台湾プロ野球データベース コラム集

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2016シーズン展望+チアリーダー名鑑 中信兄弟

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 *1

2016年シーズン展望第2回は二年連続で台湾シリーズ進出も台湾一を逃し今季への強い意気込みを見せる中信兄弟。

 

<投手>

(戦力構成)

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(WS=Win Shares 参考:

https://www.ptt.cc/bbs/Baseball/M.1444818098.A.B36.html

 

先発

悍德(右)(新外国人)

歐文(左)(新外国人)

魔力(右)(新外国人)

鄭凱文(右) 16試合 10勝4敗 103IP ERA3.50

林煜清(右) 14試合 1勝7敗 72.1IP ERA5.47

太字は移籍、新入団選手

 今季は悍德(ドノヴァン・ハンド) 歐文(ルディ・オーエンス) 魔力(ロバート・モーリー)と外国人3枠を再び全員投手に割いての戦いとなる。

 悍德は191cm 107kgの立派な体躯からストレートの球速は130km代後半が殆どながらカーブ、スライダー、チェンジアップとのコンビネーションで打ち取る技巧派右腕で13年にメジャーで31試合、昨年も1試合に登板した。ゴロアウトを多く生み出すタイプのため内野守備の不安なチームでの投球は若干不安。歐文は軟投派タイプと称される左腕で良質なチェンジアップ、カーブにマイナー通算BB/9 2.1が示す通り高い制球力も持ち合わせる。魔力は140km前半のストレートをコンスタントに投じスライダーをアウトピッチに稀にチェンジアップも組み合わせた投球スタイル。テークバックの際に右腕を頭近くまで上げる独特のフォームで投球するも、目立ったボールがあるわけではないためパワーのある打者への対応に苦労した様子が伺える。4番手は昨年2年連続二桁勝利をマークするも肘の手術のため7月下旬に離脱となった鄭凱文。怪我も癒え計算できる中信兄弟の台湾人エースとして、今年は3年連続の開幕投手となる可能性もある。5番手は複数の候補がひしめき合う中林煜清が抜けだした格好。入団から3年連続で規定投球回を投げ安定したイニングイーターとして欠かせない存在となるも、昨年は腕の疲労による炎症でわずか1勝と不振に陥り二軍調整が続いた。オープン戦でもストレートの球速は130km前後と戻っている様子は見られないものの、チームは今季彼に90球程度の球数制限を課し5番手として起用する意向。

 なおチームは3月下旬に新外国人投手を来台させる予定であり、開幕してしばらくは新外国人投手を二軍にスタンバイさせての競争が続くこととなる。

 

先発候補、及びロングリリーフ

邱品睿(左) 15試合 3勝1敗 37IP ERA2.68

鄭錡鴻(左)  5試合        2敗 13.2IP ERA9.22

許銘傑(右) 19試合 4勝3敗 85IP ERA4.76

林英傑(左) 20試合 4勝5敗 57.1IP ERA4.24

江忠城(右) 29試合 1勝1敗 26.2IP ERA8.44

太字は移籍、新入団選手

 昨年左の中継ぎとして15試合に登板しERA2.68と優れたスタッツを残した邱品睿、制球難に苦しむ鄭錡鴻の両左腕がロングリリーフから現状先発5番手を狙う有力候補。ラミゴを戦力外となり中信兄弟に入団した許銘傑はキャンプでの調整が遅れており開幕は二軍で迎え、状態が上がった段階で一軍に上げる方針。昨年26.2IP/8HRと痛打されるケースが目立った3年目の江忠城はロングリリーフに配置転換。今オフは自信を取り戻すためトレーニングを多く積んだが、その成果は現れるか。昨年戦力外から入団し20試合に登板、4勝を挙げ復活したベテラン林英傑も怪我で出遅れたが、経験ある便利屋として登板機会は十分にあるだろう。

 

勝ち継投

彭識穎(左)(新入団)

謝榮豪(右) 38試合 3勝7敗 82.2IP ERA5.44

官大元(右) 59試合 4勝2敗2S 59IP ERA3.66

陳鴻文(右) 50試合 6勝3敗24S 55IP ERA2.94

太字は移籍、新入団選手

 昨年開幕時は先発に一時転向するも奮わず後期からリリーフに戻っていた謝榮豪が今季は2年ぶりに開幕からリリーフとなり、主に7回を任されるとみられる。そして8回に官大元、9回に陳鴻文が基本となる。官大元は14年に不振に陥り酷使を危惧する声もあったが昨年は見事な活躍。しかし開幕前に右肘炎症のため戦線離脱し、復帰までは8回を謝榮豪、7回を王梓安あたりに任せざるを得なくなってしまった。陳鴻文は昨年リーグ最多セーブのタイトルを獲得もストレートの球速が出ないことに苦しみ、制球を乱すケースもしばしば。3月に行われた日本との強化試合では6失点と打たれに打たれたが、シーズンでは立ち直った姿を見せられるか。そしてルーキー彭識穎は勝ちパターン起用でのブレイクを予感させる。制球の良さを評価されているが、左腕ながら安定して140km前半のストレートを投げられるのもCPBLでは貴重な武器と成り得る。自身が目標に掲げる一軍投球回40IP以上も無理なくクリアできそうだ。

 

その他の主な投手

王梓安(右) 12試合 2勝6敗 52.2IP ERA6.49

羅國華(右) 39試合 2敗 43IP ERA5.86

周磊(右) 3試合 2.1IP ERA11.57

杜家明(右) 17試合 1勝 28IP ERA6.11

林克謙(右) 33試合 1勝1敗 31.2IP ERA7.96

 198cmの長身右腕王梓安は昨年先発メインでの起用も制球と長いイニングを投げようと球速を落とすシーンが目立ったため、今季は短いイニングで勝負。2年目の周磊は首脳陣からの期待も大きく、オープン戦では一軍のレベルを体感させるために積極的に起用されている。ビハインドの場面でも淡々と仕事をこなす羅國華、義大を戦力外となった後1年のブランクを経るも昨年中信兄弟に入団し33試合に登板した林克謙、昨年17試合に登板し経験を積み、今季はロングリリーフとして起用する見込みだった20歳の杜家明は怪我で出遅れとなった。

 

<野手>

(戦力構成)

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予想オーダー

9張正偉(左) 108試合 打率.335 2HR 41打点 OPS.832

8張志豪(左)   91試合 打率.297 14HR 45打点 OPS.879

7周思齊(左) 109試合 打率.349 15HR 79打点 OPS.941

4林智勝(右) 110試合 打率.380 31HR 124打点 OPS1.157

5蔣智賢(左)   30試合 打率.306 3HR 25打点 OPS.772

3彭政閔(右) 108試合 打率.320 4HR 57打点 OPS.808

D許基宏(左)     87試合 打率.319 13HR 56打点 OPS.966

2鄭達鴻(左) 100試合 打率.334 3HR 51打点 OPS.823

6王勝偉(右) 114試合 打率.291 6HR 40打点 OPS.720

(太字は移籍、新入団選手)

 

主な控え

(捕手)

陳家駒(左) 95試合 打率.268 8HR 32打点 OPS.730

王峻杰(右) 17試合 打率.189 0HR 5打点 OPS.460

内野手

潘萣翔(左) 11試合 打率.360 0HR 3打点 OPS.869

陳江和(右) 97試合 打率.273 2HR 28打点 OPS.642

陳偉漢(右) 31試合 打率.228 0HR 6打点 OPS.542

黃仕豪(右) 68試合 打率.267 0HR 17打点 OPS.637

蘇緯達(左) 4試合 打率.333 0HR 7打点 OPS.778

(外野手)

林威助(左) 96試合 打率.309 6HR 58打点 OPS.776

陳子豪(左) 100試合 打率.298 5HR 44打点 OPS.785

林王啟瑋(右) 14試合 打率.346 0HR 3打点 OPS.869

郭健瑜(右) 26試合 打率.359 0HR 4打点 OPS.826

 

(打線総評)

 昨年開幕時は外国人野手2人体制で弱点だった打線を補っていたが、今オフはFA加入のトリプルスリー男林智勝、義大の正捕手鄭達鴻により厚みを増し外国人枠を投手に割くことができるようになり、リーグでもトップの打線が完成しそうだ。ベストメンバーを組むとなると30代以上の選手が6人も名を連ねることとなるが他球団にとっては上位から下位まで気の抜けない打者が続く。ここ数年打線に弱点を抱えていたチームは小技や走塁を比較的重視する向きがあったが今季は重量打線。チームの攻撃スタイルにも変化が見られるか注目したい。

 1、2番は5年連続打率3割の張正偉、昨年自己最多の14HRを放ち年々成長を見せる張志豪が固い。そしてクリーンアップは3番周思齊、4番林智勝、5番蔣智賢が有力とみる。そして長きにわたりチームの不動の4番として君臨してきた彭政閔が6番に入ると予想されるあたりに打線の層の厚さを伺わせる。吳復連監督は中軸の打順について明言はしていないものの、オープン戦では4番林智勝、5番蔣智賢をほぼ固定で、2月の紅白戦では彭政閔が6番に入っていたこともあり予想オーダーの打順となる可能性は高い。昨年2年目で本領発揮となった林威助周思齊と入れ替わる形で中軸に入ることも十分に考えられる。

 7番に若き左の大砲、昨年13HRの新人王許基宏、8番にFA加入した実績あるベテラン鄭達鴻、9番に上位打線の繋ぎ役として不動のSS王勝偉が入るか。控えの選手層も内野には二遊間をこなせる潘萣翔、昨年のドラフト5位でパワーが魅力の蘇緯達がおり、外野も20歳の若さながら昨年一軍100試合に出場した陳子豪、昨年のウインターリーグで成長の爪痕を残した右の長距離砲林王啟瑋といった面々が控えデプスも厚い。目下のライバルラミゴと比較し打線に関しては追いつくどころか上回る形となったがシーズンを通してこの強力打線がどのように機能するか注目したい。

 

(捕手)

 FA加入の鄭達鴻がメインとなって起用されるとみられる。とはいえ今年で35歳となり1年通してマスクを被り続けるのは難しい。2番手を打力で一歩リードする陳家駒、1年目の13年に72試合に出場した王峻杰で争う形となり、彼らにもある程度の出場機会は与えられるであろう。中信兄弟は4球団で最多の8名の捕手を抱えており二軍も競争が熾烈である。長打力が武器の2年目林明杰、ベテラン陳智弘、昨年35試合で3HRの黃鈞聲、昨年一軍で20試合に出場の周聖訓といった面々がおり二軍の正捕手争いも簡単には決着がつきそうにない。

