台湾プロ野球データベース コラム集

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2020CPBLドラフト指名選手リスト 味全

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味全(指名11名)

①王維中(ワン・ウェイジョン) パイレーツ 188cm 83kg 28歳 左左 LHP

〇経験 ストレート △スタミナ 変化球 年齢

主要国際大会経歴(高校以降) 10年:AAA世界野球選手権

 ついに台湾に帰ってきた経験豊富な左腕。兄は王躍霖(樂天桃猿)。12~13年にパイレーツ、14~17年までブルワーズでプレー。14年と17年にはMLBに昇格し計22登板。18年はKBOリーグ史上初の台湾出身の選手としてNCでプレー。開幕直後は好調だったが、体調不良、肩と肘のコンディション不良が重なり、シーズンを経るにつれ球威が低下し25試合7勝10敗 141.2IP ERA4.26と今一つで再契約されず。19年はアスレチックスとマイナー契約を結び5月下旬にMLB昇格。20試合に登板しERA3.33とまずまずの成績を残すも8月末にウェイバー公示され、9月にパイレーツと契約し5試合に登板。11月に40人枠から外れ、今季は当初アメリカでのプレーを希望していたが、新型コロナウイルスにより早々と台湾でのプレーを決めた。先発としては平均約145kmのストレートとスライダーを中心に、チェンジアップと稀にカーブを織り交ぜる。KBOリーグでのプレー時はストレート中心の攻撃的な投球は見せ四死球は少なかったものの、スライダーに角度があるわけではなく他の2球種も今一つで、奪三振を奪えず、被安打を多く浴びる場面が目立った。先発の経験がキャリアを通じて少なくスタミナが心配だが、経験とストレートを武器にエース級の働きが求められる。CPBLで活躍してからの再度の海外進出を本人は希望しているが、現在のCPBLの規定では3シーズンプレーしないと海外でのプレーが認められていない。本人もこの規定は理解しており、ドラフト後3年契約が結べることを希望している。

 

①廖任磊(リャオ・レンレイ) 埼玉西武 201cm 125kg 26歳 右右 RHP

〇体格 ストレート △コントロール 変化球 メークアップ

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:アジア選手権

 勝ちパターンでの起用が目される大型右腕。中学卒業後、岡山県共生高等学校野球留学。卒業後は開南大学へ進学、その後休学し14~15年の2シーズンをパイレーツのRkでプレー。その後大学に復学し卒業。16年のドラフト7位で巨人に入団も、2シーズンで一軍昇格を果たせず18年オフに戦力外通告。19年はトライアウトで埼玉西武に入団し一軍登板を果たすも3試合の登板に終わり再び戦力外通告を受け、味全と契約しアジアウインターリーグでプレー。今季は4月に中信兄弟に自行培訓選手(練習生に相当)として入団。二軍では13試合に登板し1勝 12.1IP 21K 8BB ERA3.65。150kmを常時超えてくるストレートが最大の武器でビシビシ決まると手が付けられない。その一方で上体だけで投げている感が否めず制球もアバウト、変化球は主にスライダー、チェンジアップ、カーブを投じるがどれも精度が課題。また巨人時代から指摘されていた素行も懸念材料。

 

②林辰勳(リン・チェンシュン) 穀保家商 180cm 70kg 18歳 右右 C

〇守備 肩 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) 19年:U18ワールドカップ

 穀保家商の周宗志監督からも「ここ数年でチーム一番の捕手」と評される高校生ナンバー1捕手。中学時代から攻守備えた捕手として評価されており、16年ポニーリーグではアジア太平洋予選からワールドシリーズまで8試合連続、計12HRと大爆発しその名を知らしめた。高校入学後は守備力がより向上。二塁までの送球も約2秒と速く、トップクラスのキャッチングとブロッキング能力を備える。送球時の余分なステップと動作を減らせればより盗塁阻止能力は向上するだろう。打撃は流し打ちに長け、外角のボールを上手くミートする。ただミートに注力するあまりフルスイングが少なく、引っ張った打球の多くが打ち取られており、プロでは打撃に苦しむ懸念がある。小学校時代に打撃練習時にコーチが投げたボールが直撃、高校時代には打者のバットが当たり二度右目の網膜剥離の手術を行っており、今でも稀に飛蚊症の症状があるというが、本人はもう怖くないと語る。

 

