台湾プロ野球データベース コラム集

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2019CPBLドラフト指名選手リスト 中信兄弟+富邦

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中信兄弟(指名8名)

①岳政華(ユエ・ジェンホァ) 穀保家商 176cm 85kg 18歳 左左 OF/P

〇制球 守備範囲 △投球フォーム 野手としての経験不足

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18ワールドカップ

穀保が誇る二刀流。兄は17年中信兄弟ドラフト1位の岳東華。高2から先発として起用されるようになり最速145km、平均140kmを出せるまでに成長。制球力に長け、打者に手を出させるカーブ、チェンジアップが主な持ち球。速い腕の振りから放たれるストレートも質は高いが、腕の振りが長い故負担のかかるフォームなのがネック。高3に肘の故障から投球ができず、メインとなった野手としては走力は平凡ながら高い打球判断能力を持ち、広い守備範囲で外野3ポジションをそつなくこなす。打撃はフラットなスイングからライナー性の強い打球を放ち、スイングスピードも速いが、試合経験の少なさ故高校で大きく伸びることはなく、内角の速いストレートへの対応にやや弱さを見せる。野手としてはCF向きだが、プロでは投手か野手どちらかに絞るほうが将来の伸びしろは大きくなると見られる。スカウトの中では野手の評価の方が高い。GMは二刀流の可能性も残しているとコメントしているが、現時点では野手として起用される見通し。

 

②魏碩成(ウェイ・シュオチェン) 遠東科技大学 182cm 78kg 22歳 左左 P

〇チェンジアップ マウンド捌き △投球フォーム

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

「第二の呂彦青」候補の左腕。高校時代は最速130kmほどしか出ず、完成度の高い投手ではなかったが、大学は教育、設備、指導環境を考慮し、国立大学からの誘いを断り遠東科技大学に進学。入学後は先発としてプレーも目立った成績を残せていなかったが、18年7月の世界大学野球選手権で初めて台湾代表入り。選出当時は「奇兵」とも評されたが、予選のチェコ戦で7.0IP/10K/0Rと上々の投球を見せ予選突破に貢献すると、18年10月のU23ワールドカップでは日本戦に先発し7.0IP/3Rの好投。先発し3.0IP/4Rだった世界大学野球選手権決勝の日本戦の雪辱を果たし、試合には敗れたが一躍名を上げた。闘志溢れるマウンド捌きとチェンジアップが武器で、ストレートは平均138~140km、最速145km。左腕独特の角度で内角のストレートは打者が詰まらされやすい。他にカウント球として用いるカーブ、スライダー、フォークも投じる。腕が遠回りに出てくるフォーム故制球力と、上半身に頼り気味で下半身が使えていないフォームが気になるところ。昨年にもCPBL球団からドラフト参加を勧められたが、最終学年の今年に参加を決断した。チェンジアップとカーブを磨けば、イニングイーターとして活躍できるポテンシャルがある。

 

③曾頌恩(ツェン・ソンエン) 台東大学 178cm 92kg 19歳 右右 OF

〇パワー △完成度

主要国際大会経歴(高校以降) なし

意外な上位指名を勝ち取った外野手。中学は大理国中でプレー、高校は平鎮高中に進学するも木製、金属バット両方のチームで試合に出られるチャンスがなく、3年に父親の友人の紹介で玉里高中に転校。その後は中心打者として活躍した。パワーツールが長けており、走力も平均以上だが、打撃は欠点も多く守備は平均的で、コーナーOFに落ち着くと見られる。

 

④張聖豪(ジャン・シェンハオ) 東大体中 175cm 70kg 18歳 右左 C

〇強肩 守備力 アプローチ △打撃の再現性

主要国際大会経歴(高校以降) なし

今年の高卒捕手でナンバーワンの守備力を誇る選手。小学校から現在までポジションは捕手メイン。守備はブロッキング、ベース周りの打球処理が良好で、高いリーダーシップも備える。そして一番の売りは今年の高校生でナンバーワンとも言われる強肩で、ポップタイムはCPBLの捕手の平均を上回るほど。打撃はアプローチが傑出しておりボール球に簡単に手を出さず、スイングはスピードとパワーを兼備しライナー性の長打も飛び出す。速球にも力負けしないローボールヒッターだが、スイングが不安定でボールの上を叩いてのゴロアウトが多い。走力は平均以下。

 