 

内野手

 1Bは彭政閔、もしくは許基宏が分担して務めることになるか。今年38歳となる体を考慮すれば彭政閔をDHに、許基宏を1Bに入れたいところ。彭政閔が1Bに就く場合は2Bでの起用が濃厚の林智勝を試合終盤に1Bに回し、2Bに守備力に定評のベテラン陳江和潘萣翔を守備固めとして投入することも考えられる。SSは王勝偉をメインにバックアップが潘萣翔となりそうだが、懸案は3Bレギュラー蔣智賢の守備力。昨年も28試合で6失策、守備率.909という数字が残っているが、それにも関わらず3B専任の守備固めの適役がいないのが泣き所。現状オープン戦でも彼に代わって守備固めに入っている陳江和に任せるのがベストか。また内野手の主力が軒並み30代中盤から後半に入っており蘇緯達王威晨甘少康といった25歳以下の若手内野手にもかかる期待は大きい。二軍専用球場の開設を初め設備が大幅に整備され、外国人がメインとなったファーム(首脳陣)でどこまで成長できるか。

 

(外野手)

 LFは周思齊林威助陳子豪の3人で、CFは張志豪陳子豪の2人で争い、RFは張正偉がほぼ固定となるとみられる。大幅な補強が行われた今オフで唯一手が加わらなかったポジションであり、昨年と比べて大きな起用法の変化もドラフトまではないと考えられる。林王啟瑋が右の代打からポジションを伺う形になればよりチームはより活発さを増すことだろう。

 

(DH)

 昨年は林威助周思齊の二人が主にDHに入ったが、今季は彭政閔が彼らに代わって入るケースが増加するであろう。三人の誰が入るにせよ30代後半の選手を上手く休ませながら起用するという意味においてDHは重要となる。

 

<プラス要素>

・FA選手2人獲得による打力の底上げに成功

・ルーキー彭識穎の仕上がりが順調で、他の勝ち継投の投手の負担軽減が期待できる

・捕手が計8名と4球団最多、他球団に比べ余裕を持った捕手起用が可能

・大幅に整備された二軍での若手育成

 

<マイナス要素>

・新外国人投手は打たせて取るタイプが多く、脆い内野守備に足を引っ張られる恐れ

・2B、3Bの守備に不安があり、守備固めを試合終盤に出す必要性が高まった

・先発5番手候補は多いが抜けた選手が不在

・30代の野手が多くレギュラーを占め、若手野手の出場機会が減少する可能性が大きい

 

 

チアリーダー

Passion Sisters

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*2

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  今シーズンは昨年までの8名から思妮、寶兒の2名がグループを離れオーディションにより新たに6人を追加し史上最多の12名で球場を盛り上げる。

*1:中信兄弟公式サイトより引用

*2:Passion Sisters公式FBページより引用

2016シーズン展望+チアリーダー名鑑 Lamigoモンキーズ

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2016年シーズン展望第1回はチーム史上初の3連覇に向け歩みを進めるLamigoモンキーズ

 

 <投手>

(戦力構成)

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(WS=Win Shares 参考:

https://www.ptt.cc/bbs/Baseball/M.1444818098.A.B36.html

 

先発

羅曼(右)(新外国人)

尤猛(左)(新外国人)

索爾(右)(新外国人)

王溢正(左) 23試合 11勝6敗 123.1IP ERA6.13

王躍霖(右) 10試合 1敗 14.2IP ERA5.52

太字は移籍、新入団選手

 昨年16勝とシーズンを通して大黒柱となった蘭斯佛(ジャレッド・ランスフォード)、8月中旬からの入団で6勝、台湾シリーズ第7戦でノーヒッターを達成した明星(パット・ミシュ)などとは再契約せず、10~11年に兄弟(現中信兄弟)に所属、昨年はヤクルトで61試合に登板しリーグ優勝に貢献した羅曼(オーランド・ロマン)、5年ぶりの復帰となった尤猛(シェーン・ユーマン)、昨年BCリーグ奪三振王の索爾(ライアン・サール)と3人の外国人先発で開幕を迎える。羅曼は今年で37歳となる年齢が懸念されてのヤクルト退団だったがオープン戦では無難な仕上がりを見せ、今季は先発に専念してのフル回転に期待したい。尤猛は昨年ハンファで17試合に登板し4勝6敗 ERA4.52と平凡な成績に終わり7月下旬肩の故障が早期回復しないことをうけ退団。140km前後の直球とスライダー、チェンジアップを組み合わせるスタイルだが、昨年は直球の被打率が.326と思わしくなく韓国球界での4年連続二桁勝利を阻んだ原因となった。今季も3月上旬に腕の違和感を訴えて以降投球練習をしておらず、開幕ローテ入りは絶望的。37歳という年齢や昨年の投球を見る限り今季の活躍には疑問符がつく。索爾はアジア球界での実績においては前二人に及ばないものの27歳の若さが魅力であり、力強い速球に加え鋭く落ちるスライダーをアウトピッチとする。

 4番手は昨年リーグの台湾人投手で最多となる11勝を挙げた王溢正が確実も、安定感に欠けるため外国人が不振で彼がローテを繰り上げて投げるようなチーム状況となれば苦しくなる。昨年先発(13登板)、リリーフ(6登板)を行き来しながらも85IP ERA4.76と一定の成績を残した許銘傑の退団(中信兄弟に移籍)により空いた5番手には昨年入団し主にリリーフとして一軍10試合に登板した王躍霖が入る。国際大会経験が豊富で5シーズンマイナーでプレー、故障後の一時期は球速低下に苦しんでいたが今年に入り先発でも安定して140km中盤をマークするようになった。

 

先発候補、及びロングリリーフ

洪聖欽(右) 28試合 2勝2敗 20.1IP ERA5.31

林樺慶(右) 19試合  27.2IP ERA4.55

駿傑(右) 1試合 1IP ERA9.00

曾孟承(右) 25試合 3勝1敗1S 50.1IP ERA7.15

 昨年勝ち継投に入るも今一つの成績に終わった洪聖欽、昨年リリーフとして19試合に登板した22歳の林樺慶がロングリリーフとして待機。奇しくも二人は昨年の千葉ロッテ鴨川秋季キャンプに参加した投手である。その他には昨年二軍で6勝、一軍での先発経験もある駿傑や昨年は不振でビハインド時の登板が主だったベテラン曾孟承なども控える。

 

勝ち継投

黃偉晟(右) 54試合 2勝3敗2S 44.2IP ERA5.44

林國裕(右) 40試合 2勝 36.1IP ERA4.95

陳禹勳(右) 45試合 2勝7敗4S 40.1IP ERA4.91

林柏佑(右) 44試合 5勝2敗13S 50IP ERA3.96

林彥峰(右) 13試合 1勝 11.1IP ERA6.35

游宗儒(右) (一軍登板なし)

太字は移籍、新入団選手

 勝ち継投は昨年と大きく変動はなく、6回と7回を2年連続50試合以上登板の黃偉晟、存在は地味ながら使い勝手の良い林國裕の2人に任せ、8回を陳禹勳、抑えを林柏佑に任せるであろう。他にも義大を戦力外となった後入団となった林彥峰、右サイドから最速147kmの直球を投じる游宗儒といった新入団選手にも勝利の方程式入りの期待がかかる。

 

その他の主な投手

郭文凱(右) (一軍登板なし)

洪宸宇(右) 4試合 3.2IP ERA14.73

陳敏賜(右) 2試合 1IP ERA18.00

鄭承浩(右) 11試合 2敗 14.1IP ERA5.02

王豐鑫(右) 13試合 14.1IP ERA5.65

蔡璟豪(右) 9試合 1敗 18.2IP ERA12.54

 ビハインド時、ロングリリーフでの登板が主の郭文凱は過去2年目だった成績を残せなかったが、年齢的にもそろそろ一皮剥けたい。でっぷりとした体格が特徴の投手転向2年目洪宸宇オープン戦にも登板しCPBLでは貴重な左腕で140km超えの直球が健在な所を見せ開幕一軍入り、左殺しとしてアピールなるか。191cmの長身、140km後半の直球が持ち味も制球難が課題の陳敏賜もフォームを修正し投球内容が改善、短いイニングで打者を制圧する投球が期待される。鄭承浩は同じリリーフ左腕洪宸宇の成長により肩身は狭くなったがまだ29歳と若く、奮起を促したい。

 

<野手>

(戦力構成)

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https://www.ptt.cc/bbs/Baseball/M.1444818098.A.B36.html

予想オーダー

9陽耀勳(左) 25試合 打率.425 0HR 10打点 OPS.968

8詹智堯(左) 113試合 打率.284 3HR 34打点 OPS.715

7王柏融(左) 29試合 打率.324 9HR 29打点 OPS1.017

D林泓育(右) 119試合 打率.353 24HR 101打点 OPS1.024

3陳俊秀(右) 113試合 打率.335 25HR 118打点 OPS.989

5林智平(右) 107試合 打率.305 4HR 42打点 OPS.756

6余德龍(右) 93試合 打率.301 1HR 34打点 OPS.734

2黃浩然(右) 108試合 打率.335 2HR 41打点 OPS.674

4郭永維(右) 73試合 打率.280 1HR 11打点 OPS.668

 

主な控え

(捕手)

劉時豪(左) 68試合 打率.237 1HR 12打点 OPS.649

内野手

林承飛(右) 4試合 打率.400 1HR 2打点 OPS1.164

郭修延(右) 27試合 打率.279 0HR 8打点 OPS.721

朱育賢(左) (一軍出場なし)

陳雁風(右) 32試合 打率.256 1HR 5打点 OPS.645

翁克堯(右) 6試合 打率.083 0HR 1打点 OPS.167

(外野手)

陳金鋒(右) 41試合 打率.200 0HR 7打点 OPS.533

藍寅倫(左) 56試合 打率.325 2HR 19打点 OPS.792

鐘承祐(右) 57試合 打率.276 4HR 22打点 OPS.781

林政億(右) 6試合 打率.083 0HR 1打点 OPS.167

太字は移籍、新入団選手

 

