に打力が十分な捕手がいないチームに風穴を開けられる存在になりたい。

 

林華偉(リン・ホァウェイ) 穀保家商 180cm 81kg 19歳 右右 RHP

〇球種 メンタル △フォーム

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 強豪校で火消し役を担った右腕。ドラフト指名時は氏名が富邦GM林華韋と同じ発音であることが話題となった。穀保家商では短いイニングでの登板がメインで、ピンチの場面でも落ち着いて勝負できる冷静さを持ち合わせる。球種は最速147km、平均138~143kmのストレート、キレのあるスライダー、チェンジアップ、フォーク、カーブと多彩。投球時に腕を振る際に体に近付きすぎているため、肩への負担がかかるフォームになっているのが気がかり。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

小楓康

https://www.sportsv.net/articles/95992

logic

https://www.sportsv.net/articles/93442

2021CPBLドラフト指名選手リスト 中信兄弟+統一+味全

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*1

*2

 

中信兄弟(指名7名)

①呂彥青(ルー・イェンチン) 阪神 175cm 65kg 25歳 左左 LHP

〇ストレート NPBでの成長 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:プレミア12 15年:世界大学野球選手権 15、17年:アジア野球選手権 16年:U-23ワールドカップ 17年:ユニバーシアード

 台湾でも黄色のユニフォームに袖を通す左腕。高校時代から評判は高く、大学入学後はエースに。14年のアジア選手権、15年のプレミア12、16年のU23ワールドカップなど国際大会代表の常連となり、台湾アマナンバーワン左腕との触れ込みで17年オフに阪神に入団。しかしチームの外国人枠争いは激しく、二軍でリリーフ中心の登板が続いた。それでも19年、20年はK/9がそれぞれ8.4、9.0と支配力ある投球を披露。昨年8月には最速150kmをマークし、飛躍が期待されたが昨オフ自由契約に。今年3月に味全と自主培訓選手として入団、二軍で10試合 27IP ERA0.67と好投。6月に退団し中信兄弟の練習に合流していた。柔らかい腕の振りから投じる140km台前半の伸びのあるストレート、スライダー、チェンジアップ、カーブが持ち球。一方でコントロールには若干の不安があり、19年、20年はBB/9がそれぞれ5.1、3.8。CPBL二軍相手には小気味良い投球でストライク先行の投球を見せコントロールでの不安を見せることは無かったが、一軍ではどうなるか。中信兄弟では長年不在だった左の台湾人先発として、どこまで数字を残せるかが楽しみな存在だ。

 

②陳志杰(チェン・ジージェ) 平鎮高中 183cm 91kg 18歳 右右 RHP

〇ストレート カーブ メークアップ △配球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 実績は今ドラフトの高校生投手でナンバーワンの右腕。中学時に140km超えのストレートで注目を浴び、平鎮入学後も主戦投手として期待された。しかし1年時は最速147kmをマークするも、技術面がまだ未熟で出場機会は少なく、また体重が増えやすい体質で一時期は100kgを超えていたが、2年になり14kgのダイエットに成功。投球の安定感とスムーズさが増し、コントロールが改善。その後はチームのエースとして活躍し、昨年は高校野球リーグでMVP、玉山盃ではベストナイン、黑豹旗でMVPを獲得した。恵まれた体格を有し腕の振りは速く、ストレートは先発でも平均で145km前後を安定してマーク、今年の王貞治盃では自己最速の152km。ストレートの球威と伸びはプロでも通用するだろう。変化球は落差の大きいカーブ、右打者への外角に投じると効果的なスライダー、発展途上のチェンジアップを織り交ぜる。先発投手としてのスタミナも持ち合わせているが、外角中心の配球が多く投球が単調になるのは改善したい点。先発投手に必要な能力は既に持ち合わせており、将来的に先発ローテを長く守れるだろう。

 

③張仁瑋(ジャン・レンウェイ) 普門中学 175cm 74kg 18歳 右右 SS

〇SS守備 △パワー 安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 普門のキャプテン。高校入学後は近年鄭宗哲、馬鋼、馬傑森と優秀な先輩内野手がいたため2Bを主に守り、彼らが卒業後はSSのレギュラー、キャプテンとなった。打撃はパワーは無く守備に長けたSSで、体格は小さいながらもスイングの完成度が高く、確実にミートし打球を広角に飛ばす。一方で外角の誘い球の変化球と外角の高めのストレートへの対応に課題を残す。運動能力は高く、走力は平均以上。SS守備は範囲が広く、足捌きと打球処理もスムーズで肩の弱さを補っているが、平凡な打球処理を誤ることがあるため守備の安定感は今後プロで高めていきたい点。中信兄弟では今後不動のSSとなるであろう江坤宇がまだ21歳と若いため、プロでは2Bにポジションを移す可能性が高い。

 

④周委宏(ジョウ・ウェイホン) 穀保家商 175cm 70kg 18歳 右左 SS

〇打撃技術 肩 △守備 アプローチ アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 高い打撃センスが光る高卒内野手。高校入学後は金属バットの部で結果を残し、1年後半からすぐに木製バットの部に移行。木製バットの部のレベルの高さに攻守で苦しむも、2年以降は大きく成長。2年の黑豹旗ではベストナイン、3年に入ってからは長打力も成長した。打撃のテクニックは成熟しており、広角打法で特に低めのボールを長打にする技術が高い。しかし積極的過ぎるアプローチで厳しめのボールに手を出しがちで、体格も小柄なためプロ入り後のアップサイドは見込みにくい。走力は平均レベル、肩は平均以上。守備の評価は平凡で、高校では2B、SSを守るもゴロを処理する際の足捌きが不安定。正面で捕れる打球を体の横で捕球する癖も改善したい。守備範囲もセンターラインを守るには狭く、プロでは苦労するだろう。中信兄弟の内野陣は守備に長けた選手が比較的多いため、打撃で価値を出せなければ苦しい立場となる。

 

⑤陳統恩(チェン・トンエン) 中国文化大学 178cm 81kg 19歳 右右 C

〇パワー 肩 △守備

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 将来の強打の捕手候補。南英商工を卒業後ドラフト指名を考えたが、設備面が充実している中国文化大学からのオファーを受け、大学進学。そこから僅か1年でのドラフト指名となった。捕手としての守備面はまだまだこれから磨いていく必要があるが、パワーと強肩が持ち味。今ドラフトでの注目度は低い選手だったため、5位での指名は少々驚き。しかしチーム事情として中信兄弟には同年代の捕手のプロスペクトが張聖豪、林吳晉瑋がいる中での指名はやや疑問。プロでしっかりと守備のレベルアップを図り、3~4年後あたりに正捕手争いに食い込めるか。

 

⑥李家成(リ・ジャーチェン) 台北興富發 185cm 90kg 21歳 右右 RHP

〇ストレート △コントロール マウンド捌き

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ストレートで押す右腕。高校は鶯歌工商を卒業後、台體大に入学し約1年半在籍。その後昨年の春季リーグを台中市の一員としてプレーし、その後同じく社会人球団の台北興富發に移籍し技を磨いた。投球比率の多くを占めるストレートは威力があり最速150km、平均141~145km。変化球で一番の武器であるスライダーは135kmを超えることもあるが、フォークは制球力を磨く必要がある。昨年のポップコーンリーグでは12試合 14IP 15K 8BB ERA0.00、今年の春季リーグでは7試合 10.2IP 3K 4BB ERA1.69と防御率こそ良好もコントロールが課題。またマウンドでの集中力が切れる場面、突如制球が乱れる場面が多いのは要改善。今年22歳ながら即戦力のリリーフとして期待されており、まずは一軍でビハインドの場面からアピールしたい。

 

