台湾プロ野球データベース コラム集

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2021CPBLドラフト指名選手リスト 中信兄弟+統一+味全

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中信兄弟(指名7名)

①呂彥青(ルー・イェンチン) 阪神 175cm 65kg 25歳 左左 LHP

〇ストレート NPBでの成長 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) 15年:プレミア12 15年:世界大学野球選手権 15、17年:アジア野球選手権 16年:U-23ワールドカップ 17年:ユニバーシアード

 台湾でも黄色のユニフォームに袖を通す左腕。高校時代から評判は高く、大学入学後はエースに。14年のアジア選手権、15年のプレミア12、16年のU23ワールドカップなど国際大会代表の常連となり、台湾アマナンバーワン左腕との触れ込みで17年オフに阪神に入団。しかしチームの外国人枠争いは激しく、二軍でリリーフ中心の登板が続いた。それでも19年、20年はK/9がそれぞれ8.4、9.0と支配力ある投球を披露。昨年8月には最速150kmをマークし、飛躍が期待されたが昨オフ自由契約に。今年3月に味全と自主培訓選手として入団、二軍で10試合 27IP ERA0.67と好投。6月に退団し中信兄弟の練習に合流していた。柔らかい腕の振りから投じる140km台前半の伸びのあるストレート、スライダー、チェンジアップ、カーブが持ち球。一方でコントロールには若干の不安があり、19年、20年はBB/9がそれぞれ5.1、3.8。CPBL二軍相手には小気味良い投球でストライク先行の投球を見せコントロールでの不安を見せることは無かったが、一軍ではどうなるか。中信兄弟では長年不在だった左の台湾人先発として、どこまで数字を残せるかが楽しみな存在だ。

 

②陳志杰(チェン・ジージェ) 平鎮高中 183cm 91kg 18歳 右右 RHP

〇ストレート カーブ メークアップ △配球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 実績は今ドラフトの高校生投手でナンバーワンの右腕。中学時に140km超えのストレートで注目を浴び、平鎮入学後も主戦投手として期待された。しかし1年時は最速147kmをマークするも、技術面がまだ未熟で出場機会は少なく、また体重が増えやすい体質で一時期は100kgを超えていたが、2年になり14kgのダイエットに成功。投球の安定感とスムーズさが増し、コントロールが改善。その後はチームのエースとして活躍し、昨年は高校野球リーグでMVP、玉山盃ではベストナイン、黑豹旗でMVPを獲得した。恵まれた体格を有し腕の振りは速く、ストレートは先発でも平均で145km前後を安定してマーク、今年の王貞治盃では自己最速の152km。ストレートの球威と伸びはプロでも通用するだろう。変化球は落差の大きいカーブ、右打者への外角に投じると効果的なスライダー、発展途上のチェンジアップを織り交ぜる。先発投手としてのスタミナも持ち合わせているが、外角中心の配球が多く投球が単調になるのは改善したい点。先発投手に必要な能力は既に持ち合わせており、将来的に先発ローテを長く守れるだろう。

 

③張仁瑋(ジャン・レンウェイ) 普門中学 175cm 74kg 18歳 右右 SS

〇SS守備 △パワー 安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 普門のキャプテン。高校入学後は近年鄭宗哲、馬鋼、馬傑森と優秀な先輩内野手がいたため2Bを主に守り、彼らが卒業後はSSのレギュラー、キャプテンとなった。打撃はパワーは無く守備に長けたSSで、体格は小さいながらもスイングの完成度が高く、確実にミートし打球を広角に飛ばす。一方で外角の誘い球の変化球と外角の高めのストレートへの対応に課題を残す。運動能力は高く、走力は平均以上。SS守備は範囲が広く、足捌きと打球処理もスムーズで肩の弱さを補っているが、平凡な打球処理を誤ることがあるため守備の安定感は今後プロで高めていきたい点。中信兄弟では今後不動のSSとなるであろう江坤宇がまだ21歳と若いため、プロでは2Bにポジションを移す可能性が高い。