(打線総評)

 昨年両リーグ最多の124HR、785得点という圧倒的な攻撃力でチーム史上初の二連覇を勝ち取ったが、今季は昨年史上初のトリプルスリーを達成した林智勝が中信兄弟にFA移籍し、2Bレギュラーの郭嚴文が右肘の骨片除去手術、左膝の半月板手術のため前期の出場が絶望的となるなど内野の要が抜け三連覇に向けては逆風が吹いている現状。とはいえ若手の出場機会がベテランや主力の離脱、退団により増えたという見方も可能であり、若手の成長とチームの勝利を同時に見守ることができればそれにこしたことはない。

 1、2番は昨年途中入団ながら野手として打率.425と存在感を示した陽耀勳、CFレギュラー詹智堯のコンビが有力か。詹智堯は左投手との相性の悪さから左腕先発時には9番に入り上位打線への繋ぎ役になることも考えられる。3番は昨年大ブレイクし新人王のタイトル獲得を狙う王柏融が入るとみられるも、素質や実績は申し分ないが若干23歳の若さで3番に入りフルシーズン戦い抜けるのかは未知数。4、5番は林泓育陳俊秀と昨年と同じ顔触れ。

 ラミゴにとって泣き所なのは6番以降の下位打線となるだろう。2B 3B SS Cの選手が主に入ることになりそうだが、いまだに打順がはっきりしないところがあり、シーズン開幕後も手探りでオーダーを組むと予想される。即戦力高卒野手である林承飛オープン戦に入り本職のSSに加えて2Bにも就いているが打線にアクセントを加えるという意味でも郭嚴文が復帰するまでスタメンで起用し続けるのも一考か。

 

(捕手)

 昨年と変わらずベテラン黃浩然をメイン、2番手に劉時豪という形となり林泓育がマスクを被る場面はほとんど見られないだろう。劉時豪はまだ25歳と若く黃浩然の後継者として今季も引き続き出場機会を増やせるか。二軍はここ5年間中堅の許躍騰がレギュラーとなっているが22歳の許禹壕、昨年高卒で入団した嚴宏鈞の若手二人がどこまで出場機会を得られるかにも注目したい。

 

内野手

 ラミゴにとって最大の変数となるポジション。1Bは昨年2年目で打棒をいかんなく発揮した陳俊秀、3Bは2年連続盗塁王、昨年初の打率3割をマークの林智平でほぼ確定だが、2BとSSは決まらぬまま。2Bは郭永維郭修延翁克堯といった面々が守ることになりそうだがいずれも打力に乏しく、郭嚴文の復帰までは大きなウイークポイントとなることだろう。SSは昨年主にOFで起用された便利屋余德龍が有力で、彼を高卒2年目の林承飛が追いかけるという形。攻撃面を考慮するならば2B林承飛、SS余德龍が良いのかもしれないが内野手としての実績が不足しておりリスクも大きい。少ない朗報としては昨年ドラフト7位入団の1B朱育賢のアピールがキャンプ、オープン戦を通して続いていることである。陳俊秀が最近まで脇腹を傷め体調に不安がある中、持ち前の長打力でチームに良い刺激を与えてほしい。

 

(外野手)

 LF王柏融、CF詹智堯、RF陽耀勳が有力。両コーナーのポジションについては昨年陽耀勳がLF、王柏融がRFに入ることが多かったが陽耀勳の守備の負担を軽くするために洪一中監督が行ったコンバートである。しかしながら陽耀勳オープン戦で打率.083と振るわず、まずい打球の追い方を見せるなど変わらず守備に難があるところを露呈しており、仮に打棒が振るわなければ走攻守三拍子揃った14年の新人王藍寅倫や昨年の右肘骨片除去手術から復帰したかつてのRFレギュラー鐘承祐といった実力者に出場機会を奪われることは想像に難くない。このように外野は競争がかなり激しいポジションとなっているが、今年30歳を迎えた13年にブレイクの謝炫任、昨年出場機会は少ないながらも打率3割をマークした林政億の2人がどこまでこの競争に割って入れるかにも注目したい。

 

(DH)

 昨年は林泓育がほぼ1年間DHを任されていたが、今季限りでの引退を表明している陳金鋒の状態が良く開幕戦ではDHでの先発出場が確定。球団が彼のために引退関連イベントを企画している、との話もある9月の1か月間は彼の姿をスタメンで拝める機会も多くなるかもしれない。

 

<プラス要素>

・林智勝のFAによる退団でプロスペクト林承飛を一軍で起用できる幅が広がった

・台湾球界で実績ある羅曼と尤猛を獲得し新外国人の環境適応といったリスクを軽減

・外野手の層の厚さはリーグトップクラス、各選手のタイプもばらけておりバランスも良い

・昨年のドラフト組を中心に若いリリーフに飛躍の兆し、戦力となれば心強い

 

<マイナス要素>

・攻撃面において林智勝の穴埋めが困難、それに関連し2B、SSのセンターラインも固定しきれない恐れ

羅曼と尤猛は共に今年37歳となり以前のようにイニングイーターとしてチームに貢献できるか疑問

・昨年13先発、6リリーフをこなしそこそこの成績を残した許銘傑の穴を埋めることが案外容易ではない

・プロ2年目、23歳の王柏融を3番に固定することによる他球団からの厳しいマーク

 

チアリーダー

LamiGirls

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*2

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 今年は小萍、Angelの2人が脱退もオーディションにより新たに6人が加入し23人に。今後もメンバーの増員を示唆しており、その勢いは止まるところを知らない。

 

*1:Lamigo球団公式FBページより引用

*2:LamiGirls公式FBページより引用

プレミア12台湾代表選手名鑑

 

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(画像:ETtoday)

 

 今回のプレミア12台湾代表は多くの試合を自国で開催、かつ最重要な国際大会(一級賽事)という位置づけなこともありモチベーションは非常に高く、最強のナショナルチームを作るため政府やCPBL、棒球協会がタッグを組み挑む。しかしながら特に投手陣には少なからず誤算があった。40人ロースター外のマイナーでプレーする曾仁和(カブスA+)黃暐傑(ダイヤモンドバックスA)王維中(ブルワーズA+)といった有望株を招集できず、投手13人のうち8人を層の薄いCPBL投手陣から選出せざるを得なかった。そのため先発は陳冠宇、郭俊麟のNPBコンビが軸となるが、先発3番手以降はしばらく実戦から離れている宋家豪、サプライズ選出された19歳の左腕呂彥青などと大舞台での起用には不安が残る。また勝ちパターンの確立も順調ではなく、練習試合でも救援陣が失点を重ねるケースが目立った。一方野手は打高投低のリーグとはいえCPBLのトップクラスが勢揃いしており、期待が持てる陣容となっている。CPBL史上初のトリプルスリーを達成した林智勝やCPBL新記録となる39HRを放った高國輝など打線の破壊力は代表でも史上最強と言っても過言ではない。一方で守備に長けた選手が少ないのは不安要素だが、それと投手陣の層の薄さを差し引いても「打線の破壊力で打ち勝つ野球」が今大会におけるテーマとなるだろう。

 プレミア12は各グループ4位以上に入れば決勝トーナメントに進めるため、台湾としてはなんとしても5試合中2試合以上の勝利が当面の目標となる。そのためカリブ勢では一番戦力が厳しいとされるプエルトリコ、台湾と決勝トーナメントの最後の切符を争うライバルとなりそうなイタリアは投手陣の層が厚くないため何としても勝たなければならない相手となる。グループA突破の可能性が高いオランダ、カナダ、キューバとは苦しい試合展開になることが予想されるが、この3か国の中で一番期待が持てるとすれば13年WBC一次ラウンドで勝利を収めたオランダか。

 13年WBCは周囲の予想を良い意味で裏切り一次ラウンドを突破し日本戦では大善戦を繰り広げ、国内の野球人気を押し上げる原動力となった。あの感動をまた台湾の野球ファンの前で再現することはできるだろうか。2年前は悔し涙を流した東京の地に今回は笑顔で姿を見せることを願ってやまない。

 

(スタメン予想)

8陽岱鋼 6郭嚴文 4林智勝 D林益全 7高國輝 2林泓育 3陳俊秀 5陳鏞基 9王柏融

(控え)

C 高志綱 張進德

2B 林志祥

3B 蔣智賢

CF 張志豪

RF 張建銘

 

(先発)

陳冠宇 郭俊麟 宋家豪 倪福德 呂彥青

(ロングリリーフ)

潘威倫 林子崴 王鏡銘

(リリーフ)

羅國華 陳禹勳 林柏佑 陳鴻文 羅嘉仁

 

プレミア12台湾代表 グループA試合日程(球場は全て洲際)

11/9 18:30 vsオランダ 

11/11 18:30 vsイタリア 

11/12 18:30 vsカナダ 

11/14 18:30 vsキューバ 

11/15 12:30 vsプエルトリコ

 

プレミア12台湾代表選手名鑑

(名前をクリックすると個人成績or棒球wikiのページにジャンプします。)

 

(先発)

陳冠宇(チェン・グァンユウ)ロッテ 25歳 179cm 75kg 左左

14試合 5勝4敗 61.1IP ERA3.23

 代表エース格となる左腕。今年はテスト入団から這い上がり6月に一軍初勝利を挙げると、9月と10月でERA0.96 3勝を挙げチームのCS進出に大きく貢献した。最速146kmのストレート(ツーシーム)にスライダー、カーブ、フォーク、シュート、チェンジアップと豊富な球種を持ち合わせるが今大会の練習では特にチェンジアップとフォークの調子が良いとの本人談。初戦となる9日のオランダ戦先発の可能性が高いとみられるが、10年のインターコンチネンタルカップでのオランダ相手に5.2IP/2Rの好投をもう一度見せられるか。

郭俊麟(グォ・ジュンリン)西武 23歳 175cm 70kg 右右

21試合 3勝7敗 79.2IP ERA5.31

 即戦力として期待され開幕2連勝と上々のスタートも以降は他球団からのマーク、ストライクゾーンの狭さなどに苦しみ二軍落ち、一時期リリーフへ配置転換。アマ時代の一番の武器だったチェンジアップが今年は打者に狙われるボールとなり、カーブとスライダー中心の投球にモデルチェンジを強いられた。シーズン後半から横田投手コーチと共にシンカーをレベルアップさせ、今大会ではストレートと組み合わせてピンチでもゴロアウトを奪えるようになりたいと語っており、またしばらく封印していたチェンジアップも再び解禁となるようだ。

