台湾プロ野球データベース コラム集

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2022CPBLドラフト指名選手リスト 台鋼(1~11巡目)

*1

 

曾子祐(ツェン・ズーヨウ) 平鎮高中 180cm 80kg 19歳 右右 SS

〇守備 コンタクト 走力 △外角 メンタル

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 不作と呼ばれる今年のドラフトで飛び抜けて評価が高い高卒SS。中平國小-新明國中-平鎮高中と桃園の名門でプレーを続けたエリートで、中学ではSS兼投手としてプレー、高校入学時は1学年上に李灝宇(フィリーズ)がいたため最初は2Bに回ったが、李灝宇の怪我に伴いSSに。高3ではキャプテンを務め「4番・SS」の重責を任された。そのような中でも高1、高2の玉山盃ではベストナイン、高2の高校野球リーグでは野手MVP、高3の高校野球リーグでは大会トップの打率.452、ベストナインに選出されるなど国内の大会では傑出した成績を残してきた。打撃は空振りが少なく、失投をしっかり捉える。一方で外角のボールには脆さを見せ、強豪校相手に結果を残せていないためメンタルに懸念がある。走塁は平均以上で積極的に次の塁を狙う姿勢が見え、守備はリズミカルで足捌きも良く、打球判断も素早い。「長打力を落として打率と守備力を高めた林承飛(樂天桃猿)」「江坤宇よりも守備力では劣るが、打撃では上回る」とのスカウトの評価がある。来年以降2~3年は同レベルの高卒遊撃手が出てきそうにないとの見立てからも、評価が高まっている。

 

伍祐城(ウ・ヨウチェン) 平鎮高中 181cm 86kg 18歳 右左 RHP

〇ストレート スライダー メンタル △健康

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 新球団のエースとなりたい右腕。中学から最速143kmをマークする投手兼外野手として大きく注目されるも、高校1年時は骨棘の除去手術を受けた影響でほとんど登板機会がなく、また2年に入ってからは地震による階段での転倒で右手を傷め手術を受け、2年後半からようやく実戦復帰。復帰後はリリーフ、先発の両方で目覚ましい活躍を見せ、昨年の黒豹旗ではリリーフとして重要な場面を抑えMVPを獲得。スムーズなメカニクスから速い腕の振りを見せ、ストレートはコントロール、質ともに申し分なく高め、低めどちらでも空振りが奪える。スライダーは125~130km前後で曲がりが鋭く、ベース前で急激に落ちる。また投球比率は少ないながらフォーク、チェンジアップも投じる。U-18ワールドカップではメンタルの強さを評価され抑えを務めた。台湾人エースが将来像だが、先発としてはスライダー以外に勝負できる球種を増やしたい。

 

紀慶然(ジ・チンラン) 中国文化大学 175cm 75kg 20歳 右左 SS

〇守備 走力 △パワー 攻守の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 華麗な守備が魅力の大学生SS。小学生からSSとしてプレーし、大学入学後は守備の動きがより軽快になり、すぐにレギュラーとして出場。今年の春季リーグでは打率.528をマークした。最大の武器である守備は捕球から送球がスムーズで、平均以上の肩を誇り、華麗なプレーを魅せる。走力は平均以上。打撃はスイングスピードが速く、バットコントロールも良いが、打球の多くはセンターから左方向で、引っ張った打球はゴロが多く、パワー不足。攻守の安定感もまだ不足しているため、二軍で経験を積み、新球団でSSレギュラー、そして上位打線を任せられる存在になりたい。

 

謝葆錡(シェ・バオチ) 国立体育大学 184cm 87kg 23歳 右右 RHP

〇球威 健康 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 大学で成長を見せた右腕。昨年のドラフトで指名されず、2度目の指名となった。高校時代は投手兼捕手で、大学入学後は1年から捕手としてレギュラーとなったが、3年の9月に投手転向。リリーフからスタートし、4年時は先発に転向。オーバースローから角度あるストレートは先発では平均136~140km前後をマーク。変化球は主な勝負球としている落差の大きいフォーク、スライダー、カーブ、チェンジアップと豊富だが、コントロールが課題。現状は変化球の状態が悪い際はストレート中心の投球で抑えているが、プロでは変化球のクオリティを高める必要がある。球威のある投手としては投手として肩の消耗も少なく、これが上位指名に繋がったか。2年後、一軍の先発ローテーションを守れる存在となりたい。

 

廖奕安(リャオ・イーアン) 国立体育大学 175cm 80kg 19歳 右右 C

〇キャッチング インサイドワーク △打撃

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 予想外の上位指名となった捕手。18年にはU-15ワールドカップ代表に選出。成徳高中でも攻守で高い評価を得ており、国立体育大学でも1年から主戦捕手として活躍、昨年の大学野球リーグ優勝の陰の立役者となった。打撃よりも守備に優れた捕手で、特にキャッチング、インサイドワークに優れているとの評価が多い。新球団が大学1年生の捕手をこの順位で指名したことからも期待の大きさが伺える。来季は二軍で経験を積み、攻守のレベルをより向上させたい。

 

顏清浤(イェン・チンホン) 台湾体育運動大学 175cm 75kg 22歳 右左 OF

〇走力 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 足とコンタクト能力でかき回す外野手。高苑工商時代は主に上位打線に入り、19年の高校野球リーグでベストナインを獲得。大学は台湾体育運動大学でプレー。細身の体格で、パワーはないものの野手のギャップを抜く打撃で、バントなどの小技も器用にこなす。俊足も武器としていることから、プロでも嫌らしさのあるアベレージヒッターとして活躍したい。

 