 

④周委宏(ジョウ・ウェイホン) 穀保家商 175cm 70kg 18歳 右左 SS

〇打撃技術 肩 △守備 アプローチ アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 高い打撃センスが光る高卒内野手。高校入学後は金属バットの部で結果を残し、1年後半からすぐに木製バットの部に移行。木製バットの部のレベルの高さに攻守で苦しむも、2年以降は大きく成長。2年の黑豹旗ではベストナイン、3年に入ってからは長打力も成長した。打撃のテクニックは成熟しており、広角打法で特に低めのボールを長打にする技術が高い。しかし積極的過ぎるアプローチで厳しめのボールに手を出しがちで、体格も小柄なためプロ入り後のアップサイドは見込みにくい。走力は平均レベル、肩は平均以上。守備の評価は平凡で、高校では2B、SSを守るもゴロを処理する際の足捌きが不安定。正面で捕れる打球を体の横で捕球する癖も改善したい。守備範囲もセンターラインを守るには狭く、プロでは苦労するだろう。中信兄弟の内野陣は守備に長けた選手が比較的多いため、打撃で価値を出せなければ苦しい立場となる。

 

⑤陳統恩(チェン・トンエン) 中国文化大学 178cm 81kg 19歳 右右 C

〇パワー 肩 △守備

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 将来の強打の捕手候補。南英商工を卒業後ドラフト指名を考えたが、設備面が充実している中国文化大学からのオファーを受け、大学進学。そこから僅か1年でのドラフト指名となった。捕手としての守備面はまだまだこれから磨いていく必要があるが、パワーと強肩が持ち味。今ドラフトでの注目度は低い選手だったため、5位での指名は少々驚き。しかしチーム事情として中信兄弟には同年代の捕手のプロスペクトが張聖豪、林吳晉瑋がいる中での指名はやや疑問。プロでしっかりと守備のレベルアップを図り、3~4年後あたりに正捕手争いに食い込めるか。

 

⑥李家成(リ・ジャーチェン) 台北興富發 185cm 90kg 21歳 右右 RHP

〇ストレート △コントロール マウンド捌き

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ストレートで押す右腕。高校は鶯歌工商を卒業後、台體大に入学し約1年半在籍。その後昨年の春季リーグを台中市の一員としてプレーし、その後同じく社会人球団の台北興富發に移籍し技を磨いた。投球比率の多くを占めるストレートは威力があり最速150km、平均141~145km。変化球で一番の武器であるスライダーは135kmを超えることもあるが、フォークは制球力を磨く必要がある。昨年のポップコーンリーグでは12試合 14IP 15K 8BB ERA0.00、今年の春季リーグでは7試合 10.2IP 3K 4BB ERA1.69と防御率こそ良好もコントロールが課題。またマウンドでの集中力が切れる場面、突如制球が乱れる場面が多いのは要改善。今年22歳ながら即戦力のリリーフとして期待されており、まずは一軍でビハインドの場面からアピールしたい。

 

⑦黃鈞麟(ホァン・ジュンリン 大溪高中 175cm 66kg 18歳 左左 OF

〇スピード 守備範囲 △パワー 体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 隠れた掘り出し物の可能性を秘める高卒外野手。投手兼外野手の二刀流としてプレー、2年までは目立った活躍は無かったが、3年に入り大きく成長。長打が出るようになり、黑豹旗ではホームランを放った。あるスカウトによると走力は高校生でもトップクラスで、一塁到達までのタイムは3.9秒。MLBのスカウトも関心を示していたという。走力を活かした守備範囲も広いが、打撃は細身で体が出来上がっておらず、走力がある選手にありがちな当てるだけのスイングになっているのが気がかり。プロではスタメンの座を勝ち取るのは難しいが、代走や守備固めといった一芸で生き残れる選手になりたい。