宋家豪(ソン・ジャーハオ)楽天 23歳 186cm 103kg 右左

 楽天としては3人目となる台湾人選手。今年のドラフトで統一のドラフト2位指名を受けるもそれを蹴り育成契約でNPBへの挑戦を決めた。がっちりとした体格から最速151kmの重い球質のストレート、チェンジアップ、スライダー、カーブを投じ内角も臆せず攻める強気の投球が持ち味。実戦から離れていた影響か制球、変化球が今一つと今大会に向けての調整は順調ではないものの、国際大会の経験は豊富。先発3番手あたりでの起用が予想される。

倪福德(ニー・フーデ)義大 33歳 182cm 90kg 左左

11試合 4勝2敗 57.1IP ERA5.18

 CPBLでは貴重な先発左腕。今年のドラフト2位で2年半の複数年契約、一年目の月給43万元でという好待遇で迎えられたが今季は平凡な成績に。140km台前半のストレートと横に大きく曲がるスライダーの組み合わせというスタイルは変わっていないが以前のサイドスローに近いフォームからスリークォーターになったため悪い意味で癖がなくなった印象を受ける。

呂彥青(ル・イェンチン)台湾体育大 19歳 175cm 65kg 左左

 今代表最大のサプライズ選出。一次候補にも入らなかった顔にあどけなさの残る19歳の評価を高めたのは9月のアジア選手権。初戦の韓国戦でリリーフし3.2IP/5Kの快投に始まり、最終戦の日本戦では先発し6回無失点で準優勝に大きく貢献した。細身ながら最速147kmのストレート(平均142~143km程度)にスライダーが主な変化球でチェンジアップも投じるが変化球は制球が定まらないことが多く、全体的にもコマンドを高める必要がある。ストレートの勢いがプレミア12で格の上がる打者相手に通用するか、長いイニングを投げられるスタミナには疑問符がつくが手薄な投手陣ゆえ、今のところ先発候補の一人に数えられている。

 

(ロングリリーフ)

潘威倫(パン・ウェイルン)統一 33歳 182cm 98kg 右右

 25試合 7勝9敗 153.1IP ERA4.75

 CPBL通算最多勝のベテラン右腕。今季はエースとしては物足りない成績も、台湾人投手としてはリーグ最多イニングを投げ5年ぶりに規定投球回に到達と一年間先発の軸として機能。今大会ではリリーフとして調整を続けており、先発の層が薄い代表では大事な役回りとなる。13年WBCでは一次ラウンドのオランダ戦で2番手として4.2IP/0Rの好投を見せたが、再び大事な初戦でオランダーキラーとなれるか。

林子崴(リン・ズーウェイ)統一 20歳 179cm 78kg 左左

14試合 2勝1敗 26.2IP ERA3.04

 統一の未来を担うプロスペクト。若くして代表経験は豊富で、今季はドラフト1位で指名を受けると即戦力左腕として8月上旬からリリーフメインに起用され、3試合にも先発。球の出どころの見にくいフォームからスライダー、カーブ、チェンジアップを持ち球にノビのある140km中盤のストレートを繰り出すが、コマンドがまだ粗削りなせいかシーズン終盤は球速を落とし制球の向上を図ったかのような姿も見られた。今大会では貴重な左のリリーフとして活躍が期待される。

王鏡銘(ワン・ジンミン)統一 29歳 176cm 93kg 右右

32試合 5勝10敗 101.2IP ERA6.99

  13年WBC代表。13年に肩を怪我した後は球速が落ち、150km超の直球一辺倒からスライダーをメインに、カーブ、チェンジアップといった変化球も交えて打者と対峙するようになった。現在は今季も昨年に続き先発とリリーフ両方をこなしたがどちらも今一つの成績に終わりBB/9が3.23→4.60と悪化、自身初となる二桁敗戦を喫した。そんな中でも代表入りするあたりに今回の投手陣の層の薄さを感じざるを得ないのは悲しいところ。一次予備候補からの選出に本人も「29億元のロトに当たったみたい」と驚きを隠せない様子。

 

(リリーフ)

羅國華(ルォ・グォホァ)ツインズRk 23歳 178cm 88kg 右右

19試合 4勝1敗7S 31.1IP ERA1.44

 投手陣で唯一のマイナーリーガー。昨年の仁川アジア大会、9月のアジア選手権でも代表入りしており、アジア選手権ではシーズン中と同じく抑えを任された。年々K/BBが向上しており今年は31.1IP/43K/8BBと上々の成績で、小柄ながら最速96マイルのストレートを軸にスライダー、フォーク、チェンジアップを組み合わせ打者を料理する。勝ちパターンとして名前は挙がっておらず6、7回でマウンドに上がることになるとみられる。

陳禹勳(チェン・ユーシュン)ラミゴ 26歳 182cm 88kg 右右

45試合 2勝7敗4S 40.1IP ERA4.91

 昨年ルーキーながらセットアッパーとして30ホールドでタイトルを獲得し優勝に貢献したが、2年目の今年は酷使の影響か昨年後半から引き続き開幕から波に乗れずセットアッパーの座を明け渡すこともあり二軍落ちも経験、ERAは1点以上悪化した。K/9やBB/9といったスタッツは大きく悪化はしていないものの突如制球を乱すことがあり、またGO/AOが1.40→2.04と大幅に上昇したことで脆さのあるチームの内野守備の影響を受けた可能性がある。140km台後半を常時マークする直球でぐいぐい押すパワーピッチャーで、変化球はスライダー、チェンジアップ、フォークを投じる。

林柏佑(リン・ボヨウ)ラミゴ 29歳 183cm 91kg 右右

44試合 5勝2敗13S 50IP ERA3.96

 09年WBC台湾代表、2011年IBAFワールドカップ代表の経験がある右腕。不安定なチームの投手陣の中で、4月中旬から抑えの座を守り続けた。春季キャンプでは先発として調整していたため、抑え転向は本人も驚きだったといい、チームの先輩である許銘傑からのアドバイスや他球団の抑え投手のチェック、リベラの自伝を読むなどして新しい環境に適応していったという。昨年に引き続いて被安打数がイニング数を上回りながらも50IP/52K/11BBと立派なスタッツ。直球の球速は140キロ前半であることが多いが、ノビのあるボール。コマンドが特段優れているわけでもないが投げっぷりが良くストライクゾーンでうまくボールがばらけている印象。

陳鴻文(チェン・ホンウェン)中信兄弟 29歳 180cm 97kg 右右

50試合 6勝3敗24S 55IP ERA2.95

 中信兄弟の守護神。今季は抑えとして初めて一年間投げぬき見事セーブ王のタイトルを獲得し台湾シリーズでも鬼気迫る投球でラミゴをあと一歩まで追い詰めた。イニングを跨いでのセーブも難なくこなすため台所事情の苦しいブルペン陣においては使い勝手のいい選手である。13年のWBCでは日本相手にリードを守り切れず敗戦投手となったが、準々決勝以降の対戦でのリベンジに燃えている。

羅嘉仁(ルォ・ジャーレン)義大 29歳 180cm 90kg 右右

49試合 2勝5敗10S 43.1IP ERA5.19

  今季CPBL最速の157kmをマークした義大の守護神。絶好調だった昨年から一転、今季は9度のセーブ失敗で二軍落ちを経験し僅か10セーブにとどまる不振を経験、抑えとしての役割を十分に果たせなかった。しかし今大会の練習では投球リズムをゆっくりにするようアドバイスを受け変化球、制球ともに改善されたとの本人談。実際練習試合では好投を見せており、現状抑えの筆頭候補か。持ち球はカーブ、チェンジアップ、カットボール

 

(C)

林泓育(リン・ホンユー)ラミゴ 29歳 181cm 103kg 右右

119試合 打率.353 24本 101打点 4盗塁 OPS1.024

 ラミゴ強力打線の4番。成績面ではBB%が昨年の4.69%から9.84%に大きく向上。今季もほぼDHとしての出場だったが、打撃重視のスタメンを組む可能性の高い今回の台湾代表では主戦捕手として起用されるものとみられる。とはいえ13年のWBCではオランダ戦や日本戦において捕手としてスタメンマスクを被っており、郭泰源監督も7月下旬にはラミゴ首脳陣に「捕手としての適性を見たい」と伝え8月中旬まで捕手としても出場し、シーズン後の代表合宿でも捕手として練習を行っているため大きな問題はないと思われる。

高志綱(ガオ・ジーガン)統一 34歳 178cm 75kg 右右

 75試合 打率.258 1本 21打点 3盗塁 OPS.637

 長年代表で活躍してきたベテラン捕手も近年は成績が下降気味。今季は故障もあり120試合制になった09年以降では最少の出場数にとどまり、9月中旬以降はルーキーの林志賢にポジションを譲る機会も増え世代交代の波を感じさせた。打力重視のスタメンを組むことを考慮すれば、今大会は林泓育のバックアップとしてチームを支えることになりそうだ。

張進德(ジャン・ジンデ)パイレーツA+ 22歳 180cm 100kg 右左

 99試合 打率.292 5本 41打点 2盗塁 OPS.713

 野手では唯一のマイナーからの選出。守備力に長けミスが少なく、捕球と送球共に安定しており、年々出場機会を増やしているが今年はCとしてはトッププロスペクトと出場機会を分け合う形となり、*1DHでも53試合出場した。代表では打てる若手の三番手捕手として出番を待つことになるとみられるが、不測の事態でも安心して任せることができる実力は持ちあわせている。

 

(1B)

林益全(リン・イーチュエン)義大 30歳 180cm 83kg 右左

 117試合 打率.367 23本 126打点 1盗塁 OPS1.008

 義大の4番。今季も126打点で打点王を獲得。史上唯一の3度のMVPに輝いた高い完成度を誇る打撃を見せつけ、アジア最速となる通算1000安打も達成。代表でも同じく4番として強力打線を引っ張ることになるとみられるが、国際大会で成績を残せていないのが懸案事項。今年こそ「活躍できるのは国内のみ」という汚名返上なるか。1B守備は陳俊秀と共に上手いとは言えないが、彼が1Bに入る場合は陳俊秀はDH、DHに入る場合は陳俊秀が1Bに入ることとなりそうだ。

