台湾プロ野球データベース コラム集

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2019CPBLドラフト指名選手リスト 統一+ラミゴ

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統一(指名6名)

①林安可(リン・アンケ) 中国文化大学 184cm 90kg 22歳 左左 OF/P/1B

〇ストレート 二刀流の可能性 △制球 投球の幅

主要国際大会経歴(高校以降) 14年:U18アジア選手権 15年:U18ワールドカップ 16年:U23ワールドカップ 17年:アジア選手権台北ユニバーシアード 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

CPBL初の二刀流の可能性を秘めた選手。アルゼンチン人の母を持つハーフで、高い運動能力を持つ。中2時に投球過多による左肩骨折で約1年を棒に振るも、強豪・南英商工に進学後、エース兼クリーンナップとして高2から頭角を現し、14年のU18アジア選手権、15年のU18ワールドカップ代表に選出。大学入学後は投手メインでのプレーとなり球速が147kmまでアップ。スムーズな投球フォームから質の良いストレートに、スライダーとチェンジアップ、カーブを組み合わせ三振を奪う。ただ制球が不安定な場面が少なからずあり、球数が増え気味な点は要改善。一方野手の練習は大学時代ほとんどしていないと本人は語るが、持ち前のセンスで好打を連発、OF守備もそつなくこなす。18年のU23ワールドカップでは投手としての登板はなく、OF/1Bとして打率.545(11-6)の好成績だった。ここ数年はアメリカ、日本でのプレーを目標にしていると口にし、昨年11月には東北楽天の入団テストに参加するも不合格。現状アマ時代の実績はあるものの、エースポテンシャルとまではいかない。あるスカウトによるとここ2年の登板数が多く、投手としての成長が思ったほど見られなかったことから、野手としての評価が上回っているとの声もある。統一はまずOFとして起用する予定。

 

②羅暐捷(ルォ・ウェイジェ) 高苑工商 175cm 70kg 18歳 右左 C

〇打てる左打の捕手 △守備

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

高校の2年先輩の廖健富(ラミゴ)のような、打力に長けた高卒捕手。中学時代から打撃が光っていた選手であり、捕手としての出場機会を増やしたのは高2の後半から。捕手の他にOF、1Bもこなし、昨年のU18アジア選手権ではOFとして代表入り。打撃はスイングスピードが速く、ライナー性の打球が多い。高校3年間で打球の飛距離も伸びるようになり、将来は捕手でありながら中距離、長距離砲になれるポテンシャルを持っている。ただしスイングが遠回りする癖があり、外角のボールに姿勢を崩されることが多く、変化球へのアプローチを向上させたい。走力は平均レベルで、守備は捕手としてはキャッチング、ブロッキングは平均レベル。また肩はあるものの送球が不安定で、ベース周りの処理も苦手としている。守備はまだプロレベルには達していないが、チーム唯一の左打ちの捕手として、打撃のポテンシャルでアピールしていくことになるだろう。

 

③吳承諭(ウー・チェンユ) 開南大学 181cm 85kg 22歳 右左 P

〇球威 リリーフとしての経験値 △制球 スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:U18ワールドカップ 17年:アジア選手権 18年:U23ワールドカップ

15年にABL・メルボルンでもプレーした右腕。鶯歌工商出身としてはラミゴ3巡目の林澤彬と共に初のプロ野球選手となった。高校は名門校ではなかったが、エースとして14年の黑豹旗8強入りに貢献。大学ではリリーフメインも、今年3月以降はプロを意識してか、先発でも投げる機会があった。体をトルネード気味に捻りながら投げるため球種が判別しにくく、腕の振りが速いため打者に威圧感を与える。ストレートの最速は149kmで、リリーフでは144~147kmのストレートを投じる。オーバースローから投げ下ろす120km前後のカーブは落差が大きく、高い制球力を誇りカウント球として機能している。勝負球は右打者の内角に沈むような軌道を辿る120km後半のフォーク。前述したように先発でも起用されたが長いイニングだと球威が持続しないことが多く、デリバリーがスムーズではないため制球の安定感が不足している。プロではやはり短いイニングで勝負するリリーフが適任か。昨年11月には東北楽天の入団テストに1巡目の林安可と共に参加するも不合格だった。父は電子、家具、飲食関係の事業を行うビジネスマンであり、06年に誠泰コブラズが売却の意向を示した時には買収に関心を示したこともあったという。

 

