台湾プロ野球データベース コラム集

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2018CPBLドラフト指名選手リスト 富邦+統一

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富邦(指名10名)

①戴培峰(ダイ・ペイフォン) 平鎮高中 182cm 75kg 18歳 右左 捕手

契約金560万元 月給9万元(二軍5万元) 出来高100万元 背番号95

全体ドラ1史上最年少のディフェンシブな捕手。中学時代から名を馳せ、強豪平鎮高中に入学後も即レギュラーとして活躍。キャッチング、ブロッキング共に基本に忠実で盗塁阻止能力も高い。肩がとりわけ強いわけではないが、キャッチングの速さと正確さに長けポップタイムは既にCPBLの平均以上。強豪高のレギュラー捕手を三年間務めたこともありリーダーシップも兼ね備える。一方の打撃は守備ほど突出はしていないものの、スイングはシンプルながらパワーを秘め失投を逃さず、ゾーン理解にも長けている。課題はスイングのスピードと安定性で、プロのストレートに対応できるかは疑問。統一ドラ1の古林睿煬とは小学校から10年間バッテリーを組んでいた。

 

②王正棠(ワン・ジェンタン) 台中台壽 177cm 81kg 23歳 右左 内野手

契約金440万元 月給9万元 出来高60万元 背番号53

上位打線での活躍に期待したい内野手。高校時代はSS兼最速148kmをマークするリリーフとして活躍し爆発力ある打撃と選球眼で高校トップクラスの打者に成長。大学時代も数々の国際大会に選出され、卒業後ドラフト参加を表明後は社会人の台中台壽でインターン生として入団、元CPBLの選手が多く所属するチームで経験を積んだ。打撃は選球眼の良さが持ち味でスイングの速さ、軌道の調整能力も良好。内角の高めが得意なコースで、走力もCPBLの平均以上あり内野安打も少なくない。ポジションは2B/3B/SSを平均レベルにこなし、OFは打球判断は平凡ながらスピードでそれを補っている。昨年の台北ユニバーシアードでは大会第2位の打率.482をマークも、初戦のフランス戦で不慣れなCFを守ったことが災いしサヨナラ失策となるフライ落球を犯し世間の批判を浴びた。外角へのボールに対し重心が大きく動いてしまうこと、ゴロの処理時のステップがスムーズでない点は要改善。

 

③陳品學(チェン・ピンシュエ) インディアンスA- 188cm 95kg 24歳 右右 投手

契約金なし 月給12万元(今季~19年末)15万元(20年) 出来高15万元 背番号59

吳念庭(埼玉西武)のいとこにあたる右腕。穀保家商在籍時の高校時代から国内外のスカウトの注目を受け高2時には国内の大会で賞を次々に獲得。しかし高3からは酷使による故障に悩まされ国際大会代表に選出されず。高校卒業直前にインディアンスと契約もわずか6万ドルの契約金と評価は下がっていた。マイナーでは4年間でRkとA-を行き来しフルシーズンリーグに昇格できず通算K/9 9.2の一方BB/9は5.3と制球難に苦しんだ。今年3月にインディアンスをリリースされ、その後5月から富邦に合流し練習に参加していた。140km台中盤のストレートに落差の大きいカーブとスライダーが持ち球だが、やはり制球難がネックで加えてシーズン最多で32.1IPしか投げられていない健康面も不安要素。メジャー、マイナー組が名を連ねる富邦のリリーフ陣に厚みを加えられる存在になれるかは未知数。15年のアジアカップ、16年のU23ワールドカップ代表。

 