⑦黃鈞麟(ホァン・ジュンリン 大溪高中 175cm 66kg 18歳 左左 OF

〇スピード 守備範囲 △パワー 体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 隠れた掘り出し物の可能性を秘める高卒外野手。投手兼外野手の二刀流としてプレー、2年までは目立った活躍は無かったが、3年に入り大きく成長。長打が出るようになり、黑豹旗ではホームランを放った。あるスカウトによると走力は高校生でもトップクラスで、一塁到達までのタイムは3.9秒。MLBのスカウトも関心を示していたという。走力を活かした守備範囲も広いが、打撃は細身で体が出来上がっておらず、走力がある選手にありがちな当てるだけのスイングになっているのが気がかり。プロではスタメンの座を勝ち取るのは難しいが、代走や守備固めといった一芸で生き残れる選手になりたい。

 

 

統一(指名7名)

①胡智為(フー・ジーウェイ) パドレス 182cm 90kg 27歳 右右 RHP

〇ストレート 経験 △コントロール スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) 11年:AAAアジア野球選手権 14年:アジア大会 19年:プレミア12

 先発としてフル回転したいMLB経験のある右腕。13~15年までツインズでプレー、15年にトレードでレイズへ移籍。翌16年に2Aでシーズンを通して投げ抜きERA2.75と好投すると17~18年にMLBにリリーフとして昇格し計11試合でERA3.52、K/9は8.2をマーク。18年のシーズンオフにインディアンスへトレード、3Aで不振に陥り19年8月にカブスマイナー契約。11月にはプレミア12で好投を見せ、その後パドレスマイナー契約も昨年はコロナウイルスの影響でプレーが出来ず、11月にFA。今季は味全で自主培訓選手としてプレー、11試合3勝1敗 38.2IP ERA0.70と完璧な投球でアピール。先発としてもストレートは150km以上を安定してマークし、ストライクゾーンを積極的に攻める投球が光る。変化球は落差の大きいチェンジアップとスライダーが効果的だが、制球にはやや苦しんでいる印象。19年は合計で48.2IP、昨年は登板なしと先発としての体力面が心配だが、統一が長く求めていた台湾人エースとなれる可能性は十分だ。

 

②張翔(ジャン・シャン) 平鎮高中 177cm 78kg 18歳 右右 C

〇守備 △パワー インサイドワーク

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 今ドラフトの高校生ナンバーワン捕手。平鎮高中入学後2年の終わりまでは成績を残せず、一度は転校を考えたほど。しかし3年に入り打撃への意識を高め、ウエートトレーニングを重ねたことで打力が向上。一気に評価を高めた。捕手としてのクレバーさ、キャッチング、ブロッキング、盗塁阻止能力もハイレベルとの評価。特に盗塁阻止能力はボールを握るまでの動作が短く、送球も安定しているため走者の抑止力となっている。一方で吳柏宏監督から「捕手としては大人し過ぎる」と評価される通り、インサイドワークが課題。打撃はシンプルなスイングから良好なバットコントロールを有し、3年になってからは成長著しく、昨年の黑豹旗ではベストナイン、今年の高校野球リーグでは高校公式戦初のホームランを記録しベストナインを獲得と、攻守にバランスの取れた捕手へと変貌を遂げた。統一では現一軍ヘッドコーチの高志綱のようなゴールデングラブ常連捕手になれる存在として期待がかかる。

 

③劉志宏(リョウ・ジーホン) 穀保家商 188cm 80kg 18歳 左左 LHP

〇ストレート 投球数の少なさ △コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 穀保のファイアーボーラー。高校入学時は120km前後だった球速が1年後半に141km、2年で147km、今年の王貞治盃の選抜大会では自己最速153kmをマーク。上から投げ下ろすフォームから平均でも143~145kmをマークするストレートで打者に威圧感を与える。しかしコントロールが最大の課題で、2年時には制球難を改善するため多くを金属バットの部でプレーしていたほど。身体を若干捻る投球フォームゆえかリリースポイントが安定せず、スライダーやカーブの精度が低い。幸いなのは穀保の厚い投手層もあり、投球イニングが少なく肩の消耗は抑えられていること。王奕凱(中信兄弟)と比較するスカウトもいるが、高校での最速は10km劉志宏が上回っており、ポテンシャルは十分。コントロールがプロで改善されれば、統一では貴重な左の速球派リリーフとして活路を見出せる可能性がある。

 

④楊竣翔(ヤン・ジュンシャン) 台東大学 178cm 76kg 21歳 右右 SS

〇内野3ポジション アップサイド △内角 守備の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 攻守に成長著しい内野手。高校は南英商工に入学も、出場機会や練習量が少なかったことから大理高中に転校し才能が開花。3年時には1番・SSとしてレギュラーを勝ち取った。大学進学後は細身だった体格も大きくなり、特に昨年の夏には体重を66kgから76kgに増量させたことで長打力が向上。3年になってからは公式戦で3本のHRを放った。打撃は積極的なスイングが光ると同時に粘り強いアプローチを兼備し、逆方向へも上手く打球を運ぶが、内角のボールへの対応が課題。守備は2B、3B、SSを守れ範囲も悪くないが、送球の正確さと安定感を高める必要がある。まだ若くアップサイドも見込めるため、課題が修正されれば内野の便利屋として一軍に定着できるだろう。

 

⑤李承鴻(リ・チェンホン) 普門中学 182cm 76kg 18歳 右右 RHP

〇フォーク メークアップ △対左打者

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 努力と落ち着きが光る高卒右腕。中学から外野手として野球を始め、高校から投手に転向。チームメイトから「練習狂」と呼ばれるほど練習熱心で、2年で球速が一気に20km以上もアップ。昨年はU18強化チーム入りも果たした。小さなテークバックから最速147km、リリーフとして141~144kmをマークするストレートで内角を厳しく突ける。変化球はゴロアウトを打たせられる縦に落ちるスライダーと、空振りを奪える球種としてスカウトの評価が高い130km前後のフォークの2球種。ただ両方とも左打者相手へ有効なボールではないため、チェンジアップの習得に取り組んでいる。走者がいる場面でも落ち着いた投球を見せられるのも強み。投球技術を更に磨き、勝ちパターンのリリーフを任せられる存在としてじっくりと育成したい。

 

⑥楊孟沅(ヤン・モンユエン) 台北市立大学 173cm 75kg 22歳 左左 LHP

△故障歴 特徴の無さ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 故障からの復活を果たした大卒左腕。平鎮高中では出場機会に恵まれず、金属バットの部でプレー。卒業後は台北市立大学に進学したが、1年時に左肩関節唇の損傷が発覚し手術。約3年をリハビリに費やし、実戦復帰は4年になってから。そんな中でもリハビリの成果もあり球速が最速142kmまでアップ。今年の大学野球リーグでは決勝戦で2.2IP/0Rの好リリーフで、大学21年ぶりとなる大会優勝に貢献した。ストレートは平均135km前後で、変化球はスライダーとカーブを投じるが、上背もなくオーソドックスなメカニクスゆえ、左投手が不足しているチーム事情があると言えどプロで活躍できるかには疑問が残る。左殺しのリリーフとして活路を見出せるか。

 

⑦謝修銓(シェ・ショウチュエン) 合作金庫 181cm 84kg 25歳 右右 SS

〇内野全ポジション △年齢

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 日本で磨き上げた守備力が光る内野手。父はサッカー選手、母は柔道選手という家系に生まれ、高校から野球留学岡山共生高と天理大学でプレー。岡山共生高の先輩にあたる陳傑憲、黃紹熙とは統一で再びチームメイトとなった。大学卒業後は台湾に帰国し合作金庫入り。昨年のポップコーンリーグでは10試合 打率.381、今年の春季リーグでは9試合 打率.313と活躍した。内野全ポジションをこなす高い守備力が武器で、打撃は確実なミート能力と変化球の対応力に長けるとの評価。今年26歳と若くなく、楊竣翔とも選手のタイプ的に重なる部分が多いが、まずは層の薄いSSの控えからアピールしていきたい。