 

 

統一(指名7名)

①胡智為(フー・ジーウェイ) パドレス 182cm 90kg 27歳 右右 RHP

〇ストレート 経験 △コントロール スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) 11年:AAAアジア野球選手権 14年:アジア大会 19年:プレミア12

 先発としてフル回転したいMLB経験のある右腕。13~15年までツインズでプレー、15年にトレードでレイズへ移籍。翌16年に2Aでシーズンを通して投げ抜きERA2.75と好投すると17~18年にMLBにリリーフとして昇格し計11試合でERA3.52、K/9は8.2をマーク。18年のシーズンオフにインディアンスへトレード、3Aで不振に陥り19年8月にカブスマイナー契約。11月にはプレミア12で好投を見せ、その後パドレスマイナー契約も昨年はコロナウイルスの影響でプレーが出来ず、11月にFA。今季は味全で自主培訓選手としてプレー、11試合3勝1敗 38.2IP ERA0.70と完璧な投球でアピール。先発としてもストレートは150km以上を安定してマークし、ストライクゾーンを積極的に攻める投球が光る。変化球は落差の大きいチェンジアップとスライダーが効果的だが、制球にはやや苦しんでいる印象。19年は合計で48.2IP、昨年は登板なしと先発としての体力面が心配だが、統一が長く求めていた台湾人エースとなれる可能性は十分だ。

 

②張翔(ジャン・シャン) 平鎮高中 177cm 78kg 18歳 右右 C

〇守備 △パワー インサイドワーク

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 今ドラフトの高校生ナンバーワン捕手。平鎮高中入学後2年の終わりまでは成績を残せず、一度は転校を考えたほど。しかし3年に入り打撃への意識を高め、ウエートトレーニングを重ねたことで打力が向上。一気に評価を高めた。捕手としてのクレバーさ、キャッチング、ブロッキング、盗塁阻止能力もハイレベルとの評価。特に盗塁阻止能力はボールを握るまでの動作が短く、送球も安定しているため走者の抑止力となっている。一方で吳柏宏監督から「捕手としては大人し過ぎる」と評価される通り、インサイドワークが課題。打撃はシンプルなスイングから良好なバットコントロールを有し、3年になってからは成長著しく、昨年の黑豹旗ではベストナイン、今年の高校野球リーグでは高校公式戦初のホームランを記録しベストナインを獲得と、攻守にバランスの取れた捕手へと変貌を遂げた。統一では現一軍ヘッドコーチの高志綱のようなゴールデングラブ常連捕手になれる存在として期待がかかる。

 

③劉志宏(リョウ・ジーホン) 穀保家商 188cm 80kg 18歳 左左 LHP

〇ストレート 投球数の少なさ △コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 穀保のファイアーボーラー。高校入学時は120km前後だった球速が1年後半に141km、2年で147km、今年の王貞治盃の選抜大会では自己最速153kmをマーク。上から投げ下ろすフォームから平均でも143~145kmをマークするストレートで打者に威圧感を与える。しかしコントロールが最大の課題で、2年時には制球難を改善するため多くを金属バットの部でプレーしていたほど。身体を若干捻る投球フォームゆえかリリースポイントが安定せず、スライダーやカーブの精度が低い。幸いなのは穀保の厚い投手層もあり、投球イニングが少なく肩の消耗は抑えられていること。王奕凱(中信兄弟)と比較するスカウトもいるが、高校での最速は10km劉志宏が上回っており、ポテンシャルは十分。コントロールがプロで改善されれば、統一では貴重な左の速球派リリーフとして活路を見出せる可能性がある。

 