④胡冠(フー・グァンユ) 台東體中 175cm 72kg 18歳 右右 内野手

契約金290万元 月給7万元 出来高50万元 背番号43

余德龍(ラミゴ)と比較される守備に注目の高卒SS。ブヌン族で現在までのキャリアを台東で過ごし、今年の玉山盃で打率.417と活躍したことでオリオールズからのオファーを受けた。3B/2B/OFもこなすが魅力はやはり優れた運動能力を生かしたSSで広い守備範囲と打球反応を見せ、体が柔軟でバランス感覚にも優れていることからダイビングキャッチ後の送球も安定、投手として140kmをマークする強肩でバックホームの精度も高い。打撃は良いスイングスピード、そして長打力を秘めているが外角のボールに対して重心がぶれることが無くなればより力強いミートで打球を飛ばせるようになるだろう。守備ではセンスに頼り過ぎたプレーが目立ち簡単な打球をエラーしがちなことから、基本動作をもう一度見直したい。SSが固定できないチーム状況での指名、二軍での育成を経て久々のレギュラー誕生となるか注目。

 

⑤王尉永(ワン・ウェイヨン) 中國文化大學 181cm 72kg 23歳 右右 投手

契約金230万元 月給7.5万元 出来高50万元 背番号

文化大のKマシーン。大学時代の国際大会経験は16年のウインターリーグくらいしか無いものの、国内大会では15~16年の梅花旗でメンバーに入りチームの二連覇に貢献。ストレートはやや沈む軌道を辿り最速147km、先発時には140~145kmを安定してマーク。主な変化球はスライダー、カーブ、フォークで空振りの山を築く。上半身に頼り気味のフォームゆえか制球は今一つで、大学時代は怪我が多く17年はほとんどをリハビリに費やした。プロでも先発として起用されると思われるが、起用法には気を付けたい。

 

⑥楊彬(ヤン・ビン) 高雄大學 180cm 90kg 22歳 右右 投手

契約金140万元 月給7.5万元 出来高10万元 背番号74

雄大學初のプロ野球選手。それまで目立った選手ではなかったが、CPBLのドラフト参加のためのトライアウトを受験し4三振を奪ったことがアピールに繋がった。メカニクスはスムーズでストレートは140km前後で打者の手元で動き、制球力も有している。変化球はカーブとチェンジアップ。まだ知名度がある高卒、大卒投手が残っていた中での指名、長きにわたり注目してきたというスカウトの目利きが問われる選手となるだろう。

 

⑦王詩聰(ワン・シツォン) 國立體大 187cm 80kg 23歳 右左 外野手

契約金110万元 月給7.5万元 出来高20万元 背番号

大学で開花した左の大砲。元々は投手も高校時代に代表経験はなく、大1時に野手転向。しかし経験不足で結果が出ず大3時に参加したアラスカ・サマーリーグでも打率が2割に満たずK%が25%超えという有様であったが、帰国後才能が開花し16年のウインターリーグでは15試合打率.333 2HR 6打点 OPS.915、昨年のポップコーンリーグでも2位タイとなる3HR、今年の春季リーグではトップの18打点。持ち味は許基宏(中信兄弟)を彷彿とさせる豪快なフルスイングから放つ長打。大柄な体格ながら一塁までの到達タイムは3.8秒と平均以上の走力を誇る。守備は1Bも守ることが可能だが、フライの判断能力に難があるためOFはLFのみ可能。ドラフト参加前にはオリオールズからオファーを受けていたが、金額が少なかったことと通訳が含まれていなかったことを理由にCPBLドラフト参加を決めた。

 

⑧歐書誠(オウ・シュチェン) 台北市 180cm 65kg 25歳 右右 投手

契約金85万元 月給7.5万元 出来高35万元 背番号53

努力家の大学院卒右腕。平鎮高中(金属バットの部)を経て大学入学後は主に先発を務めストレートは140km前後、変化球はスライダーとチェンジアップで16年の春季リーグでは防御率2位の0.76をマーク。大学卒業後は桃園航空城、台北市と2つの社会人チームでプレーし今年の春季リーグでは抑えに。富邦ではリリーフとしての活躍が期待される。2016年には高國慶(統一)の個人トレーナーを務め、大学院在学中に今ドラフトで指名を受け長榮大學出身者としては莊駿凱(統一)に次ぐ2人目のプロ野球選手となった。