⑤黃弘毅(ホァン・ホンイ) 東大体中 183cm 78kg 18歳 右右 P

〇ストレートの向上 △スタミナ 球種不足

主要国際大会経歴(高校以降) なし

細身の東部出身右腕。台東出身で、ここまでのキャリアを全て台東で過ごしてきた。国際大会代表には縁が無かったが、今年6月のU18ワールドカップ代表候補36人に選出された。痩せ型の体格から左足を高く上げるフォームが特徴で、デリバリーもスムーズ。球速は高3の夏休みまで最速138kmも、昨年12月に142km、今年の高校卒業前には146kmをマークするなど球速の向上が著しい。高いリリースポイントから平均138km前後も威力あるストレートに、120km前後の縦に大きく落ちるカーブを組み合わせる。制球はアバウトながらストライク率は高い。課題はスタミナで4、5回で球速が落ち始めること、カーブ以外に実戦で使える球種が無いこと。体格、投球の成熟度はまだまだだが、プロの環境で先発として育成されれば化けるポテンシャルは持っている。

 

⑥劉劭威(リォウ・シャオウェイ) 新北市 191cm 107kg 23歳 右右 P

〇球威 フォーク △制球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

球威が自慢の大型リリーフ右腕。高校時代は投手としてプレーも怪我に苦しんだ。卒業後はMLB球団から10~12万ドルの契約金を提示されたという。しかし中国文化大学入学後は膝の故障により球速が落ち、大3で野手転向。卒業後新北市入りしてから高校時代のコーチのアドバイスを契機に投手に再転向した。直近のポップコーンリーグでは9.0IP/13K/0Rの好成績でリーグ最多の7セーブをマーク。大柄な体格から最速151km、安定して140km後半をマークするストレート+145km近く出るフォークが武器。チェンジアップも投じるが、制球はまだ荒削り。チームには新北市から同じくプロ入りした吳俊偉がいるが、ストレートで押すタイプとしては似ている。

 

⑦林瑞鈞(リン・ルイジュン) 西苑中学 173cm 65kg 18歳 右左 SS/2B/3B

〇三振の少なさ アップサイド △守備の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

攻守のバランスに長けた高卒内野手。小学校までは右打ちで、中学から左打ちに転向したが適応できず1、2年時はスランプに。高校では主にSSを任され、高2からはクリーンナップに入る機会が増えた。打撃は三振が少なく、ミート力に長けている。走力は平均以上で、SSとしても高い敏捷度と一歩目の速さがある。肩は平凡も平均以上の守備範囲を誇り、体勢が不安定な中でもすぐに一塁へ送球するなどセンスの高さを見せる。打撃ではスイングの不安定さ、守備では安定感の向上と平凡なミスを減らしたい。高3になってから打力は向上しており、アップサイドにも期待が持てる。ドラ1の岳政華とは同じ中学出身(三星国中)で、再びチームメートとなった。

 

⑧邱志恆(チョウ・ジヘン) 穀保家商 175cm 85kg 18歳 右右 OF

〇パワー △走力

主要国際大会経歴(高校以降) 17年:U18ワールドカップ

小さな未来の大砲候補。中学から長打力は知られるところであり、穀保に入学後は1年から4番を任され活躍。2年時にU18ワールドカップ代表入りするも、大会中に父親が亡くなる不運などもありスランプに。その後は出番が減少、昨年3月の高校野球リーグ決勝では勝負を決定づける代打HRを放つ活躍も、3年後半は代打としてベンチを温める機会が増えた。打撃は速いスイングスピードと爆発力が魅力で「振り切る」スイングは見ていて気持ちが良い。走力は平均以下、守備も傑出したものはなくコーナーCFに落ち着くと見られる。

 

 

富邦(指名10名)

①江國豪(ジャン・グォハオ) 国立台湾体育運動大学 180cm 80kg 21歳 右右 P

〇制球力 スタミナ △変化球の制球

主要国際大会経歴(高校以降) 17年:台北ユニバーシアード アジア選手権 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

今ドラフトの投手でトップクラスの完成度を誇る即戦力右腕。麥寮高中からは初のプロ野球選手となった。中高時代は無名に近い存在だったが、実力は評価されていた。高1で125kmだった球速は高3に140km超え。大学では1年から主力投手として活躍、1~2年はリリーフメインで3年から先発メインに。スムーズなデリバリーから速い腕の振りで先発としては140km前半を安定してマークし、最速は147km。ツーシーム、130km前後の鋭いスライダー、130km前後のチェンジアップ、120km前後のカーブと球種は豊富。アマトップクラスの制球力でコーナーを突き、内角へのボールで打者を詰まらせるシーンも多い。先発でも十分なスタミナを誇るが、変化球の制球、特にチェンジアップに甘さがある点は改善したい。当初は海外でのプレーを希望していたが、今年は球団増もあってかCPBLでのプレーを決めた。三振を多く奪えるタイプではないので、制球力をどこまでプロで維持できるかが鍵となるだろう。

