台湾プロ野球データベース コラム集

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2019CPBLドラフト指名選手リスト 味全(1~12巡目)

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味全(指名32名)

劉基鴻(リォウ・ジーホン) 平鎮高中 182cm 73kg 18歳 右右 SS

〇パワー △敏捷性 守備範囲 3B向き?

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

強打のSSとして平鎮を支えたキャプテン。小学校時代は9つ全てのポジションを経験、中学時代は投手としてプレーする時期もあったが、中3進級前に球速が上がらなかったこと、打撃に自信が出てきたことで野手に専念。高校入学後は強豪校ゆえ競争が激しく金属バットの部からのスタート、1年まではSSだったが、2年になると江坤宇(中信兄弟)とポジションが重なり3Bにコンバート、3年から再びSSに戻った。2年から4番を務め、3年ではキャプテン兼4番として活躍。18年の黑豹旗では林承飛(ラミゴ)、江坤宇(中信兄弟)に続くチーム史上3人目となるSSでベストナインに選出された。SSとしては体が大きく敏捷性には欠けるが、送球、キャッチングは遜色なく「強打のSS」として活躍してきた。打撃ではスイングスピードが速く、ゴロやライナーの打球速度が速い。また長打と率を両立できており、長打力だけなら今ドラフトの高校生ではトップクラス。プロ入りにあたり改善すべきポイントは打撃では変化球への対応を高めることと、打球方向がレフト方向に偏りがちな為、広角に打てる技術を身につけシフトを敷かれないようにしたい。守備範囲が広くはなく、プロでは1Bまたは3Bに回る可能性もあるが、高校で魅せた守備の安定感が維持できればSSでもプレーできるだろう。

 

①徐若熙(シュ・ルォシ) 平鎮高中 180cm 80kg 18歳 右右 P

〇完成度 制球 △アップサイド 疲労

主要国際大会経歴(高校以降) なし

「怪物」李晨薰と並ぶWエースとして活躍した右腕。中学時代は守備範囲の広いSS兼投手としてプレーも、高校では打撃に自信が無いことから投手に専念。高1時は右肘の内、外側に骨棘がある影響でパフォーマンスにムラがあり、17年6月の玉山盃の大会後に右肘の違和感を訴え、同年9月に右肘軟骨の摘出手術を受け、昨年1月に復帰。手術後のリハビリの過程で下半身強化に勤しんだことが功を奏し、10月に自己最速153キロをマーク。ただ、頻繁な登板機会ゆえか平均球速は上がらず最近はリリーフ時でも140~145kmの間を推移する。(平鎮のコーチは最速149km、平均球速145kmとコメント)縦に大きく落ちる120km前後のカーブと120km台後半のフォークを主な変化球とし、発達した下半身から投げ込まれるフォームは安定しており、制球も良好。高卒投手としては完成度は高いが、海外でのプレーを諦めた要因でもある特段大きくない体格がネックで、アップサイドは大きくないと見られる。タイプとしてはリリーフ向きだが、チェンジアップも覚え始めており、配球のバリエーションが広がれば先発として育成されるチャンスもあるだろう。

 

②李凱威(リ・カイウェイ) 中国文化大学 174cm 70kg 21歳 右左 2B/3B

〇アプローチ 攻守の安定感 △内野安打の少なさ

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:U18ワールドカップ 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

文化大学のリードオフマン。高校、大学時代は高打率と安定感ある守備で鳴らし、主に1番を務めた。小柄ながら締まった体つきをしており、スイングはシンプルでバットコントロールも良好。確実にボールをミートし大学生ではトップクラスの選球眼を備える。ヒットゾーンは広く、稀に逆方向に長打を放つ意外性も持ち合わせるが、ミートポイントを意識する余りフルスイングできないケースがあること、打球の方向を見てから一塁に走り出すクセは要改善。守備では運動能力、肩は平均レベルながらフライの判断やゴロのバウンドを計算する能力に長けており、安定感のある守備を見せる。プロでも即戦力の内野手として活躍できる実力は既に持ち合わせている。

 