 

⑨蕭憶銘(シャオ・イミン) 高苑工商 175cm 80kg 19歳 右右 捕手

契約金50万元 月給7万元 出来高30万元 背番号61

アップサイドに期待の高卒捕手。一つ上の先輩に廖健富(ラミゴ)がいたため、高3でようやくレギュラー捕手となった。キャッチングとブロッキングは安定しており、ポップタイムもCPBLの平均以上。速いスイングスピードから放たれる打撃はほとんどが引っ張った打球で爆発力があり、強豪の平鎮高中、穀保家商相手にもホームランを記録。やや遠回り気味のスイング軌道のためプロでの適応には時間がかかる可能性があり、また送球の安定性向上も課題。同じ高卒捕手としてドラ1戴培峰の存在は大きく映るが、焦らずまずは二軍でレベルアップを図りたい。林子偉(レッドソックス)の甥にあたる。

 

⑩曾慈恩(ツェン・ツーエン) 北科附工 175cm 80kg 19歳 右左 捕手

月給7万元 出来高30万元 背番号

起用法に注目したい高卒捕手。OFとしても出場しており、高3からは中軸として活躍し今年の高校野球リーグでは打率2位。体格とパワーは立派ながらバットコントロールはまだ未熟な点があり時間をかけた育成が必要な選手で、また9巡目に続いての高卒捕手指名という点からも球団はOFとして育成する可能性もあるのではないだろうか。

 

統一(指名7名)

古林睿煬グーリン・ルイヤン) 平鎮高中 184cm 81kg 18歳 右右 投手

契約金550万元 月給5万元 出来高150万元 背番号19

未来のエースになるポテンシャルを秘めた今年の高卒ナンバーワン投手。高2時から2018年ドラフトの目玉と評価は高かったが、本人は以前高校卒業後の海外進出または国立体育大学への進学を考えていた。昨年の高校野球リーグでは27IP 4勝 31K ERA0.33の好投、黑豹旗ではベストナインに選ばれるなどそれぞれ優勝に貢献。ゆったりとした投球フォームから先発では140~145kmのストレートを投げ込み今年最高147kmをマーク。変化球も120km前後のカーブ、125km前後のフォーク、130km前後のスライダーとチェンジアップと多彩でそれぞれの制球も良くカウント球としても勝負球としても使えるのが強み。また精神面も強く走者を出した場面でも冷静で牽制も素早い。心配されるのは高3時に故障により数カ月の離脱を経験したことであり、健康面がプロ入りにあたってはネックになる可能性もある。

 

②張偉聖(ジャン・ウェイシェン) 興大附農 168cm 65kg 21歳 右左 内野手

契約金400万元 月給6.5万元 出来高50万元 背番号52

長男に張進德(パイレーツ)、次男に張進龍(富邦)、三男に張育成(インディアンス)がいる張兄弟一家の五男。高1時に台中高農を退学しその後興大附農に入学したためその間約2年近く野球から離れていた。体は小柄で長打力は乏しいながらも身体能力に優れ、突出した走力と優れたバットコントロールが特長。様々なコースにも芯で捉えることができる打撃を身に着けており、強い打球を生み出すことが可能となっている。CF守備は範囲が広く、16年後半から張育成のアドバイスを受けSSにも取り組んでいたが、統一ではSSに陳傑憲がいることからCFとして育成されるであろう。課題は外角のコースを突いたボールにパワーのある打球を放つことができないこと、また利き手の左手を故障し右投げとなったため肩は強くない。

 