 

味全(指名7名)

①吉力吉撈.鞏冠(ジリジラオ・ゴングァン) インディアンス 180cm 104kg 27歳 右右 C

〇パワー △守備 故障

主要国際大会経歴(高校以降) 14年:アジア大会

 打力に期待のマイナーでの経験豊富な捕手。高校までは3Bで、09年のAA世界野球選手権大会代表で最優秀三塁手に選出された。台湾体大で約1年プレー後、12年にインディアンスと契約し捕手転向。14年にRkで早速打力を発揮するも、15年9月にトミージョン手術を受け離脱。マイナー最初の3年は故障、手術で出場機会を得られなかったが、17年にAで125試合 打率.269 17HR 67打点 OPS.764と飛躍すると、18年もA+、2A、3Aで計99試合で10HR。19年は2Aで60試合に出場。しかし飛躍が期待された昨年は新型コロナウイルスの影響で空白の一年に。今季は長年戦ったマイナーでのプレーに別れを告げ、台湾に帰国し味全で自主培訓選手としてプレー。マイナーでは攻撃型捕手としてアピールした一方、守備面は大きく成長せず。捕手での出場試合数は全体の58.6%に過ぎず、DHでの出場も多かった。同じ攻撃型捕手として先にCPBL入りした張進德(富邦)との比較でも、マイナー通算OPSでは上回るが、守備率と盗塁阻止率では及ばない。また今季二軍では15試合 打率.294 1HR 6打点 OPS.796と図抜けた実力は見せられず、C/3Bを兼任しているが3Bの守備率が.600と守備面が不安。味全では打てる捕手として貧打に苦しむチームに貢献したい。

 

②曹祐齊(ツァオ・ヨウチー) 大理高中 186cm 87kg 18歳 右右 RHP

〇運動能力 メカニクス △故障

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 高い野球センスを見せる高卒右腕。父は統一で通算251試合に登板、中日でもプレーした曹竣崵。2年時の高校野球リーグで肘の炎症を起こし約8ヶ月実戦で投げられなかったが、その間にトレーニングに勤しみ球速が146kmまでアップ。復帰後は二刀流としてプレーし打撃でも高いセンスを見せた。しかし3年に入ってからも故障と復帰を繰り返し、現在のストレートは先発時137~142kmで、失投を痛打される場面が目立つ。変化球は縦に落ちるスライダーを最も多く用い、最も有効な球種となっている。他にカーブ、フォーク、チェンジアップも投げるが故障後は投球比率が減少。恵まれた体格を持ち、無駄のないフォームを身に付けており、状態が戻れば先発として2~3年後にローテ入りできるだけの素質を備えている。

 

③李展毅(リ・ジャンイー) 大理高中 188cm 115kg 18歳 右右 C/1B

〇パワー △1Bに移る? 走力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 今ドラフトの高校生でナンバーワンのパワーを有するモンスター。中学時代からそのパワーで名を馳せ、U15ワールドカップでは李灝宇(フィリーズ)とのコンビで3位に貢献。高校入学後は1年から4番を打ち、高校野球リーグで打点王ベストナイン、玉山盃ではホームラン王を獲得。2年時の高校野球リーグ、王貞治盃でもホームラン王とパワーをいかんなく発揮した。これぞパワーヒッターという体格から失投を逃さず広角に長打を放ち、またバットコントールも良く率も残せるのが強み。インコース高めのボールへの対応など修正すべきポイントも多いが、プロでも打撃タイトルを狙えるだけのポテンシャルを秘めている。走力は平均以下ながら積極的な走塁を見せる。3年になってから捕手としての出場機会が増え、キャッチング、ブロッキング、肩は平均レベルも盗塁阻止能力は平均以下で、体格的にもプロで捕手としてプレーし続けられる可能性は低い。そのため1Bとしての出場が現実的と思われる。

 

④吳秉恩(ウー・ビンエン) 平鎮高中 185cm 85kg 18歳 右右 RHP

〇コントロール 変化球 △スタミナ 球速の低下

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 常勝軍団を技で支えた技巧派右腕。高校入学後は二刀流としてプレーし、19年の高校野球リーグでMVPを獲得。2年からは投手に専念すると黑豹旗でMVPを獲得し、その他の大会でもリリーフとして幾度もチームの勝利を守り抜いた。コントロールが持ち味で、コーナーにしっかりと投げ分けられ、また変化球もスライダーは打者の左右を問わず効果的で、カウント球とウイニングショット両方で使える球種。チェンジアップは左打者に多く投じ芯を外し、高卒投手としての完成度は高い。他にカーブも投じる。一方でストレートのクオリティは平凡で、登板過多の影響か3年以降球速を落としており、最速143kmのストレートが平均でも135km前後になっていたのは不安要素。またスタミナも課題で長いイニングを投げると球速がはっきりと落ちる。ただここ最近は疲労によるフォームの乱れが改善され、球速を戻してきているとの報道もある。大きな故障が無ければ大崩れしないイニングイーターもしくはリリーフになれるだろう。

 

⑤張鈞守(ジャン・ジュンショウ) 南英商工 186cm 84kg 18歳 右右 RHP

〇体格 投球数の少なさ △コントロール 球種

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 まだまだ発展途上の南英のエース。中学校までは離島の澎湖在住で、高校から台南の南英商工へ進学。1年と2年はリリーフ中心の登板が多く、先発としての登板が増えたのは3年の後半から。テークバックの小さいフォークから最速147km、先発では135~140kmをマークするストレートは速くは無いものの、ストライクをどんどん投げ込み、打者が内角高めの速球に手を出すケースが多く空振りを奪える。変化球はスライダーの投球比率が高く、追い込んだ後はフォークで三振を奪う。コントロールは発展途上で、ストライクゾーンのコーナーを突く技術がまだないため、プロで磨きたい部分。また球種も先発としては少ないため、カーブなどの緩急ある球種を身に着け投球に幅を持たせたい。南英は大会への参加数が少なく、本人の登板機会も限られていたため高校時代の投球数が少なかったこと、体格やポテンシャルを考えれば先発としてじっくり育成したい。

 

⑥陳思仲(チェン・スージョン) 台北興富發 184cm 90kg 20歳 右右 3B/1B

〇パワー 内野3ポジション

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 打力が魅力の内野手。母が台湾人、父親がアメリカ人のハーフで、高校は強豪の穀保家商で主力として活躍。玉山盃、黑豹旗、高校野球リーグでベストナインを獲得した。高校卒業後はアメリカのEdmonds Community Collegeに進学したが、新型コロナウイルスの影響を受け昨年2月末に始まったリーグが僅か7試合で中止に。アメリカでのプレーが難しくなったことから台湾への帰国を決意。帰国後は社会人の台北興富發でプレーした。打撃はツボにハマると強烈な打球を飛ばし、メインの3B以外にも1B、2Bを守れる点も使い勝手が良い。打力のある野手が少なく、劉基鴻もまだ成長途上である味全にとっては下位で上手く指名できた選手といえる。

 

⑦邱辰(チョウ・チェン) 台湾体育運動大学 177cm 80kg 22歳 左右 OF

〇パワー △アプローチ 走力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 CPBL史上初となる左投右打の選手。台東にある利稻部落の布農族で、同部落出身者としても初のプロ野球選手となった。高校では1Bとしてプレー、大学2年から出場機会を増やすため外野も守るように。昨年のドラフトにも参加したが指名が無く、その後味全から自主培訓選手としての契約をオファーされたが、U-23ワールドカップの強化チームに入っており、大学での学業を修めることを優先したため入団しなかった。打撃はフルスイングが持ち味で逆方向への長打も少なくないが、アプローチが悪く高めのストレートへの空振りが多い。また外角の変化球にも脆さを見せていたが、大学4年になりこの弱点は改善の兆しがある。走力は平均以下、肩は平均レベルでコーナーOF向き。打撃の爆発力はあるが打球の質が安定していないため、プロでは技術を高め、味全には少ない右打ちの外野手として価値を見出したい。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