②朱祥麟(ジュ・シャンリン) 開南大学 185cm 85kg 20歳 右右 2B/SS

〇長打力 △攻守の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

大柄ながら二遊間を器用にこなす選手。朱元勤(統一)はいとこにあたる。高校時代は打撃に突出したものはなかったが、大学進学後フルスイングするようになり才能が開花、中軸を打つまでになった。打撃は長打力を活かし各大会で数字は残しているが、スイングが遠回りしておりミートの確実性が不足している。守備は高校時代は1Bもスピードと身体能力を見込まれ大学入学後2B、2年からはSSも守るようになりOFもこなし、やや技術面で粗さを見せるも大柄ながら動きはスムーズで、スピードと肩を兼備している。長打力のあるユーティリティーが完成形となる。

 

③曾傳昇(ツェン・チュアンシェン) 高苑工商 176cm 65kg 18歳 右左 SS

〇守備 走力 △長打力不足

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

林子偉(レッドソックス)から「自分が高校生の時よりも守備が上手い」と言わしめた、守備が魅力のSS。彼の名を一躍有名にしたのは昨年の黑豹旗で魅せた好守。トップクラスのスピードと運動能力を持ち、キャッチングの感覚、打球へのアプローチも天性の物がある。守備範囲も広く、優秀なSSとしての資質を備えており、華麗なプレーで魅せるタイプのSS。欲を言うならば、プロ入り後は安定感も高めるよう心掛けたい。打撃はバットコントロールに優れてはいるがスイングの軌道が不安定でボール球を追いかけるシーンが多く、成績は目立っていない。自身も打力不足を認識しており、高3後半からは全力で振るシーンも増えているため、その成果を見守りたいところ。まずプロ入り後は同じ左打ちのSSである客員コーチの川崎宗則から多くを吸収したい。

 

③郭天信(グォ・ティエンシン) 中国文化大学 173cm 66kg 19歳 右左 SS/2B/3B/OF

〇俊足 守備範囲 ユーティリティー △小柄な体格 パワー不足

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:U18アジア選手権

大学1年生でプロ入りを決意した内野手。高校時代は捕手以外の全ポジションを経験し、投手としても平均レベルの球速を計測。高3でキャプテンとなり、17年にはU18アジア選手権で3番SSとして打率.364をマーク。俊足を武器に高校卒業後海外でのプレーを嘱望された時期もあったが、卒業の1年前にMLBへ申請し契約資格を取得しなかったため、国内の中国文化大学に進学。大学では打撃と走塁速度の強化に努め、昨年代表入りしたU18アジア選手権では日本戦の4回裏二死1、3塁、吉田輝星(日本ハム)からセーフティースクイズを決めた。一塁到達タイム約4秒の走力とSS、CFのセンターラインを難なくこなせる広い守備範囲が武器で、(大学では2B/3Bも守った)打撃も空振りが少なく上位に置き投手をかき回すタイプ。ただ小柄な体格でアップサイドは小さく、俊足巧打タイプとなるとCPBLでは即戦力は難しく、一軍で活躍するには時間を必要とするだろう。課題は内野守備の正確性と変化球への対応。

 

④吳俊杰(ウー・ジュンジェ) 開南大学 187cm 76kg 22歳 右右 P

奪三振能力 リリーフ向き △投球術

主要国際大会経歴(高校以降) 17年:台北ユニバーシアード アジア選手権

一年で成長を見せた長身の本格派右腕。高校時代に国際大会の経験は無かったが大学で球速をアップさせ、17年には台北ユニバーシアードアジア選手権で代表入りを果たした。しかし昨年のドラフトでは中信兄弟からドラフト8位指名も指名順位が低かったことを理由に入団せず。その後は開南大学でプレーを続け、テークバックを小さくするフォーム改造に着手。他にもフォークの比率を増やしたり、制球とスタミナを改善させるなど一年を無駄にせず過ごした。先発時は140~145kmのストレートに落差の大きいカーブ、スライダー、フォークを持ち球とし高い奪三振能力を誇る。欠点は効率的な投球が出来ず、余計な変化球や高めへの吊り球で無駄な球数を重ねてしまうこと。これまでは先発メインでプレーしてきたが、短いイニングを全力で投げるリリーフ向きの投手であり、プロでもすぐに勝ちパターンには入れるだけの実力を持っている。