③劉軒荅(リゥ・シュエンダ) 國立體大 180cm 88kg 22歳 右右 投手

契約金330万元 月給7万元 出来高50万元 背番号23

3年ぶりのドラフトで順位を大きく上げた右腕。高校時代に最速146kmをマーク、15年のドラフトでは高卒投手ナンバーワンと評する声もあったが14年に肘の炎症を起こし登板数が減少した影響で評価を下げ、中信兄弟に11巡目で指名。その後契約金の額を理由にプロ入りせず大学進学、大学では体を作り直し先発では138~142kmのストレート、カーブをカウント球として用い、スライダーは右打者への勝負球、チェンジアップは左打者に効果的でここ最近はフォークも投げ始めている。四球が少なく、先発として完成度は高いがアップサイドは小さいと見られ、ストレートが以前の水準まで戻らないとすれば制球力、投球術をより高める必要がある。チームでは後期の即戦力として期待を受けている。

 

④李丞齡(リ・チェンリン) 興大附農 175cm 70kg 18歳 右右 捕手

契約金280万元 月給5万元 出来高80万元 背番号9

強肩+パワーが売りの高卒捕手。元々はOF兼投手だったが高2からCも守り始め、16年の黑豹旗ではOF、17年の黑豹旗ではCとしてベストナインに選出された。打撃ではアッパー気味のフルスイングで高校通算5HR。Cとして送球は最速144kmをマークする強肩を有するためCPBLでもトップレベルの速さを誇り、軽々と走者を刺すケースも多い。ただ攻守とも粗さは否めず、アッパー過ぎるスイング故ミートポイントが不安定で弱々しいゴロやフライが多く、無駄なスイングの動きはプロのストレートに対応する上では課題となるだろう。守備では経験が浅いこともあり、キャッチング、ブロッキング、リード等の細かなテクニックは発展途上。体格は小柄だがアップサイドは大きいため、本人の努力具合が成長を決めることとなるだろう。

 

⑤方建德(ファン・ジェンデ) 嘉義大學 190cm 110kg 23歳 右右 投手

契約金200万元 月給6万元 出来高50万元 背番号69

先発としての起用が見込まれる大型右腕。今年の大学野球リーグでは8強リーグ戦で好投するなど安定した活躍を見せ、ドラフトにはトライアウトを経ての参加。左足を高く上げるフォームから平均142~143kmの手元で沈むストレートは王建民に近い重い球質だが本人の憧れの選手はマリアノ・リベラとのこと。

 

⑥林靖凱(リン・ジンカイ) 平鎮高中 174cm 66kg 18歳 右右 内野手

契約金160万元 月給5万元 出来高50万元 背番号64

守備に長けた高卒2B。中学まではSSであったが高校では中信兄弟から3位指名の江坤宇に押し出される形で2Bに移り、最速146kmの投手としても活躍。16、17年の黑豹旗では2年連続で2Bでベストナインに選出された。打撃ではバットコントロールに優れ、確実なミート能力で強いライナー性の打球を多く放ち、高3からは長打も増加。2B守備は強肩、足捌きが機敏で送球、捕球共に安定。ただ高めのボールに手を出す癖が欠点で小柄な体格故アップサイドも小さいと見られる。今年のU18アジア選手権代表。

 

⑦姚雨翔(ヤオ・ユーシャン) 興大附農 185cm 90kg 18歳 右左 内野手

契約金100万元 月給5万元 出来高50万元 背番号67

未来の左の長距離砲候補。15年のLLBジュニアリーグでは台湾代表入り、今年の玉山盃では打率.517 9打点の二冠と活躍もU18アジア選手権代表には選出されず。プロフィール以上の体重を感じさせる立派な体躯から放たれる長打力を有し、流し打ちでも重心を残し対応できる上手さを見せる。ポジションが1Bメインであること、走力が平均以下であることを考慮すればまずは二軍でじっくり体作りをし、練習では守っているという3Bも一定レベルに引き上げたいところ。

 

 

参考:

https://www.sportsv.net/articles/53268

https://www.sportsv.net/articles/53223

https://www.sportsv.net/articles/53144

https://www.sportsv.net/articles/53043

https://www.sportsv.net/articles/53102

https://www.sportsv.net/articles/53201

https://www.sportsv.net/articles/53205