④柯育民(ケ・ユーミン 国立台湾体育運動大学 175cm 77kg 21歳 右右 C

〇守れるポジションの豊富さ △実績

主要国際大会経歴(高校以降) なし

意外な上位指名を受けた捕手。高校ではSSメイン、大学で捕手に転向、今年はOFも守った。17年には自行培訓(練習生)として統一の二軍でプレー、18試合 .258 HR 2打点 OPS.582。劉育辰監督代行からは運動能力を評価されており、捕手ではなくSSからプレーして欲しいとの考え。チームは20代の捕手が多いため、SSに転向した方が出場機会はありそうだ。

 

⑤邱智呈(チョウ・ジチェン) 穀保家商 168cm 80kg 18歳 左左 OF

〇長打力 選球眼 △小柄な体格 コーナーCF向き

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

長打と選球眼が武器の穀保の核弾頭。中学時代はエース兼3番打者も、小柄な体格が理由で高校では投手に専念。高1の後半からOFのレギュラーとなった。内外角の対応がしっかりでき、広角に深い場所まで長打を生み出すことが出来る。同時に我慢強いアプローチも兼備しており、スピードは平均レベルながらもチームの1番打者を任される要因となった。課題は低めのボール球に手を出しがちな点。守備は打球判断、範囲ともに平均レベル。プロでは長打力のあるコーナーOFとしてアピールすることになるだろう。

 

⑥黃紹熙(ホァン・シャオシ) 崇越隼鷹 178cm 80kg 25歳 右両 OF

〇スピード ユーティリティー性 △年齢 パワー不足

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

二度目のドラフトで夢叶えた元四国アイランドリーガー。父はCPBL通算1582安打をマークし守備でも魅せた名二塁手の黃忠義。高校から日本に野球留学し、岡山共生高と京都成美大学でプレー。その後一時的に台中威達でプレーした後に国立台湾体育運動大学に入学。17年には四国IL・愛媛で27試合 打率.219 1HR 7打点 OPS.606をマーク。その後は台中運動家でプレーも18年5月にチームが解散、CPBLドラフトに参加するも指名漏れ。それからは無所属の状態が続いていたが、今季は崇越隼鷹でプレーした。元々は左打ちだったが、16年前半頃からスイッチヒッターに転向。元々守っていた2B/SSに加えてここ数年はOFとしての出場機会が増え、内外野こなせるユーティリティー性は魅力も、パワー不足であり年齢も考慮するとバックアップとしての出場機会がメインとなるだろう。

 

ラミゴ(指名7名)

①蘇俊璋(ス・ジュンジャン) 中国文化大学 178cm 70kg 20歳 右右 P

〇連投 メンタル △投球のバリエーション

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

中国文化大学の守護神。中学時代はリリーフ投手兼捕手で、高校では先発メインも、大学で再度リリーフに転向。上背はないが、高いリリースポイントから、ボールの出所が分かりにくい腕の振りでリリースするため打者は対応しづらい。ストレートは最速147km、平均140~144kmほどで内外角に投げ分けられ、120kmほどのカーブと125kmほどの鋭いフォークを組み合わせ、高い奪三振能力を持つ。大学時代は抑えとして登板機会も多かったが、故障や疲労を訴えることも少なく、強心臓でもあり抑え向きの投手である。ただ球種が単調であり、プロ入り後はもう一つ変化球を覚えたいところ。

 

②李承禎(リ・チェンジェン) 平鎮高中 185cm 85kg 18歳 右右 P

〇球種の豊富さ 制球 △アーム式 ストレートの球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

平鎮のイニングイーター。中学ではエース兼クリーンアップとして活躍、平鎮入学後は出場機会に恵まれずも、高2からチャンスを掴むと各大会で活躍。リリースポイントは低く、高いストライク率でテンポ良くゾーンを攻める。140km前後のストレートはツーシーム系のクセのあるボールで、変化球はバルカンチェンジをメインとし、他にスライダー、カーブ、フォークと球種は豊富。制球力を高く評価されており、投球技術も成熟したものを見せ、効率良く長いイニングを投げる術に長けており完投も多い。課題としてはストレートの空振りが少ないため球速の向上と、より内角への投球比率を増やしたいところ。アーム型のフォームのため故障の心配はあるが、アップサイドは大きいため先発としてじっくり育成したい。

 

③林澤彬(リン・ゼビン) 国立台湾体育運動大学 175cm 68kg 20歳 右左 SS

〇攻守のバランス △目立った長所がない

主要国際大会経歴(高校以降) なし

統一のドラ3吳承諭と同じく、鶯歌工商から初のプロ野球選手。高校時代は2Bを主に守り、大学からSSメインになり、長打力が向上しボール球を容易に追いかけなくなった。守備はキャッチングにセンスを見せ、柔軟性もある。知名度が高くない中での3巡目指名は味全が内野手を上位で確保していく中でのやむを得ない指名だったのか、元々狙った上での指名だったのかは気になるところ。