 

②朱益生(ジュ・イーシェン) 台北市立大学 183cm 83kg 19歳 左左 P

〇制球力 変化球 △球威

主要国際大会経歴(高校以降) 17年:U18ワールドカップ

細身の技巧派左腕。平鎮高中では左腕エースとして活躍、16年のMAZDA台日高中棒球菁英對抗賽の決勝では履正社高校が主体の大阪府選抜を相手に完封勝利。しかし高3で投球過多に伴う疲労から絶不調に陥り、卒業後はCPBLドラフトに参加せず、台北市立大学に進学。体格は痩せ型で力感のある投球フォームではないが、ベース附近で微妙に動くストレートの最速は144km。ただ先発としては平均135km程度、リリーフ時に140km前後と球速に頼ることなくコーナーに投げ分ける制球力で打者を料理する。変化球に関してはベストピッチであるチェンジアップと、スライダーとカーブは共に打者のミートポイントを外す効果がある。今の球威だとプロで即通用するかは難しいが、優秀なリリーバーになれる素質を持っている。

 

③林聖榮(リン・シェンロン) 台北市立大学 178cm 65kg 18歳 右右 P

〇ストレート 球種の豊富さ △投球過多 制球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

大理高中の二刀流。吳蔚驊、蔡齊哲(共に中信兄弟)はいとこにあたり、富邦10巡目の李建勳と同じく大理高中からのプロ入りは今年打棒を爆発させている朱育賢(ラミゴ)以来。中学で142kmをマークし、高1からチームの主力投手に。2年までは球速が上がらなかったが、3年になり体格が立派になり、それに伴い球速が上昇し現在の最速は147km。ストレートは先発時は平均138km前後、リリーフでは145km前後までギアを上げる。また伸び上がる軌道で、ツーシーム系のボールになることもある。変化球は115km前後のカーブ、左打者に多く用いるチェンジアップ、空振り率が高いスライダー、フォークと豊富で三振を多く奪える。懸念点は高校三年間で投球過多が指摘され、また制球は平凡でカウントが深くなることが多く無駄な球数を費やすことが多い点。球種の豊富さから先発、高校時代はピンチでの登板もあり心理面も鍛えられたことからリリーフとプロ入り後は両方の可能性が考えられる。酷使は避け、まずは二軍でじっくり将来の方向性を見極めたいところ。

 

④姚冠瑋(ヤオ・グアンウェイ) 中国文化大学 170cm 78kg 23歳 右右 C

〇パワー △実戦不足 高めへの対応

主要国際大会経歴(高校以降) 13年:U18ワールドカップ 14年:U18アジア選手権 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

昨年のU23ワールドカップでは4番も務めた強打の捕手。高校卒業後、社会人の新北市で1年間プレーした後に中国文化大学に入学。打撃はスイングがシンプルながらパワーがあり、高い選球眼も兼備している。低めのボールに容易に手を出さず、内外角のボールを広角にライナーで打ち返せる。一方でベルトより高めのボールによく手を出し、フルスイングをするため空振りが多いのは要改善。守備に関してはキャプテンシーがあり、送球は正確でポップタイムは平均レベル。良く言えば安定感があり、悪く言えば傑出したものがないとも言える。大学前半は張閔勛(ラミゴ)、吳明鴻(中信兄弟)が先輩にいたため出場機会が限られ、大3時には腕を手術したためほぼ一年試合に出場できず、大学での実戦経験を積めなかったのは懸念点。守備より打撃に強みを持つ捕手であり、チームには昨年全体ドラ1で戴培峰を獲得したもののまだ二軍で目立った活躍ができていないため、競争を煽る意味もありそうだ。

 

⑤林奕豪(リン・イーハオ) 穀保家商 180cm 68kg 18歳 右左 OF

〇パワー 肩 △コンタクト

主要国際大会経歴(高校以降) なし

憧れは王柏融(ラミゴ)、左のパワーヒッター。高校2年途中までは金属バットの部でプレー。朱育賢(ラミゴ)のような肩乗せ打法から繰り出すスイングには速さと爆発力があり、アッパースイングで豪快に引っ張り強い打球を生み出す。反面空振り率も高く、逆方向への打球のパワーとスピードは不足している。打球判断能力は平均レベルも走力があり、CFを中心に外野3ポジションを守れるが、プロではコーナーOFに回る可能性が高い。140kmほどを投手としては投げられる肩の強さもあるが、制球力がないことから投手の登板は少なかった。現時点では完成度は高くなく、経験も不足しているが、長打力は傑出しておりパワーヒッターとして花開く可能性を秘めている。