陳俊秀(チェン・ジュンショウ)ラミゴ 27歳 183cm 97kg 右右

113試合 打率.335 25本 118打点 11盗塁 OPS.990

 安定感増した右のパワーヒッター。10年の広州アジア大会、昨年の仁川アジア大会代表など国際大会経験豊富で、今季は初年度の不振を吹き飛ばすように打ちまくりリーグ3位の118打点をマーク。特に9月は7HR、35打点と打ちまくり6番を打っていた打順もシーズン終盤には5番を打つことが増えた。26試合で2HRに終わった昨年よりもグリップを下げ重心をより低くした打撃フォームもこの好成績に一役買った印象。林益全とは1Bのポジションを争うことになるが、現状1Bでスタメン起用されそうか。左投手に強いためベンチスタートになった場合は勝負所での代打起用も面白い。

 

(2B)

林智勝(リン・ジーシェン)ラミゴ  33歳 183cm 100kg 右右

110試合 打率.380 31本 124打点 30盗塁 OPS1.158

 日本の野球ファンにも知名度が高いであろう台湾の大砲。今季は打高ということを考慮しても素晴らしい成績を残し、CPBL初のトリプルスリーを達成、台湾シリーズ、そしてシーズンでもMVPを獲得。今大会ではキャプテンに就任し台湾代表の顔にもなる。課題と言われる守備は9月中旬までSSをメインに守っていたが、以降は郭嚴文と入れ替わる形で2Bとしての出場が増え、試合後半にポジションを再び入れ替えるケースもしばしば。今大会では2BもしくはSSをメインに1Bでの起用の可能性もある。今年で5年契約が終了しFA権を行使したが「就活」としてもこの大会でのアピールは重要となるだろう。

林志祥(リン・ジーシャン)統一  28歳 173cm 74kg 右左

 107試合 打率.302 4本 54打点 20盗塁 OPS.709

 統一の核弾頭。今季は3年連続20盗塁に加え失策数もプロ入り後初の一桁(8失策)、ベストナインゴールデングラブの両方を獲得し充実の一年に。範囲が広く安定感のある2B守備は守備に不安のある林智勝がスタメンで出るようであれば守備固めとして貴重なものとなる。打撃は四球を選ぶことが少なく出塁率に物足りなさがあり、代表でスタメンに入れるとすれば9番が無難か。なお3Bも守ることはできるがあまり上手くはないため緊急時以外は任せない方が良い。陽岱鋼とは小学生時代の99年以来16年ぶりの代表での再会となった。

 

(3B)

陳鏞基(チェン・ヨンジー)統一 32歳 179cm 83kg 右右

107試合 打率.278 14本 50打点 16盗塁 OPS.824

 統一の攻守の要。今季は初の二桁本塁打をマークし3年連続二桁盗塁を達成した一方でSSと2Bしか守ることはなかった守備では過去ワーストの20失策、守備率.949。サブポジションとして3Bも無難にこなせる選手は彼のみで、今大会では蔣智賢と3Bのポジションを争うことになりそう。13年WBC日本戦では延長10回に併殺打を放ち最後の打者となった。

蔣智賢(ジャン・ジーシェン)中信兄弟  27歳 183cm 95kg 右左

 30試合 打率.306 3本 25打点 0盗塁 OPS.772

 09年WBC、昨年の仁川アジア大会代表。マイナーで9シーズンプレーし今季はシーズン前半を高知の4番として過ごした後、ドラフト1位で中信兄弟に入団。入団すぐは結果を残せなかったが徐々に調子を上げ及第点の成績を残した。打てる3Bがリーグ全体を見渡しても彼くらいしかいない事情を反映し、3Bとしてスタメン出場の可能性もあるが懸案事項の守備は範囲、送球に難ありで時たま好プレーを見せる一方、強襲してきた打球にうまく反応できない場面やイージーミスも目立ち3Bで26試合5失策。守りを捨て打撃に特化した感のある代表の象徴とも言えるが、果たして結果やいかに。

 

(SS)

郭嚴文(グォ・イェンウェン)ラミゴ 27歳 179cm 86kg 右左

109試合 打率.297 9本 71打点 14盗塁 OPS.767

 ラミゴの二塁レギュラー。今季はアジアタイ記録となる33試合連続安打を放ち、盗塁数も自己最多の14盗塁をマークした一方で、右肘の骨棘にも悩まされたのか打高のリーグを考慮すれば物足りない成績に終わり、2Bのベストナインゴールデングラブ賞共に林志祥に奪われる形となった。今大会ではシーズン終盤スタメンで起用されたSSでのスタメン起用、もしくは2Bでの出場となるだろう。練習試合では今シーズン1度しか出場のない2番での起用が多いが、あまり小技は得意としないためベンチから作戦を仕掛けるとなればエンドランや右打ちがメインとなると思われる。

 

(LF)

高國輝(ガオ・グォフイ)義大 30歳 189cm 95kg 右右

 120試合 打率.324 39本 110打点 7盗塁 OPS1.016

 台湾の大砲。今季はCPBL記録を大きく更新する39本塁打を放ち2年連続でタイトル獲得。また今年リーグで唯一全試合出場を達成した。リラックスした打撃フォームから長打を生み出し、代表でもクリーンアップに入り強力打線の核になるとみられる。守備はLFをメインに外野は全てこなせるが、かつて5ツールプレーヤーとしての評価を受けた面影はなくフライの追い方に難がありスピードも落ちているため、CFはまず代表戦では守らせることはなくLFで固定となるだろう。パクビョンホ(ネクセン)を意識したかのような打撃フォームだが、本当に本人が意識しているかは不明。

 

(CF)

陽岱鋼(ヤン・ダイガン)日本ハム 28歳 183cm 87kg 右右

86試合 打率.259 7本 36打点 14盗塁 OPS.664

 日本でもお馴染みの台湾の英雄。今季は5月に左手首の剥離骨折などでレギュラー定着後最少の出場数も代表では不動の「1番・CF」としてチームを引っ張る活躍が期待される。381PAで93K/21BBと打席でのアプローチに相変わらず課題を残すが、広い守備範囲と走力、14年に25HRをマークした長打力でチームを活気づけたい。

張志豪(ジャン・ジーハオ)中信兄弟 28歳 180cm 81kg 右左

91試合 打率.297 14本 45打点 12盗塁 OPS.879

 バントは少なめの強打の2番打者。アマ時代の09年のアジア選手権以来、プロ入り後大きな大会での国際大会選出はなかったが今回嬉しい代表入りを果たした。ここ数年はパワーもつけ2年連続の二桁本塁打をマークし入団から6年連続で二桁盗塁と走力も持ち合わせる。守備ではCFとしてホームラン性の打球を何度も好捕するなどフェンス際の打球に強いイメージがあるが、Win Sharesで算出された守備指標では平均レベル*2なのは打球判断のまずさなども影響してのものか。顔もプレースタイルも似ている陽岱鋼とは同じCFのポジション(かつここ数年はほぼCFしか守っていない)ゆえベンチで出番を待つ機会が多いと予想されるが、パワーヒッターが揃った強力打線において代走、代打、外野のバックアップとして使い勝手のいい貴重な駒となれる可能性は十分にある。

 

(RF)

張建銘(ジャン・ジェンミン)義大 35歳 176cm 75kg 左左

114試合 打率.342 11本 74打点 4盗塁 OPS.872

 代表最年長のベテラン。今季は自身初の二桁本塁打をマークし2番を中心に強力打線の1ピースとして機能した。強肩と積極的な打撃は健在で2度のWBCアジア大会北京五輪と代表経験豊富。かつ国際大会での成績も良く頼れる存在となりそうだ。RFのポジションは経験と守備力ならば張建銘、打撃の爆発力ならば王柏融という選択になるであろうが、優劣はつけがたく監督の好み次第でスタメンを決定することになるだろう。

王柏融(ワン・ボーロン)ラミゴ 22歳 181cm 90kg 右左

29試合 打率.324 9本 29打点 0盗塁 OPS1.017

 ラミゴを救ったスーパードラ1。ソフトバンクも獲得に興味を示していた*3大物外野手は、入団後二軍戦を経ることなく9月上旬から一軍で出場するとルーキー史上最速で30安打、3試合連続HRなどとにかく打ちまくり、中信兄弟との台湾シリーズでは林智勝と並び新記録となる合計14安打を放ち、優秀選手にも選ばれるなどルーキーと呼ぶのもふさわしくない大活躍を見せた。一次候補の45人に入らなかったにも関わらずの選出はこのシーズンでの大活躍が大きかったのは言うまでもない。速いスイングスピードから逆方向へも長打を打てる完成度の高い打撃が一番の武器。弱点と言うべき明確なものは見つからないが、強いて挙げるならば変化球への対応が比較的苦手か。RFはベテラン張建銘とポジションを争うことになるが、自慢の打撃をアピールできるか。

2015ドラフトを振り返る 統一7-11ライオンズ

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指名選手

1巡目 林子崴 19投 左左 中國文化大學 

2巡目 宋家豪 22投 右左 國立體育大學

3巡目 鄭鎧文 23外 右右 國訓

4巡目 林志賢 22捕 右右 台灣電力

5巡目 蔡亦玄 21內 右右 中國文化大學

6巡目 郭力瑋 18投 右右 南英商工

7巡目 郭阜林 24內 右右 統一練習生

8巡目 郭恆孝 26投 左左 崇越隼鷹

9巡目 江亮緯 18外 右右 南英商工

10巡目 莊駿凱 23外 右右 統一練習生

 

・寸評

常勝球団に急がれる世代交代。特に統一においては長打を期待できる野手の育成は急務となっている。勝ちを知るベテランが軒並み30代前半から後半に入る中、ラミゴのような強力打線を築くことは難しくともここまでリーグ最少失点と奮闘している投手陣のプラスを打ち消さない程度に適度な補強と新陳代謝は最低限必要だ。しかしながら、そのような中で行われた今年のドラフトは多くのファンにとっては不満の残るものとなった。陳連宏監督はドラフト後のインタビューで「チームの若返りは会社側の決定」と語ったように首脳陣の思いとは異なるドラフト戦略になった可能性は否定できない。しかしそのような中にあっても未来を見据えつつ着実に即戦力を補強したことについては一定の評価を与えても良いのではないだろうか。