沙拉

https://www.sportsv.net/authors/salada

2021CPBLドラフト指名選手リスト 富邦+樂天桃猿

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*1

 

富邦(指名8名)

①江少慶(ジャン・シャオチン) タイガース 186cm 94kg 27歳 右右 RHP

〇ストレート 経験 △コントロール イニング消化

主要国際大会経歴(高校以降) 11年:AAAアジア野球選手権大会 14年:アジア競技大会 17年:WBC 19年:プレミア12

 早々に全体ドラ1が決まった即戦力右腕。高校卒業後にインディアンスに入団。徐々にマイナーの階段を駆け上がり、18年と19年には3Aでプレー。19年は26試合9勝9敗 131IP ERA5.15とシーズン通してローテーションを守り、オフにタイガースとマイナー契約MLB昇格に近い所まで来ていたが昨年はマイナーリーグが開催されずまさかの試合出場無し、オフにFAとなった。今年2月に富邦と自主培訓選手として契約。同時に5年3ヶ月で208万米ドルの複数年契約を結び、早速の「全体ドラ1内定」となった。18年までは沈むストレートを中心に投球を組み立て、少ない球数でゴロアウトを奪う投球スタイルだった。しかし打者のレベルが上がる3Aでプレーした19年はこれまでの沈むストレートと平均約152kmの伸び上がるストレートの二種類を織り交ぜ、右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップを投げるようになり奪三振能力が向上。一方で投球スタイルの変化で球数が増えイニングが食えず、また変化球の制球に苦しみBB/9が悪化しているのは課題。二軍での成績は思わしくないが150kmを超えるストレートは健在。後期開幕後すぐにローテ入りしエース級の活躍が期待される。

 

②王苡丞(ワン・イーチェン) 成徳高中 185cm 73kg 18歳 右左 1B/3B

〇打撃の安定感 ゾーン理解 △送球 ポジション

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 憧れの選手が王柏融であることから「成徳大王」のあだ名を持つ左打者。1年から木製バットの環境に適応し3Bのレギュラーを獲得も、2年に入りスランプに。しかし3年になる夏休みにトレーニング量の増加、打撃フォーム改善に取り組み開花。桃園盃では大会トップの打率.571をマークし平鎮高中を破っての優勝に貢献。黑豹旗では準決勝で平鎮高中に敗れるもチーム唯一の得点であるホームランを放つなど、20年シーズンの成徳躍進の最大の立役者と言える活躍を見せた。打撃はアプローチ、コンタクト共に良好で、広角に打球を飛ばせ長距離砲の片鱗を覗かせる。一方で外角の変化球の見極めを苦手とし空振りが多く、バットコントロールは平凡。走塁は平均レベル、守備は肩は平均レベルも範囲が狭く、送球が不安定であることから、1B/3Bと打力が求められるポジションが指名にどう影響するか…と見られていた。しかし結果は2巡目で富邦がいきなりの指名、今ドラフト最大のサプライズとなった。高卒野手の育成に苦労している富邦がどのようなプランを持って育成するのかに注目したい。

 

③董子恩(ドン・ズーエン) 平鎮高中 180cm 75kg 18歳 右右 1B/3B

〇ゾーン理解 △守備 スピード

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 安定感ある打撃で活躍を見せた内野手。樂天桃猿の董子浩の弟で、中学までは二刀流も平鎮入学後は野手に専念。安打製造機として主軸を任され、特に2年時は黑豹旗ではベストナインと最多打点、高校野球リーグと玉山盃でもベストナインを獲得と目覚ましい活躍を見せた。ゾーン理解の深さが最大の持ち味でボール球に手を出さない。また右方向への流し打ちが上手く、長打は外野手のギャップを抜くものが多い。一方でスイングスピードは平均的で、しっかりと捉えきれなかった弱いフライアウトが多い。そのため投手のレベルが上がるプロでも打撃技術が通用するかは心配な点。また守備力に難があり、1Bとしてはパワー不足で3Bでは守備に不安が残る。走力も平均以下のため、打撃で結果を残せないと厳しい立場になる。今ドラフトでは同じタイプの王苡丞が入団したが、長打力を身に付け3Bに残りたい。

 

④孔念恩(コン・ニェンエン) 高苑工商 184cm 78kg 18歳 右左 OF

〇バットコントロール 走力 アップサイド △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ポスト林哲瑄の期待がかかる高卒外野手。中学までは3BとSS、高校入学当初は1B、2年でRF、3年からCFと様々なポジションを経験している。昨年の玉山盃ではベストナインを獲得。スリムな体格から優れたバットコントロールで様々なコースのボールを広角に弾き返せる。一方でスイングが安定しておらず、外角球の見極めが出来ずボール球を振ってしまうケースが目立つ。パワーは現時点では平均以下だが、3年からは打球の飛距離も伸びるようになっており、今後のアップサイドに期待。走力は平均以上で、守備については範囲は平均レベル、守備力も試合経験を通して安定感が増してきたが、稀に注意不足によるエラーがある。現時点での完成度は低いが、今後のアップサイドへの期待は大きく、パワーが身に付けば将来のCFレギュラーになれるだろう。

 

⑤李子強(リ・ズーチャン) 南華大学 184cm 74kg 21歳 右左 RHP

〇コントロール アップサイド △対左打者 球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 大学で大きく成長した細身の右腕。高校は三信家商で、18年で野球部が解散した同校最後の野球部員となった。南華に入学までは大きな実績を残せなかったが、大学で成長を遂げ、3年時の成績が87IP/81K/21BB/ERA1.76。特に今年の大学野球リーグでは16.1IP/22K/ERA1.08と好投、ドラフト指名に繋がった。ストレートの球質は平凡で137~142kmを平均してマークし、最速は147km。内外角に投げ分けられるコントロールの良さが持ち味で、浅いカウントではストレート、カーブ、スライダーでカウントを稼ぎ、追い込んでからはフォークとチェンジアップで打ち取るスタイル。対左打者への投球に課題を残し、また外角への投球比率が高いためプロの打者を上手く料理できるかも未知数。細身の体格でアップサイドは大きいため、プロ入り後の成長に期待。

 

⑥楊強森(ヤン・チャンセン) 高苑工商 178cm 78kg 18歳 右左 RHP

〇勝負度胸 △投球技術 コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 プロでは投手で勝負する「高苑のジョンソン」。元富邦の楊承駿、樂天桃猿の楊岱均は兄。高校入学後は投手としてプレーも、満足いくプレーが出来ずOFに転向。そんな中で2年時にチームの投手不足を受け再度投球したところ141kmをマーク。その後は3B兼投手の二刀流としてプレーを続けた。ストレートの最速は147km、先発時は135~142kmで若干右打者の内角に沈むような軌道を辿る。変化球はスライダーとチェンジアップがメインで、他にもカーブ、チェンジアップ、フォークを投じるがあまり効果的ではない。ボールのクオリティとコントロールが安定せず、ストレートと変化球の腕の振りの速さが異なるのは要改善。投手としての技術面は平凡ながら勝負度胸を持ち合わせており、ランナーがいる場面でもどんどんストライクゾーンを攻めるシーンが多い。上背がなく、ここから大きく成長する可能性は小さいが、投球技術をしっかりと身に付けリリーフとして生き残りたい。

 