 

⑥戴云真(ダイ・ユンジェン) 中国文化大学 183cm 80kg 22歳 右右 OF

〇パワー 俊足 △変化球への対応 安定感

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U23ワールドカップ

長打と走力が魅力の大卒外野手。高校ではユーティリティーとして投手、Cとしてもプレー。大学ではOFに専念、昨年のU23ワールドカップで初の国際大会代表に選出された。スイングの軌道は不安定だが、スイングスピードは速く爆発力があり、ストレートに強い。一方で変化球に対しては脆さを見せるため成績には起伏がある。高い運動能力を持ち、強肩とトップクラスの俊足で大学後半はCFを守ることが多かった。惜しむらくは体の柔軟性とバランスに欠けるため怪我のリスクが高い点。大卒の選手としては身についていない技術も少なからずあるが、パワーとスピードという長所ははっきりしており、そこに魅力を見出せれば数年をかけて育てる価値はあるだろう。

 

⑦葉國情(イェ・グォチン) 花蓮体中 180cm 78kg 18歳 右右 P

〇アップサイド △球種不足

主要国際大会経歴(高校以降) なし

先発としてのアップサイドに期待したい高卒右腕。高校入学後はリリーフメインも、昨年劉義傳(元三商、兄弟)が監督就任後に先発に転向。制球が課題だったが、監督やコーチの指導により改善されフォームも安定した。ストレートの球速はリリーフで145kmをマークするなど高校でアップさせたが、ここ最近は制球重視になったため平均は140km前後に落ち着いている。変化球は120km前後のスライダーとカーブがあるが、先発としては球種不足で、カーブもフォームが違うため見破られやすい。アップサイドは大きいと見られ、高校の先輩である陳文杰、王奕凱(共に中信兄弟)のようにプロでどこまで伸びるか期待したい。

 

⑧楊程皓(ヤン・チェンハオ) 中国文化大学 186cm 93kg 22歳 右右 P

〇ストレート 体格  △制球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

大学の先輩、黃子鵬(ラミゴ)に続きたいサイドスロー。ドラフトトライアウトから参加し、打者6人に対し4つの三振を奪いアピールした。高校時代に怪我がきっかけでサイドスローに転向。打者の目を惑わすため時折スリークウォーターでも投げる。肩関節が柔らかく、力み無く140km以上のストレート(最速148km)を投げられる。ストレートは沈む軌道のためゴロアウトを多く生み出す。変化球はカーブ、スライダー、バルカンチェンジ。リリースポイントが安定せず、制球は不安定。大学では登板機会が少なく酷使されておらず、体格にも恵まれストレートにも威力があるため、細かな技術を身に付ければリリーフとしてプロでも生き残れるであろう。

 

⑨辛元旭(シン・ユエンシュ) 台北市立大学 178cm 76kg 20歳 右右 3B/1B

〇スイングスピード △ポジション 長打力の向上

主要国際大会経歴(高校以降) なし

打力が魅力の3B。高校では1Bがメインで、強豪・平鎮高中では出番が限られたが、大学では3B/1Bを守るようになり、安定感ある打撃を見せる中軸打者(2年からは4番メイン)として活躍。スイングスピードが傑出しており、バットコントロールも良好。外角のボールを流し打つ技術に長けており、ライナー性の打球が多く二塁打が多い。ただし外角の誘い球にも手を出す癖があるのが欠点。大学進学後は打球の飛距離こそ伸びるも、本塁打を放つ能力に進歩が見られなかった。運動能力は平均以下で守備は3B/1Bに限られる。3B守備は安定しているため、打撃でアピールできれば一軍に生き残れるチャンスはある。

 

⑩李建勳(リ・ジェンシュン) 高苑科技大学 192cm 95kg 22歳 右右 P

〇スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

今ドラフト参加者最長身。ドラフトトライアウトを通じての指名で、トライアウトでは145kmをマーク。映像は少ないが、2年前の大学野球リーグで先発時は130km前半がほとんどだったため、球速が向上した可能性がある。持ち球はフォークとカーブでスタミナが豊富との評価。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://www.youtube.com/channel/UCJ8cnUlVCybEsYRoRNwXNbA

Twinkle一瞬之光

https://www.sportsv.net/authors/salada