即戦力を獲得すると予想された中で1巡目で指名された林子崴はブレーブス、ツインズからも興味を示された大物左腕で、新人として過去最高の契約金を得るのではと目されている。ストレートの球速は137~142kmと特別秀でてはいないものの、スライダーとカーブの制球は高評価を受けており、最近は二種類のチェンジアップも投げるようになり投球のバリエーションが増した。加えて牽制技術の上手さにも定評がある。現在でも先発3、4番手あたりに入れる実力は持ち合わせているものの、高校時代に腰と左肘を傷めておりプロ入りからすぐの過度な酷使は避けたいところ。

2巡目の宋家豪は今ドラフトナンバーワン右腕の呼び声高い将来のエース候補。185cm、92kgのがっちりとした体格から最速151kmの重い球質のストレートで打者の内角を厳しく突く本格派。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップを投げるが特にスライダー、チェンジアップはプロでも通用するクオリティとの評も。4巡目の林志賢と共に兵役を免除されているためユニバーシアード終了後すぐに契約に至れば後期からの出場も可能となる。

3巡目の鄭鎧文は春季リーグで最多の6本塁打を放ったパワーの持ち主で、大きなスイングが特徴も三振数は決して多すぎることはなく、ポジションも統一が長打力のある選手を欲しているOFと鄧志偉が今一つのパフォーマンスに終わっている1Bを守ることができ、加えて代表経験がないため契約金を安く抑えられることも考慮すれば3巡目で良い指名ができたと捉えられる。

4巡目の林志賢は台湾アマ強豪の台湾電力で主戦捕手としてならし、打者の弱点を突いていく強気のリードが特徴。同時に強肩と広い守備範囲を持つSSもこなす俊足捕手であるが、統一はSSとして起用予定。堅実にな守りを見せる内野手が不足しているチームを救う存在となるか。

5巡目の蔡亦玄は大学時代は2B、SSを守り走力と守備力で高い評価、21U代表にも選ばれた。すぐに一軍で活躍できる存在ではないが、センターラインを任せられる守備力で2Bレギュラーとして活躍している林志祥の後釜となれるか。

6巡目の郭力瑋は高卒ながらボールのキレ、制球、変化球を主な武器とする右腕でオーバースローからカーブとチェンジアップといった縦方向の変化球を主に投じる。ストレートも安定して135kmを超え、最速は142km。

7巡目の郭阜林はヤンキースマイナー時代「Aロッドの後継者」とも謳われたが13年末にリリースされた後台湾アマを経て今季から統一の練習生としてプレー、二軍成績は24試合 .310 2本 13打点 OPS.911と好調。守備も5つのポジションをこなす器用さを見せ今季中の一軍昇格が濃厚。年齢もまだ24歳と若いのもプラスポイント。

8巡目の郭恆孝は福岡第一高校、福岡経済大学でプレーし高校時代は最速147kmをマークする怪物左腕としてNPB10球団のスカウトが注目した存在だが高3時の肘の怪我により指名は見送られ、大学でも計200イニングを投げERA3.33と成績は悪くなかったが肘の故障が癒えきっておらずやはり指名はなく、新潟アルビレックスでプレー後台湾に戻った経歴を持つ。138~146kmのノビのあるストレートとスライダー、チェンジアップが主な持ち球の本格派だが制球難が課題。下位指名だが26歳という年齢を考えると左の中継ぎあたりで一軍に食い込みたい。

9巡目の江亮緯は170cm 76kgと小柄だが高校時代は主軸として活躍。パワー、俊足、強肩を兼ね備え伸びしろに期待できる外野手。

10巡目の莊駿凱も郭阜林と同じく今季は統一の練習生としてプレー、29試合 .368 1本 9打点 OPS.946と打撃成績の良さが光る。守備はCFを中心にバッテリー以外の7ポジションをこなしてはいるものの守備率は.903と特に内野守備は合格点をつけられるレベルではない。今季既に7盗塁をマークしている俊足と広い守備範囲を武器にまずは一軍で代走、守備固めといった出場機会から外野手としてチャンスをつかんでいきたい。

 

・今後の展望

今回の統一のドラフトは見る人によって評価が大きく分かれるものとなったのではないだろうか。1、2巡目で即戦力となる若手投手を獲得し、3~5年後の投手王国へ向けての礎を築いたと見ることも可能である一方で、内外野ともに長打を期待できる選手を3巡目の鄭鎧文しか獲得できなかったことについて主力の高齢化が進む野手の先細りを危惧する声があってもおかしくはない。今ドラフトは野手の大物も多かった分、1巡目または2巡目で狙ってもよかったと筆者自身思うところはあるが、長打を期待できる選手は来年以降の即戦力となる選手の指名、野手中心のドラフトで凌ぐ算段と予想する。かつての常勝球団は投打ともにバランスの取れた陣容から若手に有望株が揃った投手力を生かした守り勝つ野球にうまくシフトしていけるのか、今後に注目したい。

特別インタビュー 中信兄弟チアリーディングチーム「Passion Sisters」リーダー 壯壯

台湾野球の魅力の一つは独特の活気ある応援。それを盛り上げるのが中国語で「啦啦隊」と呼ばれるチアリーダー達です。今回は日本の野球ファンの皆様に台湾のチアリーダーの日常を知ってもらい、より親しみを持ってもらおうという思いのもと中信兄弟のチアリーディングチーム「Passion Sisters」のリーダー、壯壯(ジュアンジュアン)さんにご協力いただき前後期シーズンの合間を縫ってインタビューを行いました。壯壯さんにはこの場を借りまして改めてお礼申し上げます。

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「Passion Sisters」とは?

2014年3月24日に結成されたCPBL・中信兄弟のチアリーディングチーム。メンバーは今年から壯壯、優格、皮皮、貴貴、思妮、寶兒、豆芽、東東の計8人。全員芸能事務所「多利安經紀公司」に所属しており、2年目に入った今年からはダンスを台湾でも指折りの振付師DaMove氏のもと一新。また同じ事務所に所属する人気アイドルグループ「Dream Girls」のプロデューサーであるJeffery氏が書き上げた台湾プロ野球のチアとしては初のテーマソング「蹦蹦跳」(日本語で「飛んだり跳ねたり」の意味)をリリース。ダンスで選手やファンを盛り上げるだけでなく歌声でも中信兄弟をサポートしている。

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それでは早速インタビューをご覧ください!(壯壯さんの回答については筆者訳)

壯壯さんの詳しいプロフィールはこちらを参照ください。

 

--壯壯さんこんにちは!まず初めに簡単な自己紹介をお願いします。

壯壯:皆さんこんにちは、壯壯です!中信兄弟のチアリーディングチーム「Passion Sisters」のリーダーを務めています。

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--壯壯さんはどうして象young女孩(注:兄弟象時代の13年に結成された前身のチアリーディングチーム。)のメンバーになろうと思ったんですか?

壯壯:実はお姉ちゃんから「試しに行ってみたら?」ということでチアリーダーの仕事を紹介されたんです。その時はチアリーダーとしてのキャリアが始まるとは思ってもいませんでした。

(下の画像は象young女孩時代の壯壯さん)

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--壯壯さんから見た他7名のメンバーの性格を15文字ほど(中国語)で教えてください。

(メンバーの名前をクリックするとfacebookページにジャンプします)

優格:クールな女性になるのが好きだけど、心の中には気弱な女の子が住みついている

皮皮:ファッションの教祖、流行に敏感

貴貴:とても正直者で努力家の美女

思妮:体力とエネルギーが100点満点の妖精

寶兒:萌えの国から来た可愛い女の子

豆芽:あなたよりお喋りな女の子は他にいません(笑)

東東:ぼんやりしてるけど人が思いもよらないことを考えつく切れる頭を持っている

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--壯壯さんは今年でチア3年目に入りましたが、チアになった当初と比べて今現在何か変化はありましたか?

壯壯:私にとって象young女孩からPassion Sistersの一員になったのは少女が大人の女性になるような大きい変化がありました。パフォーマンスの表現方法や衣装のデザインの変化もあり、また応援スタイルもより一層多様なものになりました。これも全てファンの皆さんにより完璧に近い、また違ったものをお見せしたいからです。

 

--壯壯さんは他3球団のチアと比べてPassion Sistersの特徴はどこにあると考えていますか?

壯壯:上品さと美しい笑顔です!

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--Passion Sistersのメンバーの皆さんはチアリーダーとしての活動以外にどのようなお仕事をされていますか?

壯壯:モデル(CMや雑誌など)の仕事をしていますね。

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--チアリーダーという仕事の良い点、悪い点を教えてください。

壯壯:良い点はファンの皆さんと一緒に大きな声で応援できることです。私は中信兄弟の「絶対に諦めない」精神が大好きで、これが力強いパワーとなってそれぞれのファンが選手の為に頑張って応援し、球場一体となって声を出すのが一番楽しいことです!昨年後期に優勝を決めた際に黄色のテープを投げ入れた際の感動は今でも覚えていて、心の中でドキドキしながら踊っていたことを思い出します(≧∇≦)

悪い点は絶対に病気をしたり体の違和感を覚えたりすることなく、常にベストコンディションを維持しなければいけないことです。球場での一日はかなりの体力を消耗するので、もしも体に違和感があれば無理をせずに休む必要があります。そうなってしまった際はパフォーマンスをファンの皆さんに楽しんでもらえないので辛いですね。

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--壯壯さんの好きな選手は誰ですか?理由も併せてお願いします。

壯壯:投手であれば鄭凱文選手です。私と同じくとてもたくましい人ですからね(≧∇≦)あとはパフォーマンスが非常に安定しているのもいいですね!非常に素晴らしいピッチャーだと思います。また野手であれば彭政閔選手です。私たち中信兄弟の精神的支柱ですから。

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--Passion Sistersを一文字で表すとしたらどの字を選びますか?理由も併せてお願いします。

壯壯:「秀」です。上品な女性たちが(注:「上品な」は中国語で「"秀"氣」)とても大きなエネルギーを出すことで球場で情熱を体現し素晴らしい自分を見せることによって、それぞれのファンの皆さんを感動させることができますからね。

 

--シーズン中Passion Sistersの皆さんは他球団のチアの方との交流はありますか?それとも日常生活においてもライバルなのでしょうか?(笑)

壯壯:ありますよ。プライベートではどのチームのチアリーダーの女の子ともお互い良き友達です。何人かは知り合って長い姉妹のような関係で、また何人かは仕事において良きパートナーでもあります。

 

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--初めて台湾にプロ野球を見に来た日本人が驚くことは球場に入って感じる独特の熱気や雰囲気なのですが、壯壯さんは台湾野球の魅力はどこにあるとお考えでしょうか?