⑦張宥鈞(ジャン・ヨウジュン) 平鎮高中 175cm 75kg 18歳 右左 OF

〇スピード 肩 アプローチ △パワー 体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 スピードで掻き回す平鎮のキャプテン。平鎮では1年からレギュラーとして出場。2年になってから打撃で結果を残し始め、3年になってからはトレーニングの量を増やし、打球の飛距離が伸びた。俊足が武器で三塁打を多く生み出し、弱いゴロでも内野安打での出塁が多い。またアプローチ能力に長け球数を投げさせて四球を獲得するケースも多い。一方でライナー性中心の打球でパワー不足であり、安定した成績を残せていない。そのため高校後半は9番に入ることが多くなった。外野守備は肩が平均以上との評価で、林政華(樂天桃猿)と比較する声もある。まずは自慢の俊足と外野守備を武器に、バックアップの外野手としてチャンスを掴みたい。

 

⑧岳少華(ユエ・シャオホァ) 開南大学 177cm 68kg 22歳 右左 RHP

〇健康な肩肘 球種 △スタミナ 球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 兄2人とは違う道を進む三男。中信兄弟の岳東華、岳政華は兄。兄2人は強豪の穀保家商に高校進学も、彼は地元宜蘭の中道中学へ。しかし高校時代から結果を残していた兄2人とは異なり、目立った結果は残せず。大学は開南大学に進学、当初はSSとして運動能力の高さを生かした守備力と走力は目立っていたものの、打撃が足を引っ張り出場機会を得られなかった。2年時に郭李建夫監督が運動能力を活かしての投手挑戦をアドバイス。すると投手としての才能を見せるようになり、現在のストレートの平均は140km前後、最速は145km。変化球は落差の大きいカーブとスライダーが主で、他にフォーク、チェンジアップを投じる。スタミナ不足からかコントロールが長いイニングを投げると乱れがちで、球威もプロで勝負するには不足しているが、投手に転向して日が浅く肩肘の消耗が少ないのはメリット。ドラフト前の評判からは予想外の8巡目という低順位での指名となったが、リリーフとしてここからアピールしたい。

 

 

樂天桃猿(指名8名)

①陳冠宇(チェン・グァンユ) 千葉ロッテ 179cm 75kg 30歳 左左 LHP

〇変化球 経験 △ストレート 先発転向

主要国際大会経歴(高校以降) 08年:IBA U-18ワールドカップ 10年:世界大学野球選手権 10、14年:アジア競技大会 11年:IBAFワールドカップ 15、19年:プレミア12

17年:WBC 17年:アジアプロ野球チャンピオンシップ

 母国では先発として勝負する左腕。なかなか出場機会を得られなかったDeNA時代から、15年に移籍した千葉ロッテで飛躍。18~20年まではリリーフとしてERA3点台を記録。今後の活躍も期待される中、オフに年齢と台湾にいる子供を考慮し台湾への帰国を決定、社会人球団の安永鮮物に入団した。帰国後は先発として調整を続けており、春季リーグ戦から実戦登板。ストレートは143km前後で内外角へのコースの投げ分けもできている一方で、ストレートで空振りを奪えず、変化球で空振りを奪いアウトを稼ぐケースが目立った。これは19~20年のストレートの被打率が3割超だった一方、右打者の内角を突く生命線のカットボール、チェンジアップの被打率が昨年.158、.167であることにも表れている。19年から20年にかけてストレートの比率が減少し、カットボールとチェンジアップの比率が増えているが、CPBLでもこの傾向は続くか注目だ。楽天桃猿は今季長年先発ローテを守ってきた王溢正が不振からリリーフに転向。左の先発の穴を埋める即戦力として期待される。

 

②邱駿威(チョウ・ジュンウェイ) 高苑工商 178cm 75kg 18歳 右右 RHP

〇ストレート 球種 完成度 △体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 王鏡銘(統一)、吳俊偉(中信兄弟)と比較される高卒右腕。中学では二刀流、高校では入学当初投手メインも、2年の12月から野手としての出場を開始。OF、DHとして中軸を打つこともあった。上背はないが体格はがっちりとしており、マウンドでの落ち着きも申し分ない。ストレートは威力があり、最速は153km。リリーフでは平均150km前後、先発としても144km前後を安定してマークする。変化球では140km前後で鋭く落ちるカットボールを一番の武器としており、他にも横への曲がりが大きいスライダー、陽建福から教わったフォーク、カウントを取るボールとして用いるカーブ、稀にチェンジアップを小さなテークバックから投げ込む。高校に入ってから順調に成長を見せ、高卒投手としての完成度は今ドラフトでも一番だが、体格が小柄であるがゆえリリーフ向きと見られている。

 

③曾仁和(ツェン・レンヘ) ABL・オークランド 186cm 91kg 26歳 右左 RHP

〇経験 チェンジアップ △下降気味 ストレート

主要国際大会経歴(高校以降) 11年:AAAアジア野球選手権 12年:AAA世界野球選手権、アジア野球選手権 13年:WBC

 かつての輝きを取り戻したい右腕。高校時代、12年のIBAFワールドカップで最速153kmをマークし最優秀リリーフ賞を獲得する活躍を見せ、13年のWBC代表に選出。13年にカブス入りし、プロスペクトとして成長を見せ17年に22歳でMLB昇格、初白星をマークとここまでは順調だった。しかし18年から投球フォームを修正したことで不振に陥り、3Aで2勝15敗 ERA6.27。19年は4月にカブスをリリースされレンジャーズ入りも、故障に苦しみ僅か2試合の登板に終わる。昨年は年初にABLでプレー、その後台湾に帰国し国外球団からのオファーを待つも契約に至らず。今年は4月に統一に自主培訓選手として入団すると二軍で7試合に登板、23.2IP ERA2.66。二段モーション気味のフォームから145km前後のストレートに一番の武器であるチェンジアップ、ホームベース手前で大きく落ちるカーブ、カッターを組み合わせる投球スタイルだが、今年に入りストレートの球速、コントロール共に理想ではなくパフォーマンスにムラがある点は心配だ。今ドラフトで3巡目まで残ったことは驚きを持って報じられたが、現在のコンディションを冷静に評価された可能性が高い。

 

④鍾玉成(ジョン・ユーチェン) 大溪高中 183cm 75kg 18歳 右左 SS/OF

〇守備範囲 肩 運動能力 △外角 プレーの安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 内外野こなす「大溪陳傑憲」。中信兄弟7位指名の黃鈞麟と共に、大溪高中初のプロ野球選手となった。捕手以外のポジションを全て守った経験があり、投手としても最速140kmをマーク。細身の体格ながらしっかりと振り切るスイングで広角に安打を放ち、長打はライト方向へ引っ張ったものが多い。主にSSとOFを守り、OFとしてフライの判断能力は高く、安定した守備範囲を誇り、肩も強い。外角のボールに対してスイングが遠回りするためミートが安定せず、逆方向への打球が弱いのは改善したいところ。プレーの安定感はまだ不足しているが、細身の体格に今後筋肉をつけ長打力をアップさせれば、将来のレギュラー候補として楽しみな存在だ。

 

⑤賴知頎(ライ・ジーチ) 鶯歌工商 180cm 65kg 18歳 右左 RHP

〇ストレート スライダー △対左打者 故障歴

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 故障を乗り越えたストレートが持ち味の右腕。中学3年時の試合で外野を守っていた際にチームメイトと衝突し脊髄を損傷。一時は野球を諦めかけたが、高校入学後も治療とリハビリに時間を費やし、約1年半のブランクを経て2年でようやく実戦復帰。復帰後は成長著しく、140km以上をマークする投手が他にも数名いる鶯歌工商でチームのエースに。スリークォーターから投じる最速148kmのストレートはノビがあり空振り率が高く、縦に落ちるスライダーは右打者に効果を発揮する。またカーブはカウント球として、フォークはまだ不安定ながら稀に投じることがある。一方で投球フォームが左打者にとっては見やすいのが課題で、プロのレベルの高い打者相手には内角を厳しく突けるコントロールが必要。また肘、脊椎の故障歴があることから長いイニングを投げる先発としての活躍は期待しにくく、将来像は奪三振能力の高いリリーフか。

 