②林逸達(リン・イーダ) 国立体育大学 185cm 95kg 19歳 右右 RHP

〇ストレートの球威 体格 △変化球 投球術

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

 ストレートが力強い本格派右腕。15年のU15アジア選手権の決勝では日本戦に先発し勝利投手に。高校入学後は投手中心だったが、2年時に怪我に悩まされ、一時野手に専念し1B/3Bを守り長打力が向上。3年からは先発投手としての登板が増え球速もアップ、「4番・DH」で出場し試合終盤にリリーフ登板するケースもよく見られた。18年の玉山盃では大会MVP&DHでベストナイン、U18アジア選手権でも代表入りを果たした。高校卒業後は将来の海外でのプレーも見据え国立体育大学に進学、リリーフで主にプレーした。立派な体躯から繰り出される最速150km、平均140km台中盤のストレートは重く、どんどん打者のストライクゾーンを攻めていく。変化球はカウント球のスライダー、勝負球のフォーク、誘い球として有効なチェンジアップを投じるが、ストレート一辺倒で勝負しがちなためプロでは変化球、投球術を磨きたい。先にCPBLでプロの水に慣れ、今後も機会があれば海外でのプレーを狙うとのこと。身体的な条件や投げているボールを見れば先発でのプレーを見たいが、先発で活躍できなくとも勝ちパターンのリリーフを任せられるだろう。

 

③楊鈺翔(ヤン・ユーシャン) 普門中学 187cm 83kg 18歳 右右 RHP

〇アップサイド ストレート △スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 アップサイドに期待したい長身右腕。王躍霖(樂天桃猿)、王維中(味全)はいとこ。中学では4番・SSとしてプレー。高校入学後は金属バットの部からプレーし、1年では1B/3Bを守り、2年から投手に転向。転向当初は制球とボールのクオリティが不安定で最速は135km止まりも、3年から腕への負担軽減のためテークバックを短くしたことで安定感が向上。またトレーニング施設に通い詰めたことでストレートの最速は147kmまでアップ。ストレートは高い空振り率、カーブ、スライダー、フォークが持ち球。フォークは鋭く落ち勝負球として威力があり、カーブはクオリティは平凡ながらストレートとの球速差をつけるため用いられる。課題はスタミナで、長いイニングを投げた経験がまだ少ない。また心配なのは3年後半に入るとボールの威力が低下し、ストレートの空振り率が低下したこと。恵まれた体格と球威からプロでも先発として育成されるとの見立てが強い。

 

④王順和(ワン・シュンヘ) 穀保家商 175cm 70kg 18歳 右右 3B

〇スピード 広角 内野3ポジション △肩 アプローチ アップサイド パワー

主要国際大会経歴(高校以降) 19年:U18ワールドカップ

 攻守兼備の俊足内野手。中学時代は投手とSSを兼任。高校に入り3Bへコンバートされた。玉山盃では18、19年の2年連続でベストナインに入り、昨年のU18ワールドカップでは.364/.481/.682のスラッシュラインをマークし優勝に貢献、3Bのベストナインに選出された。スピードツールに長け、ベース一周を14秒前半で駆け抜ける。打撃はスイングがシンプルで低めのボールを得意とし、広角打法でギャップを抜いての長打も多い。一方で容易にボール球に手を出すケースが多く、高めの吊り球のストレートに空振りしカウントを悪くしてしまうのは要改善。守備は3Bメインも、2B、SSも守れる。肩はやや弱いが、送球技術とポジショニングでカバーしている。小柄な体格からアップサイドは大きくないと見られ、プロでは守備のユーティリティー性と俊足を生かした便利屋としてアピールしたい。既に味全の3Bには劉基鴻がいるが、「もし先輩よりも良ければ、来年に一軍に上がれる」と勝負する気は満々。

 

⑤蔣少宏(ジャン・シャオホン) 中国文化大学 179cm 93kg 23歳 右右 C

〇守備 パワー △打撃の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:U18ワールドカップ

 中国文化大学の主戦捕手。父は三商、TML金剛でプレーした蔣坤珄。高校時代から攻守のバランスに長け、15年にはU18ワールドカップの代表にも選出された。高校卒業後、国立体育大学への進学で高校と話がついていたが、なんと入試の結果は不合格。滑り止めで他大学を受験していなかったため、野球浪人のような形で社会人の新北市でプレー後、1年遅れで中国文化大学に入学。新北市では特に配球について多くを学んだという。最大の売りはプロでも今すぐ通用する守備で、キャッチングとブロッキングの評価が特に高い。捕手としての落ち着きもあり投手に安心感を与えられる。盗塁阻止能力もあり、肩と送球の強さも備えている。一方で打撃は課題が多く、パワーはあるものの低めや外角のボール球に手を出す癖があり、弱いゴロや平凡なフライでのアウトが多く成績が安定しない。守備型の捕手のため、プロでは更に武器の守備を磨き、自分に合った打撃のスタイルを見つければ意外性のある捕手として生き残りを図りたい。