壯壯:「精神」にあると思います。野球は台湾を代表するスポーツで、球場に足を踏み入れれば1万5000個の消えない灯りを感じることができるでしょう。その灯りはそれぞれの選手の上に灯る、熱く燃えたぎる精神です。私はこれも皆さんが野球を愛する上で決して切っては切れない感動だと信じています。

 

--壯壯さんはチアリーダーになる前から野球が好きだったのでしょうか?それともチアリーダーになってから野球に興味を持ち始めたのでしょうか?

壯壯:チアリーダーになってから野球に興味を持ち始めました。元々野球についてあまり知らなかったのですが、チームに同行して色々な場所で試合を経験していく中で、中信兄弟の「絶対に諦めない」精神のもと台湾各地地域は異なっても同じ野球を心から愛する気持ちを持っているファンがいることを知り、私も野球を深く愛するようになりました。

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--壯壯さんは日本に来たことはありますか?もし来たことがあれば皆さんに旅の思い出と好きな場所を教えてください。

壯壯:ありますよ!私は日本の文化と美食が大好きで、特に古くて優雅な趣が漂う景色があり、美しい物語に溢れる京都が大好きです。あとは京都の抹茶も私のお気に入りです!

 

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--現在彼氏は募集中ですか?(笑)

壯壯:もちろんいればいいなとは思いますよ(≧∇≦)今の仕事の状況ではチャンスがないですが、でも将来ぽっちゃりした明るくてたくましい男性に出会えたらいいなと思っています。私は特にぽっちゃりした男性が可愛いので好きです!逆に痩せている男性は私の興味をひきません(笑)私はアウトドアが好きなので冒険家のような気持ちをもって一緒にあちこち遊びに出かけることができる人がいいです!ぽっちゃりした男性にプラス暖かくて明るい笑顔があれば100点満点です~

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--Passion Sistersの皆さんはオフシーズンをどのように過ごされていますか?

壯壯:シーズンオフもメンバーそれぞれに暇な時間はありません。自分の本来の仕事が終わった後もダンスの練習やポージングのトレーニング、新しいダンスの準備などがあるので11~2月の時期はPassion Sistersにとっての春季キャンプのようなもので、休むことなく新しいシーズンに向けてのパフォーマンスを準備していますよ。

 

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--そのスタイルを維持する秘訣は何ですか?

壯壯:私は運動が好きなので、運動し終わってから美味しいものを食べるようにしています。そうすれば少しも自分に対して罪悪感を感じることはありませんよ(≧∇≦)

 

--最後に日本の台湾プロ野球ファンの皆様へコメントをお願いします!

壯壯:日本の皆さんこんにちは!私は壯壯です。今回このような形で皆さんと知り合うことができ本当に嬉しいです。もし私のことをもっと知りたいという方はfacebookのファンページまで遊びに来てください!私の日常生活や仕事のこぼれ話などをこちらでシェアしています!

私は日本がとても好きなので、よく日本には旅行しています。将来チャンスがあれば日本でパフォーマンスを行い、日本の野球場にも足を運びたいと思っています!もちろん一番大事なのは日本のファンの皆さんに台湾に来ていただき、台湾野球の熱気を生で体感してもらうことです!お会いできる日を楽しみにしています!

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(壯壯さんのfacebookファンページはこちら↓↓ 是非「いいね!」を)

 

ありがとうございました!今月3日から始まる後期シーズンにも注目です。

2015ドラフトを振り返る 義大ライノス

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指名選手

1巡目 林哲瑄 26外 右右 高知ファイティングドッグス

2巡目 倪福德 32投 左左 米独立カムデン・リバーシャークス

3巡目 黃亦志 22投 右右 國訓

4巡目 于孟雄 22内 右左 國訓

5巡目 羅華韋 24投 左左 國訓

6巡目 林政賢 19投 左左 中國文化大學

7巡目 林威廷 19捕 右左 南英商工

8巡目 羅國麟 22外 右右 國立體育大學

9巡目 彭世杰 18投 右右 中興高中

10巡目 石翔宇 18内 右右 南英商工 

11巡目 陳泓亦 22投 右右 台灣體育大學

 

・寸評

史上最多93名が名を連ねた今年の職棒ドラフト。その中にあって真っ先に名前が消えるのは誰か?大方の予想では倪福德または蔣智賢の2人に絞られていたが、監督に就任したばかりの葉君璋率いる義大上層部が下した選択は蔣智賢と共に今季は高知で汗を流した元メジャーリーガー林哲瑄だった。

林哲瑄を1巡目で指名した意図はいうなれば外野守備、センターラインの強化だった。打撃に関しては今季四国アイランドリーグでも34試合 .230 2本 3打点と振るわないもののWBC台湾代表のCFを任された実績があり、守備範囲と判断能力に関しては依然として素晴らしいものを見せている。

また現在チームが抱える守備の問題にも目を向ける必要がある。今季チームは3Bに既に10人もの選手を起用するなどポジション固定に苦慮し、加えて打撃ではずば抜けた成績を残している外野手も胡金龍は肩の弱さ、高國輝は古傷の脊髄すべり症の再発、そして張建銘は35歳という年齢が懸案事項である。内外野の守備の連係がとれず、見えないエラーも多かったとして興農で12年途中まで監督を務めた劉榮華を内外野守備コーチに招聘するなど守備力の強化を狙っていた葉君璋にとってこの選択は現状を鑑みれば至極当然の選択だったと言えるのかもしれない。蔣智賢を1巡目指名しなかった理由について「彼のポジションは義大の現状の選手のポジションと重なる」とコメントしたことからも攻撃と守備のバランスを重視した指名を行ったといえそうだ。

2巡目では全球団の補強ポイントでもある先発左腕として倪福德を指名。球団は外国人先発3名の後の先発4番手として起用したい考えとのこと。球団は本来宋家豪を1巡目で指名する方針だったとの話もあるが、その中にあっての倪福德指名は前期に見せた台湾人先発投手のパフォーマンスの悪さ、後期へ向けての即戦力を獲得したい意図があってのことだろう。

3巡目で指名の黃亦志はスライダーをアウトピッチにカーブ、チェンジアップを投じる先発右腕も制球とメカニクスに課題がありプロではリリーフにまわりそう。今年10月に兵役を終えるため出場は来季からとなる。

4巡目の于孟雄は捕手と一塁以外のポジションを守った経験があり平均以上の走力とコンタクト能力を兼ね備えるため大学時代は2、9番を打つことが多かった巧打者タイプ。近年は外野手中心での出場が多いが外野手の競争が特に激しい義大では2B、SSとして林瑋恩や林威廷を脅かす存在となれば面白い。

5巡目の羅華韋は最速93マイルのストレートと130kmを超えるチェンジアップが武器も180cm、75kgと体躯が細く、制球に課題を残す。入団後の起用法は明らかではないが黃勝雄、賴鴻誠、羅政龍といった同タイプの左腕がチームでくすぶっている現状を見るとあまり多くは期待できない。

同じく左腕投手の林政賢はストレートはほとんどが130km台もナックルカーブを操る器用さ、ストレートのノビ、そしてストレートとチェンジアップの球種の判別がつきにくい点が評価されており、まだ19歳ながらベテランのような投球を見せる技巧派左腕だ。職棒でプレーするにはもう少しストレートの球速を高めたいところ。

奇しくも義大の内野手と同姓同名となった林威廷は高卒捕手であり、高校時代は3番を打つことが多く加えて俊足。義大の捕手は20台後半に4名が集中しているため、彼らが主力として機能している間に徐々に育ってもらえれば御の字か。

8巡目の羅國麟は全員が職棒でプレーする「羅一家四兄弟」の末っ子で、長男である高國輝とチームメートに。下半身がしっかりとしており球種を問わずフルスイングし強打者の片鱗を見せる一方、課題は守備範囲が広くないディフェンスでCFを守っていた際は両コーナーの選手がカバーに入ることもしばしば。球団は3Bの人材不足を解消しようと彼に三塁を守らせる方針で、職棒での出場機会を得るため大学4年から守り始めた内野がどこまで板につくか注目したい。

9巡目の彭世杰は高卒ながらスプリットをアウトピッチとする右腕で最速140kmを超えるストレートを投じる。今後の伸びしろに期待したい。

10巡目の石翔宇も同じく高卒の内野手。高校時代は主にSSを守りながら稀にリリーフ投手として登板もこなした。打順は主に2番を打ち作戦遂行能力を備え加えて1B、2B、3Bも守れることからプロでも便利屋ポジションとして活路を見いだせるか。

最後の指名となった陳泓亦は10~13年までツインズRkに所属し先発とリリーフを共にこなしながら高い奪三振能力と制球の良さを見せた右腕。しかしながら147km出したこともあると本人が語る速球も大学の春季リーグでは140km前後に留まり、今年に入ってドラフトの為に全球団の練習に参加した結果でのこの指名順位は何か問題があると球団側から判断されてのものだろう。あまり多くの期待はできない。

 

・今後の展望

義大のドラフトは1巡目と2巡目を見ても分かるように即戦力重視のドラフトを展開した。後期シーズン、また来年を見据えれば林哲瑄を獲得したことで胡金龍、高國輝、張建銘とレギュラーを常時張れる外野手が4名となり、余った1人をベンチで休ませる或は以前から可能性を指摘されていた胡金龍1Bコンバートプランも実現しやすくなった。その一方で打力に今一つ乏しい内野手(2B、3B、SS)は2人の指名に留まり、大きな弱点となっている3Bは羅國麟をコンバートさせて凌ぐ算段では解決の糸口が見えたとは言えない。そして投手も先発として倪福德はある程度の計算が見込めるが、彼以外の即戦力である羅華韋は前述したように球団が粗さの残る左腕の育成を苦手としていることからプロでの活躍には不安が残り、黃亦志も今一つ安定感に欠ける中でリリーフとしての頭数に来年から数えるのは心もとない。全体としては外野のデプスがかなり厚くなり(控えには林旺衛、張詠漢、高孝儀ら)不足していた台湾人先発を補った分、1B以外の内野、加えてリリーフ投手の弱点は変わらず放置された形となった。「林哲瑄は毎試合3点分打てるとは限らないが、彼の外野守備はもっと多くの失点を防げる」とは葉君璋監督。前期リーグワーストの363失点をマークした投手力、守備力を改善し後期こそ優勝の二文字を2年ぶりに奪還できるか注目したい。