⑥毛英傑(マオ・インジェ) 高苑工商 170cm 70kg 18歳 右右 C

〇攻守のバランス メークアップ △体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 バランスの取れた高卒捕手。台東縣出身の布農族で、18年のU-15ワールドカップでは正捕手として打率.500、12本の安打中6本が長打と打撃で活躍し一躍注目を集めた。高校から高雄に移り高苑工商に入学、羅暐捷(統一)卒業後の2年から正捕手に。守備は安定感があり、特に二塁までの送球は動作も無駄な動きがなく非常に速い。打撃は小柄ながらパンチ力があり、今年の王貞治盃で高校公式戦初HRを記録。統一のドラフト2位指名の張翔とも比較されるが、守備に長けた張翔に対し、毛英傑は攻守のバランスが取れた捕手とタイプが異なる。体格は小柄なためアップサイドは小さいと見られるが、メークアップは良好。ライバルの多い樂天桃猿の捕手陣において、攻守におけるソツの無さで差別化を図りたい。

 

⑦張梓軒(ジャン・ズーシュエン) 中国文化大学 192cm 80kg 21歳 左左 LHP

〇体格 アップサイド △トミージョン手術 コントロール 勝負球不足

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 怪我からの完全復活に期待したい大型左腕。南英商工に入学後から国外スカウトの注目を集め、2年で144kmをマーク。王建民から「チャップマンのようだ」と評されるほど将来を嘱望されていたが、高校後半は不振に陥り球速が低下。さらに卒業後には肘の靭帯断裂が発覚しトミージョン手術。大学ではリハビリに励み徐々に状態を戻し、体も一回り成長。今年の春季リーグでは自己最速となる146kmをマーク。球の出所が見えにくいフォームから、天性の柔らかい腕の振りで135~140kmのストレート、カーブ、スライダーを主に投じる。ただリリースポイントが安定せずコントロールが課題で、ボールのクオリティも平凡でウイニングショットに欠ける。またトミージョン手術後は打者への威圧感も失われているのは気がかり。リスクの大きい投手ではあるが、その恵まれた体格と素質をプロでじっくりと磨きチームが手薄としている左のリリーフとして、一軍の枠を勝ち取れるか。

 

⑧楊家勝(ヤン・ジャーシェン) 桃園航空城 175cm 70kg 23歳 右左 2B/SS

〇コンタクト △パワー アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 社会人出身の内野手。兄は富邦でプレーする楊瑞承で、高校は桃園農工、大学は台湾体大を卒業後、桃園航空城でプレー。2B/SSを守り、ミート中心の打撃スタイルでパワーは不足している。樂天桃猿の今ドラフトでの内野手指名は彼のみ。昨年のドラ1で馬傑森を指名したが若手二遊間の層は厚いとはいえず、大卒に近い年齢で打撃のアップサイドが少ない選手を指名したのはやや疑問がある。下位指名からどこまで這い上がれるか注目したい。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

沙拉

https://www.sportsv.net/authors/salada

CPBL歴代最強外国人野手TOP10

 CPBLは創立当初から外国人枠を導入し、リーグのレベル向上のためにこれまで約30年間で1000人を超える外国人選手がプレーしてきた。*1外国人選手はチームの浮沈を握る存在であるがゆえ、登録と解雇が頻繁に行われるのが特徴である。

 また過去にTML(台湾大連盟)とリーグが分裂していた時期は選手の供給不足が問題となり、98年~99年には「支配下登録制限12人 1試合の出場7人 同時出場4人」まで枠が拡大されるなど、人材確保の観点から外国人選手の獲得が盛んに行われた歴史もある。

 今回紹介するのはそんな1000人を超える外国人選手の約25%を占めていると言われる外国人野手の歴代トップ10である。なお、今回はランキングを決定するにあたり以下のような基準を設けた。

 

・2シーズン以上CPBLでプレーした選手(途中加入、途中退団のシーズンも含める)

CPBLでは昔の野手のWARが算出されていないため、毎シーズンのwRAA*2を合計し、平均した数値の高い順にランク付けする。

・wRAAはCPBL STATSが算出しているものを参照。

 

 ただでさえ野手は相対的に少なく、2シーズン以上のプレーという縛りを設けたことでかなり対象選手は絞れてしまう結果となったが、やはりトップ10には強烈なインパクトを残した、或いは安定感ある活躍を続けてきた選手たちが名を連ねた。それでは早速ランキングを見ていこう。

 

 

德伍(ロバート・ウッド) 在籍:兄弟(97~99) OF

wRAA平均:44.30

 日本の野球ファンには聞き馴染みがない選手だが、3年間安定して走攻守で高いレベルのパフォーマンスを見せ、見事1位に輝いた兄弟の外野手。88年のMLBドラフトで1巡目指名を受けジャイアンツ入り。91年には3Aに到達しその後は中距離ヒッターとして出場機会を得て、91~93年までMLBで47試合に出場。しかしMLB通算は打率.183 1HR 7打点 OPS.503とメジャーの壁は厚かった。96年にメキシカンリーグでプレー後、兄弟入り。来台1年目の97年は打率.373 139安打 94打点で首位打者最多安打、打点の三冠を獲得。前後期制が廃止された98年はチームが5位から17ゲーム差と圧倒的な最下位に終わったシーズン(当時は6球団)だったが、ウッドは打率.321 19HR 79打点 OPS1.006と傑出したパフォーマンス。99年は開幕から打棒が爆発し、開幕14戦で8HRをマーク。その後は勢いが衰えるも投高打低のシーズンだったことも幸いし19HRで本塁打王のタイトルを獲得。兄弟象として本塁打王のタイトルを獲得したのはこのウッドだけである。オフに家庭の事情を理由に退団。00年にはKBOリーグ・ロッテでプレー。前年に大活躍したフェリックス・ホセの穴を埋める活躍が期待されたが、35試合 打率.255 1HR 9打点 OPS.692と台湾時代のような打棒は発揮できず5月に解雇され、現役引退。

 ウッドが在籍した97~99年は兄弟が台湾プロ野球初の三連覇を達成した92~94年の後の過渡期にあたり、選手としてのピークを過ぎた30代の台湾人野手がレギュラーを張る中で、際立った活躍を見せていた。安定感ある打撃が最大の武器で、誘い球に手を出すことのないアプローチの良さも投手にとっては厄介だった。

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*3

 

路易士(ルイス・デロスサントス) 在籍:兄弟(94~96) 3B

wRAA平均:30.07

 日本のファンには「台湾のイチロー」の愛称でお馴染みの選手。88年に21歳でメジャー昇格も、通算55試合の出場にとどまり多くを3Aで過ごし、また3Bとしても長打力不足を露呈していた。94年に当時のCPBLの外国人選手としては最高額の月給7000USドルで兄弟に入団すると、全試合に出場し打率.358 14HR 64打点 OPS.940をマーク、チームの三連覇に貢献。翌95年は打点王最多安打、96年は首位打者を獲得。3シーズンの通算打率.361は、1000打席以上立った選手ではダントツの1位である。97年は台湾での輝かしい実績を引っ提げて巨人に移籍。当時巨人はガルベスブリトーと兄弟経由での外国人選手獲得が一定の成功を収めており、その流れでルイスも長嶋茂雄監督直々の入団テストを経ての入団だったが、NPBではその打棒を発揮できず。そして打撃以上に不評を買ったのが3B守備で、基本さえおぼつかないお粗末ぶり。結局39試合で打率.237 0HR 14打点 OPS.589という不振で退団。その後兄弟に復帰する予定だったが給与面で折り合いがつかず、TMLの生活雷公で2シーズンプレー。98年には首位打者打点王の二冠を獲得するなど、兄弟時代の輝きを再び取り戻した。00年にメキシカンリーグでプレー後、01年はKBOリーグ・ヘテ(シーズン途中にキアに名称変更)に入団、守備に見切りをつけられた形で「4番・DH」として主に起用され、打率.310 26HR 107打点 OPS.874の好成績。02年はメキシカンリーグ2球団-オリオールズ3A-米独立リーグでプレー、03年にイタリア・ネットゥーノでプレーし現役引退。その後は約6年のブランクを経て09年にメキシカンリーグの球団で監督、翌10年から現在までブルワーズのマイナー・ドミニカンサマーリーグで打撃コーチを務めている。