④楊竣翔(ヤン・ジュンシャン) 台東大学 178cm 76kg 21歳 右右 SS

〇内野3ポジション アップサイド △内角 守備の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 攻守に成長著しい内野手。高校は南英商工に入学も、出場機会や練習量が少なかったことから大理高中に転校し才能が開花。3年時には1番・SSとしてレギュラーを勝ち取った。大学進学後は細身だった体格も大きくなり、特に昨年の夏には体重を66kgから76kgに増量させたことで長打力が向上。3年になってからは公式戦で3本のHRを放った。打撃は積極的なスイングが光ると同時に粘り強いアプローチを兼備し、逆方向へも上手く打球を運ぶが、内角のボールへの対応が課題。守備は2B、3B、SSを守れ範囲も悪くないが、送球の正確さと安定感を高める必要がある。まだ若くアップサイドも見込めるため、課題が修正されれば内野の便利屋として一軍に定着できるだろう。

 

⑤李承鴻(リ・チェンホン) 普門中学 182cm 76kg 18歳 右右 RHP

〇フォーク メークアップ △対左打者

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 努力と落ち着きが光る高卒右腕。中学から外野手として野球を始め、高校から投手に転向。チームメイトから「練習狂」と呼ばれるほど練習熱心で、2年で球速が一気に20km以上もアップ。昨年はU18強化チーム入りも果たした。小さなテークバックから最速147km、リリーフとして141~144kmをマークするストレートで内角を厳しく突ける。変化球はゴロアウトを打たせられる縦に落ちるスライダーと、空振りを奪える球種としてスカウトの評価が高い130km前後のフォークの2球種。ただ両方とも左打者相手へ有効なボールではないため、チェンジアップの習得に取り組んでいる。走者がいる場面でも落ち着いた投球を見せられるのも強み。投球技術を更に磨き、勝ちパターンのリリーフを任せられる存在としてじっくりと育成したい。

 

⑥楊孟沅(ヤン・モンユエン) 台北市立大学 173cm 75kg 22歳 左左 LHP

△故障歴 特徴の無さ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 故障からの復活を果たした大卒左腕。平鎮高中では出場機会に恵まれず、金属バットの部でプレー。卒業後は台北市立大学に進学したが、1年時に左肩関節唇の損傷が発覚し手術。約3年をリハビリに費やし、実戦復帰は4年になってから。そんな中でもリハビリの成果もあり球速が最速142kmまでアップ。今年の大学野球リーグでは決勝戦で2.2IP/0Rの好リリーフで、大学21年ぶりとなる大会優勝に貢献した。ストレートは平均135km前後で、変化球はスライダーとカーブを投じるが、上背もなくオーソドックスなメカニクスゆえ、左投手が不足しているチーム事情があると言えどプロで活躍できるかには疑問が残る。左殺しのリリーフとして活路を見出せるか。

 

⑦謝修銓(シェ・ショウチュエン) 合作金庫 181cm 84kg 25歳 右右 SS

〇内野全ポジション △年齢

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 日本で磨き上げた守備力が光る内野手。父はサッカー選手、母は柔道選手という家系に生まれ、高校から野球留学岡山共生高と天理大学でプレー。岡山共生高の先輩にあたる陳傑憲、黃紹熙とは統一で再びチームメイトとなった。大学卒業後は台湾に帰国し合作金庫入り。昨年のポップコーンリーグでは10試合 打率.381、今年の春季リーグでは9試合 打率.313と活躍した。内野全ポジションをこなす高い守備力が武器で、打撃は確実なミート能力と変化球の対応力に長けるとの評価。今年26歳と若くなく、楊竣翔とも選手のタイプ的に重なる部分が多いが、まずは層の薄いSSの控えからアピールしていきたい。

 

味全(指名7名)