今年の「打高投低」はどこから導かれたか~データと現場の声から推察する~

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*1

 

 6月に入り、今季の職棒も早くもシーズンの3分の1を消化。前期の優勝争いもラミゴと義大の一騎打ちの様相を呈しており佳境に入っている。

 そのような中でファンから聞こえてくるのは「今年は打高投低のシーズンだ」との声。そしてファンのみならず台湾メディアも度々今年のシーズンを同じように捉え多くの記事を出している。記事の中にはこの現象の原因を推察するものや選手、首脳陣の声を聞いたものも多く含まれているため、当記事ではそれらも踏まえながらどのような要因が現状に繋がっているのかを解明していきたい。

 

1.今季の基本データ(2015年度のスタッツは全て6/1時点)

・打率、出塁率長打率OPS推移(4球団制以降)

年度打率出塁率長打率OPS
2009 0.287 0.352 0.409 0.757
2010 0.262 0.322 0.347 0.669
2011 0.285 0.349 0.390 0.739
2012 0.287 0.355 0.399 0.755
2013 0.282 0.339 0.376 0.714
2014 0.274 0.331 0.367 0.698
2015 0.299 0.363 0.422 0.784

 

 ・HR数推移(4球団制以降)

年度HR数
2009 323
2010 159
2011 238
2012 265
2013 193
2014 209
2015 *372

*2

 

防御率推移(4球団制以降)

年度防御率
2009 4.58
2010 3.27
2011 4.26
2012 4.37
2013 3.85
2014 3.72
2015 4.92

 

 4球団制となった09年以降では今季がこれまでで一番の打高だった09年を超えるペースであることが分かるであろう。ここまでで今季の打高投低ぶりを把握したところで、ここから筆者が立てた仮説を細かく検証していくこととする。

 

2.打高投低の要因

①狭まり、可変するストライクゾーン

 今季は開幕からストライクゾーンの縮小が話題となっており、これによって投手不利、打者有利の環境が出来上がっているという声が多い。以下に選手及び監督の声を見てみよう。

謝長亨前監督(中信兄弟)「今年のストライクゾーンは上下はそれほど変わらないが、ホームプレートの両サイドが去年より狭くなっている。縦方向の変化球中心の投手にとっては影響は大きくないが、横方向の変化球中心の投手にとっては不利だ。一度ボールと判定されれば真ん中のコースに投げるしかない。そうなると打者有利になってしまうだろう。」

    中職/好球帶小了? 林煜清滑球變吃虧 | 棒球 | 運動 | 聯合新聞網

郭泓志(統一)「外角の吊球のようなボールはストライクゾーンが狭くなったので打者が簡単に手を出さなくなった。」

    頻出包 郭董:要適應好球帶 | 蘋果日報

羅嘉仁(義大)「ストライクゾーンが狭いことは問題ではないが、固定されなければならない。そうでなければボールがストライクになったり、ストライクがボールになったりしてどこに投げればいいのか分からなくなってしまう。」

    中華職棒/好球帶變小?投捕都有話要說 | NOWnews 今日新聞

 

 やはり今年のストライクゾーンは狭くなっていると見て間違いないだろう。13年~今年の3年間のK/9、BB/9の推移を見てみるとK/9は5.39→5.90→5.88、BB/9は3.09→2.60→3.37となっており三振の数こそ大きく減少はしていないもののやはり四球が大きく増加しており各投手が変化したストライクゾーンに適応できていない可能性は十分考えられる。

 また海の向こうのMLBでは投高打低を改善するため来季からのストライクゾーン変更(拡大)が議論されているが、

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これと同じくして職棒でも12年を境に進んできた投高打低に拍車をかけるため同様の手段で改善しようとしている、と見ることも可能ではないだろうか。加えて職棒では外角のコースは「外角海」と呼ばれ外にボール1、2個分ほど広くストライクを取るという傾向がありこれが投手を助けていた側面があったが、この「外角海」も今年は少なくなっているように感じる。とはいえテレビを通して見る分にも不安定な判定が多く見ている方がやきもきするのも事実であり、審判団には狭くなってからのゾーンの固定を強く求めたいところだ。ちなみに開幕当初は「ボールが変わったのではないか」という声もあったが中華職棒公式のfacebookページが否定、以降ボールについての議論は沈静化した。*4(使用球は長らく使われているSAKURAI990。ただしCPBLから公式に反発係数の発表はされていない。)

 

②長打を見込める選手の復調

 6/1時点で本塁打ランキング1位(14本)の高國輝(義大)は昨年も18HRを放ち本塁打王のタイトルを獲得した職棒きっての長距離打者であるが、昨年は何と前期は脊髄すべり症の手術からのリハビリのため一試合も出場はなく、一軍初出場は後期に入った7/13、出場僅か52試合であれよあれよとタイトルホルダーにのし上がった。その彼が今年は開幕からコンディション良く出場を続けており彼のHR数だけで職棒全球団のHR数の9.7%を占めるという事実は今季の本塁打数の激増に大きく関与していると見てよいだろう。また昨年のシーズン中ドラフトで加入し後期から試合に出場した陳俊秀(ラミゴ)も長打力を期待されながら昨年は26試合で2本にとどまったが今年は既に7本。出塁率IsoD)と比較して長打率IsoP)の上昇が大きい背景にはこのような事情がある。

 

③中信兄弟が採用した「外国人野手2人制」

 今季の外国人選手の起用法で注目すべきは中信兄弟が採った「外国人野手2人制」である。これは中信兄弟が例年台湾人野手だけで構成された打線は長打力と得点力不足に苦しみ、投手陣と守備に強みを持っていてもそれを生かしきれなかったことによる措置である。投手中心に外国人を獲得するCPBLでは4チーム制になった09年以降初めてのことで、この「賭け」が果たしてどのような結果をもたらすのかファンの注目が集まった。2Bの耐克は42試合 .346 1本 24打点 OPS.851、SSの佩卓(既に解雇)は36試合 .303 7本 21打点 OPS.867と平均以上の成績は両者共に残したが、これにより投手陣が手薄となり、1枠しか占められなかった外国人投手も布萊文斯が9試合 4勝4敗 ERA6.47、寇迪が2試合 1敗 ERA14.54と振るわず、昨年の防御率1位(3.59)だったチームは6/2現在でリーグワーストの5.44と投手力の優位性を失った。また例年続く貧打からの得点力アップが期待された打線もリーグワーストの233得点と外国人野手2人制に期待された結果は出ていない。例年充実した投手力と守備力に強みを持っていた中信兄弟のこうした変化もCPBLが4球団という少ない球団数であることを踏まえれば打高投低に少なからず関与していると言えるだろう。なお中信兄弟は後期からは例年通りの外国人投手2人、野手1人の構成に戻すことがほぼ確定的だ。

 

④投手陣のレベルの低下

 CPBLではKBOと同じく外国人は3名まで登録可能(同時出場は2名まで)となっている。しかしながらKBOと異なり3名のうち投手のみまたは野手のみの登録も可能なため、殆どの球団が台湾人選手が順調に育たない投手に全て枠を用い、結果的に台湾人投手の育成をますます阻害してしまう負のスパイラルに陥っている。先発投手においては外国人投手が1人のみの兄弟を除いては台湾人先発投手の防御率が外国人先発投手よりも悪いのは当然ながら、*5台湾人投手が多くのイニングを投げている救援投手においては特に今季顕著に苦しんでいる様子が見てとれる。

 昨年の救援防御率はそれぞれラミゴが3.67、義大が3.86、中信兄弟が3.73、統一が4.05であり、統一を除いては全て2点以上の悪化と惨憺たる状況といっても過言ではない。先発投手が早くマウンドを降りた後、救援投手が相手打線の火に油を注いでしまっているのも打高投低に拍車をかけていると言えよう。以前は台湾人投手の不足を語る際には主に先発投手に照準が置かれて議論をされてきた印象だが、ここに来て数字を残せる台湾人救援投手まで少なくなっているのが現状である。(特に20代以下で数年間継続した活躍を見せる投手が極めて少ない)各球団6月末に行われるドラフトで当然救援投手の補強を狙うと見られるが、 この惨状がどこまで改善されるか注目である。

 

 5月中旬から中信兄弟の監督代行を務める吳復連は力のある台湾人先発投手が不足している原因についてこのように指摘している。

「新しい世代の台湾人投手はプロ野球の高いレベルに耐えることができない。それは主に高校野球では木製バットを用いていることでレベルの高い投手の育成が難しくなっていることに原因がある。高校の打者は木製バットを上手く使いこなせないために投手は制球さえ良ければ球速が速くなくとも抑えられてしまう。高校の投手が今の球威だけで木製バットでプレーする野手を抑えられてると分かればそれ以上レベルを高めようとは思わず、現状で満足してしまう。打者が金属バットを用いるようになれば投手は球速とボールの質を高める努力をするようになり、レベルアップするだろう。そうしてこそプロ野球に良い台湾人投手が入ってくるようになる。」

中職本土王牌投手斷層 吳復連建議青棒改打鋁棒 | ETtoday體育新聞 | ETtoday 新聞雲

 吳復連はここでは主に台湾人先発投手についての指摘をしているものの、これは先発、救援の域を問わず全ての台湾人投手に通じるものであるとも感じる。台湾では04年に「早いうちに木製バットに慣れるため」という理由から高校野球の試合では全て木製バットを使用しているが長打が少なくミート中心の打撃、バントを重視した戦術になりがちで、投手は前述の理由からレベルが向上せず、また守備においても強い打球が少ないためレベルが向上しないのではという声もある。*6

 

  ここまで4点、考えられる今年の打高投低の要因について見てきたが大まかに各項目について見てきたため詳細な分析ができているとは言い難い。特に④の投手陣のレベルの低下についてはまた新しい記事を通して細かく見ていきたいと思う。