 

⑥呂詠臻(ルー・ヨンジェン) 国立台湾体育運動大学 178cm 70kg 21歳 右右 RHP

〇ストレート △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 落ち着いたマウンド捌きを見せるイケメン右腕。穀保家商では体の線も細く出場機会も少なかったが、大学入学後2年になって頭角を現し、昨年江國豪(富邦)のプロ入り後、エースの座を受け継いだ。先発としては140~143km前後をマークするストレートに勝負球のスライダー、縦に大きく落ちるカーブ、フォークが持ち球。リリースポイントが安定せず、はっきりとしたボールが多いのは要改善。投球フォームが大谷翔平(エンゼルス)に似ていることが話題となった。

 

⑦劉崇聖(リォウ・チョンシェン) 嘉義高中 183cm 78kg 19歳 右右 RHP

〇ストレート ゴロボーラー △コントロール スタミナ 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 嘉義高中のエース。中学から球速は140kmに達し、現在の最速は148km。ストレートが最大の武器で、シンカーのような軌道を辿りゴロアウトを多く生み出す。変化球はカーブ、スライダーがメインで球質は平凡だが、ストレートとの球速差で高校野球では打ち取っていた。また18年の黑豹旗で投じた落差の大きいバルカンチェンジは、アメリカのネット掲示板でも話題となったが、投球比率としては少なく、腕の振りとリリースポイントがストレートと異なるなど試合で使うにはまだ不十分。コントロールが良くないため、ストライクを取るために球速を落とすシーンが見られ、先発では平均球速が落ち、試合後半のスタミナも課題。現在のコントロールと変化球ではプロの先発投手として生き残るのは難しいが、ストレートの球威を生かしてリリーフに回るのが賢明か。高校1年時に成績不振で留年した関係で、今年の大会は年齢制限で出場できず。最後の公式戦登板は2019年11月の黑豹旗16強戦だった。

 

⑧董秉軒(ドン・ビンシュエン) 中国文化大学 186cm 84kg 22歳 右左 1B/OF

〇パワー 広角 肩 △ポジション

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:U18ワールドカップ

 大学4年でかつてのパワーを取り戻した選手。董子浩(樂天桃猿)はいとこ。高校時代からパワーの評価が高く、2年時に玉山盃でMVP、打点王、1Bでベストナインを獲得。15年のU18ワールドカップにも選出された。卒業後は中国文化大学に進学も手首の故障に苦しみフルスイングが出来ず、出場機会を得るためにミート中心の打撃に切り替えた。しかし昨年のドラフトに落選後、コーチから長打力を高めてこそドラフトで指名されるチャンスが出てくるとのアドバイスを受け、後輩である劉致榮(レッドソックス)を参考にウエートを行いパワーアップ。中国文化大学の4番として信頼を勝ち取った。武器である打撃は広角にコース問わず打てるのが強み。大学ではチーム事情もありほとんど1Bを守ったが、外野と3Bを守った経験があり、平均レベルの走力と強肩も兼備するため、コーナーOFとしてCPBLでも生き残れる可能性がある。CPBL各球団に人材が溢れている1Bと外野が守備位置ということもあり下位指名になったと予測されるが、戦力層の薄い味全に指名されたことをポジティブに捉え、劉基鴻や黃柏豪に続く生え抜きのパワーヒッターとして頭角を現したい。

 

⑨趙璟榮(ジャオ・ジンロン) 安永鮮物 180cm 85kg 22歳 右左 RHP

〇球速

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 速いストレートで生き残りたい社会人右腕。高苑工商から高雄大学に進学、昨年卒業後は社会人の安永鮮物でプレー。昨年のドラフトに参加も落選、今回はトライアウトから参加し、140km台中盤~後半のストレートを連発しアピールした。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://www.youtube.com/channel/UCJ8cnUlVCybEsYRoRNwXNbA

Twinkle一瞬之光

https://www.sportsv.net/authors/salada