 

④郭郁政(グォ・ユージェン) 南華大学 188cm 80kg 21歳 右右 P

〇アップサイド 角度 △球威不足

主要国際大会経歴(高校以降) なし

先発としての将来性に期待したい右腕。普門高中-南華大学からのプロ入りは昨年のラミゴのドラフト1位翁瑋均以来2人目。高校時代から140kmをマークも、制球が不安定で出場機会は少なかった。大学では投球フォームが安定し、それに伴い制球も改善。今年はCPBLドラフトトライアウトの前に行われた、味全のトライアウトに参加。(CPBLドラフトトライアウトは不合格)そこで先発として2イニング無失点と好投したのも影響しての上位指名か。ストレートは最速145km(リリーフでは140~143km)で、スライダーを勝負球に使い、他にチェンジアップと空振りを奪えるフォークも投じる。南華大学の蔡仲南監督からはアップサイドの大きさ、身長を活かした投球の角度を評価されている。現時点ではプロですぐに使えるレベルではないが体格も立派であり、将来性に期待したい。

 

⑤林子昱(リン・ズーユ) 台南市 185cm 78kg 25歳 右右 P

〇球速 球種 △年齢

主要国際大会経歴(高校以降) なし

スピードが持ち味の細身右腕。2014年に成立したばかりの社会人チームである台南市からは初のプロ野球選手となった。17年から台南市でプレー以降、体格が立派になり球威も向上した。昨年のドラフトでは指名漏れも、今年のCPBLドラフトトライアウトは参加者最速の148kmをマーク。スムーズなデリバリーから沈む軌道を辿る、リリーフ時145~148kmのストレートにカーブ、シンカー、フォーク、チェンジアップと球種は豊富。以前はカーブとストレートを投げる時の腕の振りの速さの違いが目立つ時期もあったが、現在は改善されている。

 

⑥森榮鴻(セン・ロンホン) 崇越隼鷹 183cm 83kg 24歳 右右 P

〇ストレート △2度のトミージョン手術 制球

主要国際大会経歴(高校以降) 16年:U23ワールドカップ

故障からの再起を期す右腕。張志豪(中信兄弟)は母方のおじにあたる。2012年AAA世界選手権では曾仁和(カブス)とのダブルエースとして活躍、12年のWBC予選では代表入りするなど順調な成長ぶりを見せていたが、その後肘を傷め手術を行い復帰するも今度は登板中に肘の靱帯を損傷、トミージョン手術により大学在籍中は約3年半にわたるリハビリを余儀なくされた。16年のドラフトにラミゴが即戦力として4巡目で指名したが、指名順位が低かったこともあり契約せず。その後崇越隼鷹に入団するも、17年の春季リーグで右肘靭帯を損傷、同年10月に二度目のトミージョン手術。手術後はリハビリをしつつ、親戚の家具工場でも働いた。リハビリは幸い順調で今年の春季リーグで復帰。球速は150km近くまで戻っており、持ち球はスライダーとチェンジアップ、制球はやや不安定。

 

⑦張政禹(ジャン・ジェンユ) 南華大学 180cm 68kg 19歳 右左 SS

〇アップサイド △守備の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

細身の高卒内野手。美和高中を卒業した昨年にドラフト参加も指名漏れ。今年も「期待していなかった」と話すが、大学野球リーグでトップの打率.562をマーク、見事1年生での指名となった。高校時代は打撃は目立たなかったが、大学入学後スイングの安定感とパワーが向上。守備はキャッチング、柔軟性、打球反応共に良好で頭も使える選手。安定感が増せば、隠れた掘り出し物になれる可能性がある。

 