 

④曾琦(ツェン・チー) 国立体育大学 188cm 78kg 22歳 右右 P

〇ストレート ゴロボーラー △トミージョン手術明け

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:U18ワールドカップ 16年:U23ワールドカップ

トミージョン手術からの完全復活を目指す右腕。高校時代はMLB球団もマークするなど高い評価を受け、大学入学後も16年のU23ワールドカップで代表入りするなど順調だった。しかし17年の台北ユニバーシアードのトレーニングチームに入るも代表を逃すと、この頃から肘に違和感を感じ制球を乱すようになるも靭帯断裂には半年間気付かず、結局18年1月にトミージョン手術。リハビリ期間は同じくトミージョン手術を受けたダルビッシュ有カブス)の動画を見て大きく励まされたという。約1年にも及ぶリハビリを経て今年の春季リーグから復帰した。17年に152kmをマークしたストレートは現在では145kmまで出るようになった。変化球はスライダー、カットボール、チェンジアップ。三振は多くないが、打者にミートポイントを絞らせず少ない球数で打ち取っていくスタイルで、現在は先発よりもリリーフとしての登板機会が多いが、タイプとしては先発向きである。

 

⑤張喜凱(ジャン・シーカイ) 中国文化大学 180cm 70kg 20歳 右右 P

アンダースロー 内角攻め △投球のバリエーション 球威不足 制球

主要国際大会経歴(高校以降) 16年:U18アジア選手権

文化大学のサブマリン。大学を退学し今ドラフトに臨んだ。烏来出身のタイヤル族で、野球をするため新莊の小学校に転校。中学までは主に内野手としてプレーも、守備時にサイド、アンダースローで送球することが好きだったこともあり、高校2年生の後半に入りコーチが投手、しかもアンダースローの転向を薦めた。当初は不慣れだったものの牧田和久渡辺俊介の投球動画などを見て研究。16年の高校野球リーグでは桃園農工(現北科附工)を優勝に導く活躍を見せ、決勝では6.0IP/0R(6回コールド)。その活躍もあり玉山盃の桃園市、U18アジア選手権に代表入り。U18アジア選手権では決勝の日本戦に先発、5.1IP/1Rの好投で一躍名を挙げた。文化大学に進学後は先発、リリーフの両方を器用にこなした。大きく横に曲がる120km前後のスライダーと110km前後のカーブ、リリース時に浮き上がり、ベース附近で沈む130km前後のストレートでゴロアウトを生み出す。曲がりが大きい変化球を持ちながらも、内角を突ける厳しさも持ち合わせ、左打者も苦手としていないのも強み。ただアンダースロー故体への負担も大きく、制球を乱すシーンが見られる。また球威不足も気になる点であり、プロ入り後は制球力を改善するなどして対策したい。

 

⑥莊昕諺(ジュアン・シンイェン) 南英商工 183cm 86kg 18歳 右右 P

〇球威 奪三振能力 △球種不足 緩急不足

主要国際大会経歴(高校以降) なし

離島・澎湖出身、南英のエース。昨年ラミゴに5巡目で指名された陳克羿は高校の1つ先輩にあたる。中学までは目立った成績を残してこなかったが、野球を続けるため高校から台南へ。高2から登板機会を増やしていった。小さめのテークバックから最速146km(先発では140km前後)のホップ気味のストレートと125km前後のスライダー、120km前後のカーブで奪三振を多く奪う。コントロールも良好でストライク率も高く、長いイニングを投げることが出来る。タイプとしては先発向きだが、球種がまだ少なく、投球の緩急を身につけたい。

 

⑦楊瑞承(ヤン・ルイチェン) 臺中台壽保 180cm 90kg 25歳 右左 3B

〇パワー 作戦遂行能力 △年齢 実績

主要国際大会経歴(高校以降) なし

即戦力としてアピールしたい内野手。昨年「楊家祥」から改名。大学時代は目立った成績を残せず、17年にドラフトトライアウトを受験したが不合格も、今年再度ドラフトトライアウトを受験し4打数3安打とアピール、2年越しの夢を叶えた。長打力が武器だが、作戦遂行能力が高く小技も得意とする。ラミゴの近年の7巡目指名は藍寅倫、朱育賢、黃子鵬などチームに欠かせない主力として活躍している選手が多いが、これに続けるか。今年26歳とアピールに残された時間は少なく、三連覇を目指すチームゆえ内野の層も厚い。社会人チームで得た経験と安定感をもって、確実に与えられたチャンスをものにしたい。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://www.youtube.com/channel/UCJ8cnUlVCybEsYRoRNwXNbA

Twinkle一瞬之光

https://www.sportsv.net/authors/salada