 NPBでの成績が悪い意味でインパクトがあったため、過小評価してしまいがちであるが、3年間大きな離脱もなく3Bのレギュラーを守り通算打率.361、通算OPS.970は評価されるべきであろう。当時のCPBLの台湾人選手は眼鏡をかけた選手も少なくなかったが、ルイスは外国人野手では珍しく眼鏡をかけ、優れたパフォーマンスを見せていた。

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*4

 

布雷(ティルソン・ブリトー) 在籍:統一(06~08) 3B

wRAA平均:28.27

 強烈なインパクトを残した大砲。メジャーでのプレーは96~97年の計92試合のみで、マイナーではSS/2Bを主に守るも、マイナー通算のOPSは.757と長打力が目立つ選手ではなかった。しかし00年のシーズン途中にKBOリーグ・SKに移籍するとアジアの環境が彼に合ったのか、SSに定着し打率.338 15HR 70打点 OPS.932の好成績。02年からサムソン、04年に再びSK、05年にハンファでプレーし計6シーズンで112HR OPS.862をマーク。06年はメキシカンリーグでプレー。妻の出産のために2週間の育休を取りチームを離れたが、その後予定の2週間から育休を延長しようとしたところ球団のオーナーの不満を買い、メキシカンリーグでのプレーが不可能に。再びアジアでのプレーを求め8月から統一に入団。28試合のみの出場ながらチームトップの9HRを放ち4番打者として活躍。翌07年は4月終了時で3HRとシーズン序盤は調子が上がらず、打順を4番から3番に移すとプレッシャーから解放され5月と6月に7HR、7月9HRと打棒が爆発。結果当時のCPBL記録となる33HRをマーク(2015年に高國輝が39HRで更新)、107打点で本塁打王打点王の二冠を獲得。08年は24HRと本数を落とすも、OPSCPBLキャリアハイの1.008でチームの2連覇に貢献。オフには当然ながら再契約を望むファンの声があったが、アジアでのプレーが長くドミニカの家族のところに戻りたいという本人の希望もあり退団し引退。現在は野球界から離れ、運送会社「Pulle Transportation Ltc.」を経営している。

 豪快なフルスイングから飛距離のあるホームランを連発し、また自己管理がしっかりとしておりファンにも優しい性格、外野にメガホンを向けながら歌う応援歌の人気も相まって、統一ファンの中でも最強助っ人との声は名高い。CPBLでの通算BB%が強打者としては低めの8.8%ということも影響してか、今回のランキングでは3位となったが、統一の07~08年の優勝に大きく貢献した外国人野手として、これからもCPBLファンの中で語り継がれることは間違いないだろう。

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*5

 

鷹俠(ルイス・イグレシアス) 在籍:三商(90~96) 3B/SS

wRAA平均:27.13

 CPBL草創期に活躍したパナマの大砲。94~95年に三商で共にプレー、05年には興農で優勝に貢献した戰玉飛(レニン・ピコタ、三商時代の登録名は必可)はいとこにあたる。84~86年までカージナルス、87~89年までフィリーズでプレーするも、最高は1A止まりと力を発揮できず。当時のスカウトの評価は打撃よりも守備に優れた選手で、CPBLでは安定して打率3割以上をマークできるというものだった。その後CPBLが発足する前年の外国人選手ドラフトで三商から3位指名を受け、23歳の若さで台湾でのキャリアをスタートさせると、1年目から18HR 58打点で本塁打王打点王の二冠を獲得。91年はチームメイトの林仲秋本塁打王のタイトルを争い2本差で敗れたが、打率.331で首位打者を獲得。その後93年に右腕の骨棘の手術で8試合の出場に終わった以外は毎年安定感ある活躍を見せ、CPBL最終年の96年には打率.351 31HR 90打点 OPS1.107で本塁打王打点王の二冠を獲得、CPBL初のシーズン30HR以上を達成。97年からはTML嘉南勇士で2シーズンプレーし計44HR 161打点をマーク。その後は00年にメキシカンリーグでプレーした後は長く母国パナマプロ野球リーグでプレーを続け、46歳になる13年まで現役を続けた。

 92~96年までチームメイトだった外野手の哥雅(レオナルド・ガルシア)、2度の首位打者を獲得した康雷(アンヘル・ゴンザレス)と併せて「外籍三劍客」と呼ばれ、台湾人の長距離砲である林仲秋と並んで強打の三商打線を支える存在だった。CPBLの外国人選手としては唯一通算100HR以上(120HR)を達成しており、守備はCPBL入団時はSSとしては広い守備範囲と素早い送球を誇り、失策数は多かったが、豪快な守備を見せファンも多く、94年からは3Bにポジションを移した。CPBL発足時から結果を残し7シーズン同一球団でプレーしたその功績は数字では図ることのできない偉大な足跡である。

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 *6

 

坎沙諾(スリ・カンプサノ) 在籍:味全(94~96) OF

wRAA平均:24.00

 味全歴代で最強の4番打者。マイナーでは4シーズン二桁HR、5シーズン二桁盗塁をマークするも、メジャーでは計3シーズンで通算OPS.584と結果を残せず。しかし来台1年目の94年から長打力をいかんなく発揮。当時の台湾人長距離砲、廖敏雄(時報)と本塁打王のタイトルを争い、カンプサノはシーズン最終戦までトップの廖敏雄とは2本差の22HRだったが、最終戦で1試合3本塁打を放ち逆転。劇的な形でのタイトル獲得となった。また走力でも魅せ21盗塁をマーク。CPBL史上初の「20本塁打-20盗塁」を達成した。95年は打率.259 17HR 56打点 OPS.791と数字を落としたが、翌96年はシーズン全100試合に出場し打率.348 23HR 80打点 OPS1.057とキャリアハイ、加えて26盗塁で自身2度目の20本塁打-20盗塁を達成。翌97年からはTMLに舞台を移し、嘉南勇士で3シーズンプレー。長打力を落とすも俊足は健在だったが、99年は61試合 打率.293 6HR 24打点 OPS.816に終わり、9月21日に発生した大地震の影響で早期帰国。翌00年はメキシカンリーグでプレーし引退。

 味全はカンプサノの入団前まで4番打者を固定できず、4年間で実に10名が務める有様だったが、彼の入団後は3年間4番打者に悩むことがなかったという意味で、その存在は大きかった。また前述した長打力と走力だけでなく、守備では現在でもCPBL歴代トップクラスと呼ばれる強肩でもファンを魅了し、3シーズンでの捕殺は計43を数えた。

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*7

 

羅偉(ヘクター・ロア) 在籍:統一(96~97) 3B/2B

wRAA平均:23.85

 長打と走力を兼備した核弾頭ドミニカン。90~95年までブレーブスマイナーでプレーもメジャー昇格は果たせず。来台1年目の96年に当時のCPBL初となる「初打席でHR」でデビューを飾ると、長打力ある1番打者として能力をいかんなく発揮し、打率.344 17HR 77打点 OPS.974をマークし優勝に貢献。また当時のシーズン三塁打記録を大きく塗り替える13本の三塁打。翌年も成績は落とすも打率.317 12HR 51打点 OPS.881。ドミニカ出身であることから「黑色旋風」の愛称で親しまれ、97年の統一は羅得(フェルディナンド・ロドリゲス)、羅國璋羅敏卿と羅の付く選手が上位打線で活躍していたことからまとめて「羅家班」と呼ばれた。退団後はメキシカンリーグ、米独立リーグ、カナディアンベースボールリーグなどを転々とし03年シーズンを最後に引退。その後彼に関する近況がほとんど伝えられることはなかったが、2014年11月に当時24歳の彼女から別れを切り出されたことに不満を持ち、サトウキビ畑で殺害。その後2016年に懲役30年と賠償金の支払いを言い渡されるという、ショッキングな形で再び彼の名前を耳にすることとなった。