⑧蔡明憲(ツァイ・ミンシェン) 南華大学 184cm 75kg 20歳 右右 P

〇制球 アップサイド △投球の角度 球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

細身の先発候補右腕。味全のトライアウトでは先発し2.0IP/1R。制球力が高く、大学入学後球速もアップ。リリーフ時は140~143km前後をマーク、先発時は140km前後のストレートと125km前後のウイニングショットのスライダー、チェンジアップを投じる。課題は投球の角度と球威が不足しており、高めの失投を長打にされるケースが多いこと。

 

⑨呂偉晟(ル・ウェイチェン) 崇越隼鷹 188cm 75kg 20歳 右右 P

〇球速 体格 △制球 再現性

主要国際大会経歴(高校以降) なし

速球派右腕。高校時代から球速も速く、昨年のCPBLトライアウトでは145kmをマークするも、制球が不安定なこともあり不合格。今年は味全のトライアウトに参加しアピール、特に高校から修正してきたリリースポイント、サイド気味の腕の振りからオーバースローに近い腕の振りに変えたことで角度がつき球威をアップさせた。変化球は鋭いカーブがあるが、課題の制球は相変わらずで投球の再現性は低い。投球技術を全体的にこれから磨いていく必要がある。

 

⑩莊玉彬(ジュアン・ユビン) 美和高中 180cm 70kg 18歳 右右 P

〇ストレート ストライク率 アップサイド △メンタル 試合経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

高校で大きく成長した右腕。中学時代は試合経験が少なかったが、美和高中入学後、元兄弟監督の陳瑞振の熱心な指導もあり、大きく成長。高2で135kmにとどまっていた球速は高3で143kmにまでアップした。しなやかな腕の振りから繰り出す先発時135~140kmのストレートのクオリティは高く、空振りを多く奪える。制球は平均レベルながらストライク率が高いため少ない球数で長いイニングを投げられる。変化球は110km前後のカーブと120km前後のフォークがあるが、どちらもまだ未完成。現時点ではメンタルと試合経験が不足しているが、高校時代の成長スピードの速さを見ると、プロ入り後のアップサイドも大きいと見込まれる。目標とする選手は千賀滉大(ソフトバンク)。

 

⑪全浩瑋(チュエン・ハオウェイ) 美和高中 178cm 82kg 21歳 右右 C

〇肩 パワー △変化球への対応

主要国際大会経歴(高校以降) なし

強打と肩が魅力の捕手。高校時代から中軸を任され、大学でも強打の捕手としてレギュラーに。大学生捕手ではトップクラスの強肩を誇り、キャッチング、ブロッキングも平均以上で安定感のある守備を見せる。打撃はパワーがあり、長打も飛び出すことがあるが、スイングの軌道が長く変化球を見極める能力がまだ低い。今年の大学野球リーグでは全体ドラ1の江國豪からホームランを放った。

 

⑫洪瑋漢(ホン・ウェイハン) 国立台湾体育運動大学 170cm 70kg 23歳 左左 OF

〇走力 コンタクト 守備範囲 △パワー アプローチ

主要国際大会経歴(高校以降) 18年:世界大学野球選手権、U23ワールドカップ

代表の「1番・CF」を任された核弾頭。15年の協會盃では打率.684、12打点をマークし大会史上初の野手からのMVP選出。その年のアジアウインターリーグでは中華培訓の一員として出場し12試合、打率.240。昨年は世界大学野球選手権、U-23代表に選出され、主に1番・CFを任された。打撃はバットコントロールに長け、空振りが少なく容易にアウトにならない。またトップクラスの走力でセーフティーバントや内野安打での出塁も多い。ただ体格は小さくパワー不足であり、ゾーン理解の不足ゆえ手を出すボールの範囲が広すぎることが欠点。また外角のボールはほとんど流し打ちでヒットにするスタイルもプロで通用するかは疑問符がつく。守備では高い運動能力を活かしたスピードと広い守備範囲でアマ最高のCFとの評価を受けるが、打球判断を稀に誤ることがあり、肩は平均レベル。ストライクゾーンをしっかり管理し自分のスイングが出来るようになれば4番手外野手としてチャンスは増えるであろう。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://www.youtube.com/channel/UCJ8cnUlVCybEsYRoRNwXNbA

Twinkle一瞬之光

https://www.sportsv.net/authors/salada