①吉力吉撈.鞏冠(ジリジラオ・ゴングァン) インディアンス 180cm 104kg 27歳 右右 C

〇パワー △守備 故障

主要国際大会経歴(高校以降) 14年:アジア大会

 打力に期待のマイナーでの経験豊富な捕手。高校までは3Bで、09年のAA世界野球選手権大会代表で最優秀三塁手に選出された。台湾体大で約1年プレー後、12年にインディアンスと契約し捕手転向。14年にRkで早速打力を発揮するも、15年9月にトミージョン手術を受け離脱。マイナー最初の3年は故障、手術で出場機会を得られなかったが、17年にAで125試合 打率.269 17HR 67打点 OPS.764と飛躍すると、18年もA+、2A、3Aで計99試合で10HR。19年は2Aで60試合に出場。しかし飛躍が期待された昨年は新型コロナウイルスの影響で空白の一年に。今季は長年戦ったマイナーでのプレーに別れを告げ、台湾に帰国し味全で自主培訓選手としてプレー。マイナーでは攻撃型捕手としてアピールした一方、守備面は大きく成長せず。捕手での出場試合数は全体の58.6%に過ぎず、DHでの出場も多かった。同じ攻撃型捕手として先にCPBL入りした張進德(富邦)との比較でも、マイナー通算OPSでは上回るが、守備率と盗塁阻止率では及ばない。また今季二軍では15試合 打率.294 1HR 6打点 OPS.796と図抜けた実力は見せられず、C/3Bを兼任しているが3Bの守備率が.600と守備面が不安。味全では打てる捕手として貧打に苦しむチームに貢献したい。

 

②曹祐齊(ツァオ・ヨウチー) 大理高中 186cm 87kg 18歳 右右 RHP

〇運動能力 メカニクス △故障

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 高い野球センスを見せる高卒右腕。父は統一で通算251試合に登板、中日でもプレーした曹竣崵。2年時の高校野球リーグで肘の炎症を起こし約8ヶ月実戦で投げられなかったが、その間にトレーニングに勤しみ球速が146kmまでアップ。復帰後は二刀流としてプレーし打撃でも高いセンスを見せた。しかし3年に入ってからも故障と復帰を繰り返し、現在のストレートは先発時137~142kmで、失投を痛打される場面が目立つ。変化球は縦に落ちるスライダーを最も多く用い、最も有効な球種となっている。他にカーブ、フォーク、チェンジアップも投げるが故障後は投球比率が減少。恵まれた体格を持ち、無駄のないフォームを身に付けており、状態が戻れば先発として2~3年後にローテ入りできるだけの素質を備えている。

 

③李展毅(リ・ジャンイー) 大理高中 188cm 115kg 18歳 右右 C/1B

〇パワー △1Bに移る? 走力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 今ドラフトの高校生でナンバーワンのパワーを有するモンスター。中学時代からそのパワーで名を馳せ、U15ワールドカップでは李灝宇(フィリーズ)とのコンビで3位に貢献。高校入学後は1年から4番を打ち、高校野球リーグで打点王ベストナイン、玉山盃ではホームラン王を獲得。2年時の高校野球リーグ、王貞治盃でもホームラン王とパワーをいかんなく発揮した。これぞパワーヒッターという体格から失投を逃さず広角に長打を放ち、またバットコントールも良く率も残せるのが強み。インコース高めのボールへの対応など修正すべきポイントも多いが、プロでも打撃タイトルを狙えるだけのポテンシャルを秘めている。走力は平均以下ながら積極的な走塁を見せる。3年になってから捕手としての出場機会が増え、キャッチング、ブロッキング、肩は平均レベルも盗塁阻止能力は平均以下で、体格的にもプロで捕手としてプレーし続けられる可能性は低い。そのため1Bとしての出場が現実的と思われる。

 