 ポジションはメインが3Bで、サブを2Bとして2シーズンを守った。なお前述したシーズン三塁打記録をマークするなど俊足ではあったが盗塁技術は高くなく、2シーズン計66回企図し成功率は59.1%。中でも97年は14盗塁16盗塁死と盗塁しない方が良いレベルであった。

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*8

 

帝多(フアン・ベル) 在籍:興農(97)-和信(01) SS ※興農時代の登録名は「魚貝精」

wRAA平均:23.55

 両打の遊撃手。9歳年上の兄はブルージェイズカブスホワイトソックスでメジャー通算1702安打、265HRを放ったジョージ・ベル。マイナーではSS/2Bを守る俊足内野手としてプレーし、89年に21歳でメジャー昇格。メジャーでは91年には100試合、93年には115試合に出場するも通算OPS.582と打力不足は否めず、またメジャーでの通算盗塁数もキャリア7年で16盗塁のみと足でもアピールできなかった。96年はメジャー昇格を果たせず、97年に興農に入団。登録名の「魚貝精」は親会社の興農が生産していた健康食品の名称だった。(当時興農は自社の生産する商品の名称を外国人の登録名にする風潮があった)97年は「3番・SS」に定着し94試合 打率.356 16HR 73打点 OPS.997の活躍でSSのベストナインを獲得。また走塁面でも22盗塁を稼いだ。98年からは再びマイナーに戻り、99年は米独立リーグ、00年はメキシカンリーグで2球団でプレーした後、01年に和信で4年ぶりのCPBL復帰、登録名も「帝多」に変更。しかし興農時代のようなインパクトある活躍はできず、31試合 打率.261 4HR 15打点 OPS.801で5月中旬に解雇となった。その後プレーの記録はなく、そのまま引退したものと見られるが、2016年に腎臓病で48歳の若さで亡くなった。

 CPBLはベル以降、長打力を備えた外国人SSがシーズンを通してプレーしていない。近年は外国人枠を投手に割く傾向が強くなったこと、また各球団もSSには鄭昌明、陳瑞振、鄭兆行、王勝偉など堅実に守備をこなし、小技をこなせる台湾人選手を起用する傾向が強くなったのがその大きな理由であろう。しかし長打力あるSSは打高投低の現代でも、他球団とも差をつけられるチャンスではあるので試してみる価値はあるのではないか。

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*9

 

林克(フランシスコ・ロレアノ) 在籍:統一(92~96) 2B/3B

wRAA平均:23.36

 統一で5シーズンプレーした唯一の外国人野手。ドミニカ共和国出身で、86年にエクスポズ入りし翌87年からロイヤルズに移籍。86年~89年まではA、90年~91年は主に2Aでプレー。専ら2Bを守りマイナー通算で377三振/404四球とアプローチの良さ、4シーズンで二桁盗塁をマークするなど走力は有していたが、パワー不足に苦しみ目立った数字を残せず。そんな中、91年から先に統一でプレーしていた卡羅(フアン・カスティーヨ)が長年の友人として彼を球団に推薦し、92年に僅か24歳の若さで入団。しかし当初は打撃コーチとしての入団だったが、後に選手登録されたため物議を醸した。1年目の92年から主に4番として安定した打力を誇り、打率.315 20HR 68打点 OPS1.001で打点王、最高出塁率のタイトルを獲得。また守備では内外野5ポジションを守る器用さを見せた。翌93年は2年連続で最高出塁率のタイトルを獲得、94年には当時のCPBL新記録となるシーズン41二塁打。CPBL5年目の96年にはキャリアハイの打率.342をマークするなど安定した活躍を続けた。97年からはTML高屏雷公へ移籍し2シーズンプレーし引退。

 174cm、85kgと外国人野手としてはかなり小柄な体格だった。長距離打者でないにも関わらず、マイナー時代と同じく抜群のアプローチの良さを見せ、通算217三振/248四球と四球が三振を上回ったのは、彼のCPBLでのスタッツで特筆すべき点である。ポジションは入団当初は3Bも、94年から2Bメインとなった。

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*10

 

怪力男(ジェイ・カークパトリック) 在籍:興農(98~99) 1B

wRAA平均:23.30

 登録名のように強烈なインパクトを残した左の大砲。91年にドジャース入りし94~96年まで3Aに昇格したが、1Bとしての打力を発揮できずメジャー昇格を果たせなかった。その後台湾に舞台を移し98年に興農入り。開幕から4番に座り出場23試合で10HRと打棒爆発、シーズンでも打率.387 31HR 101打点 137安打でCPBL史上初の四冠を獲得。またシーズン32敬遠、シーズン99四死球はここ数年の極端な打高のシーズンでも破られていない記録であり、興農史上初のシーズン優勝(この年は1シーズン制)の最大の功労者となった。しかし台湾シリーズでは対戦相手の味全から弱点である内角低めを徹底的に突かれ、打率.071(14-1)と大不振に陥り台湾シリーズ優勝を逃す戦犯となってしまった。翌99年も興農でプレーしたが、42試合で打率.234 3HR 14打点 OPS.693と不振に陥りシーズン途中に退団。その後米独立リーグで3シーズンプレーし現役引退。

 1シーズンでの活躍のインパクトはCPBLでも歴代最高。98年の活躍を受け中日もカークパトリックの獲得を検討したこともあった。なおポジションは1Bだが、マイナー時代から捕手の経験もあり、98年には20試合、99年には3試合捕手として出場している。

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*11

 

喬治(ジョージ・ヒンショー) 在籍:時報(94~96)-三商(98) OF

wRAA平均:17.95

 30代後半から台湾で活躍した外野手。マイナー時代は6シーズン二桁HRをマークするなどし83年からは3Aで安定した出場機会を得るも、メジャーでの出場は82~83年の計13試合のみに留まった。89年に中日でプレーし主に3番打者として、53試合 打率.294 8HR 26打点 OPS.802とまずまずの成績も、シーズン途中に左手首を故障し途中帰国し退団。90年に再び3Aでプレーし、その後左膝の手術などによる3年の空白期間の後、94年に前年から時報でプレーしていた愛快(ブライアン・ジャイルズ)の紹介で時報に入団。34歳で故障歴のある選手ということもあり不安の声もあったが、90試合 打率.340 21HR 78打点 OPS.954で打点王を獲得。95、96年も安定した活躍を見せ、CPBL史上初の「3シーズン連続20本塁打-70打点」を達成。特に96年は元巨人の丹尼歐(デニー・ゴンザレス)とのコンビが「喬丹連線」と呼ばれ、両者OPS1を超える打力で他球団の脅威となった。オフに契約交渉で給与面での球団との開きがあり退団。アメリカに帰国後は高校でコーチをしていたが、98年に三商で現役復帰。しかし当時38歳ということもあり衰えは顕著で、64試合 打率.286 5HR 23打点 OPS.767に留まり、シーズン途中に子供の教育問題を理由に退団、現役引退となった。

 30代後半から台湾でプレーし3年間安定した成績を残したのが最大の評価ポイント。加えてDHでの出場も少なく守備もしっかりこなしていた。

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 *12

 

 今回10人を紹介したが、外国人枠が多く野手に割ける時代でもあった90年代の選手が中心となり、やや馴染みの薄い選手がランクインする結果となった。次回の投手編では日本人の職棒ファンもご存じの選手が名を連ねることが想定される。乞うご期待。