④吳秉恩(ウー・ビンエン) 平鎮高中 185cm 85kg 18歳 右右 RHP

〇コントロール 変化球 △スタミナ 球速の低下

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 常勝軍団を技で支えた技巧派右腕。高校入学後は二刀流としてプレーし、19年の高校野球リーグでMVPを獲得。2年からは投手に専念すると黑豹旗でMVPを獲得し、その他の大会でもリリーフとして幾度もチームの勝利を守り抜いた。コントロールが持ち味で、コーナーにしっかりと投げ分けられ、また変化球もスライダーは打者の左右を問わず効果的で、カウント球とウイニングショット両方で使える球種。チェンジアップは左打者に多く投じ芯を外し、高卒投手としての完成度は高い。他にカーブも投じる。一方でストレートのクオリティは平凡で、登板過多の影響か3年以降球速を落としており、最速143kmのストレートが平均でも135km前後になっていたのは不安要素。またスタミナも課題で長いイニングを投げると球速がはっきりと落ちる。ただここ最近は疲労によるフォームの乱れが改善され、球速を戻してきているとの報道もある。大きな故障が無ければ大崩れしないイニングイーターもしくはリリーフになれるだろう。

 

⑤張鈞守(ジャン・ジュンショウ) 南英商工 186cm 84kg 18歳 右右 RHP

〇体格 投球数の少なさ △コントロール 球種

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 まだまだ発展途上の南英のエース。中学校までは離島の澎湖在住で、高校から台南の南英商工へ進学。1年と2年はリリーフ中心の登板が多く、先発としての登板が増えたのは3年の後半から。テークバックの小さいフォークから最速147km、先発では135~140kmをマークするストレートは速くは無いものの、ストライクをどんどん投げ込み、打者が内角高めの速球に手を出すケースが多く空振りを奪える。変化球はスライダーの投球比率が高く、追い込んだ後はフォークで三振を奪う。コントロールは発展途上で、ストライクゾーンのコーナーを突く技術がまだないため、プロで磨きたい部分。また球種も先発としては少ないため、カーブなどの緩急ある球種を身に着け投球に幅を持たせたい。南英は大会への参加数が少なく、本人の登板機会も限られていたため高校時代の投球数が少なかったこと、体格やポテンシャルを考えれば先発としてじっくり育成したい。

 

⑥陳思仲(チェン・スージョン) 台北興富發 184cm 90kg 20歳 右右 3B/1B

〇パワー 内野3ポジション

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 打力が魅力の内野手。母が台湾人、父親がアメリカ人のハーフで、高校は強豪の穀保家商で主力として活躍。玉山盃、黑豹旗、高校野球リーグでベストナインを獲得した。高校卒業後はアメリカのEdmonds Community Collegeに進学したが、新型コロナウイルスの影響を受け昨年2月末に始まったリーグが僅か7試合で中止に。アメリカでのプレーが難しくなったことから台湾への帰国を決意。帰国後は社会人の台北興富發でプレーした。打撃はツボにハマると強烈な打球を飛ばし、メインの3B以外にも1B、2Bを守れる点も使い勝手が良い。打力のある野手が少なく、劉基鴻もまだ成長途上である味全にとっては下位で上手く指名できた選手といえる。

 

⑦邱辰(チョウ・チェン) 台湾体育運動大学 177cm 80kg 22歳 左右 OF

〇パワー △アプローチ 走力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 CPBL史上初となる左投右打の選手。台東にある利稻部落の布農族で、同部落出身者としても初のプロ野球選手となった。高校では1Bとしてプレー、大学2年から出場機会を増やすため外野も守るように。昨年のドラフトにも参加したが指名が無く、その後味全から自主培訓選手としての契約をオファーされたが、U-23ワールドカップの強化チームに入っており、大学での学業を修めることを優先したため入団しなかった。打撃はフルスイングが持ち味で逆方向への長打も少なくないが、アプローチが悪く高めのストレートへの空振りが多い。また外角の変化球にも脆さを見せていたが、大学4年になりこの弱点は改善の兆しがある。走力は平均以下、肩は平均レベルでコーナーOF向き。打撃の爆発力はあるが打球の質が安定していないため、プロでは技術を高め、味全には少ない右打ちの外野手として価値を見出したい。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

沙拉

https://www.sportsv.net/authors/salada