林家鋐(リン・ジャーホン) 国立台湾体育運動大学 175cm 72kg 20歳 右左 SS

〇バットコントロール 内野3ポジション △経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 内野のユーティリティーとして活路を見出したい選手。高校時代はパワー不足も、大学進学後体格ががっちりとし、パワーも向上。バットコントロールも良好で広角に打球を飛ばせる。守備はSS/2B/3Bの3ポジションをこなせ、守備範囲と安定感は平均。走力は平均以上。体格が細身で小柄であり、また高いレベルでの実践経験に乏しいことからプロで打撃に苦しむ可能性が高い。まずはバックアップから出番を得てアピールしたい。

 

黃紹睿(ホァン・シャオルイ) 国立台湾体育運動大学 175cm 80kg 20歳 右右 RHP

〇投球術 変化球 コントロール △球威 アップサイド

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 完成度の高い右腕。興大付農では小柄な体格、球速も目立つものがなかったため注目を集めていなかったが、大学入学後から先発として頭角を現し、昨年の大学野球リーグでは2勝 31.2IP ERA0.57と活躍し投手賞を獲得。陳冠宇(樂天桃猿)から佐々木千隼(ロッテ)に似ていると評された投球フォームから、ノビのあるストレートは今年のCPBLトライアウトでは自己最速の146kmをマーク、平均130km後半。これに加えてスライダーと110km前後の遅いカーブ、125km程度の落差あるチェンジアップを組み合わせ、球速差と落差で打者を翻弄する投球が持ち味。コントロールも良く大崩れしないため、計算できる先発投手として存在価値は高い。体格が小柄でアップサイドは小さいとみられるがプロ入り後どこまでストレートの球威を増し、変化球のレベルアップを図れるかがポイントとなりそうだ。

 

陳宇宏(チェン・ユーホン) 安永鮮物 180cm 72kg 21歳 右右 RHP

アンダースロー コントロール △変化球

主要国際大会経歴(高校以降) 21年:U-23ワールドカップ

 苦難を乗り越え輝きを見せたアンダースロー。高校1年までは野手も、出場機会を増やすため2年生で投手に転向すると、3年時にエースとなった。大学は稲江科技曁管理学院に進学も、1年時に野球部が休部。その後環球科技大学に転校し、チームを大学野球リーグの一部昇格に導いた。昨年は社会人の安永鮮物に入団、U-23ワールドカップ代表に選出され、ERA0.00 2勝で最優秀防御率、先発投手としてベストナインの活躍を見せた。最速133kmのストレートは、アンダースロー特有のシンカーに近い軌道を辿り、スライダーと稀にチェンジアップを織り交ぜる。コントロールの良さも相まって内外角のコーナーに決まりだすと好調のサイン。一方でスライダーは110km程度と遅いためか打者に見極められることが多く、変化球の球威をアップさせたいところ。久々に純粋なアンダースローの先発投手が一軍で活躍できる日を楽しみにしたい。

 

黃劼希(ホァン・ジェシ 穀保家商 177cm 75kg 18歳 右右 2B/SS

〇コンタクト 走力 △パワー 守備の安定感

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 江坤宇(中信兄弟)のような存在になりたい高卒内野手。1年時は2Bメインも、2年以降はSSレギュラーの劉俊緯の故障などでSSを守ることもあった。20年の黒豹旗、昨年の高校野球リーグでは2Bでベストナインを獲得。打撃は低めのボールに強く、強いライナー性の打球が多い一方、パワーに乏しい。運動能力は高く、走力は平均以上。肩と守備範囲は平均で、守備は華麗なプレーを見せる一方で安定感を欠く場面も見受けられ、安定感アップが課題。今年はU-18ワールドカップに代表入りを果たし、3BとSSを守る機会も増加しているが、プロでも内野3ポジションを高いレベルで守れる選手として価値を示したい。

 

高聖恩(ガオ・シェンエン) 国立体育大学 182cm 74kg 22歳 右右 OF

〇守備範囲 コンタクト

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 走攻守にバランスの取れた外野手。南英商工では4番を打ち、国立体育大学に進学後もCFとしてプレー。守備範囲の広さ、コンタクト能力に定評がある。今年の春季リーグでは打率.353 OPS.862をマーク、U-23ワールドカップの強化チーム入りを果たした。

 

陳柏清(チェン・ボーチン) 安永鮮物 182cm 88kg 24歳 左左 LHP

〇コマンド △球種

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 先発ローテーション入りに期待したい左腕。南華大学を卒業後、社会人の安永鮮物でプレー。大学では3年時に肘の靭帯を部分断裂しPRP治療を選択しリハビリとトレーニングに励むと、4年時には自己最速の144kmをマーク。どっしりした下半身を持ち、130km後半のストレートと120km前後のスライダーをコーナーに集めて打ち取る。球威があるわけではなく、先発として活躍するには今後球種を増やすことが不可欠。貴重な左腕先発として新球団で試合を作れる存在になりたい。

 

曾品洋(ツェン・ピンヤン) 南華大学 188cm 83kg 23歳 右右 RHP

〇ストレート 体格 △経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 ブランクを経て飛躍した大学最速右腕。兄は昨年まで中信兄弟でプレーした曾家鋐。中学3年時の右手尺骨の骨折の治療のため一度野球を諦め、高校ではプレーしていなかったが、大学で再開。入学は中華医事科技大学も3年時に南華大学に転校。プレー環境の整った南華でレベルアップし、今年のCPBLトライアウトでは参加者最速の153kmをマーク。変化球はスライダーとカーブ。メカニクス、デリバリーもスムーズ。実戦経験は少ないためこれから場数を踏み、恵まれた体格を生かした力で押せるリリーフ右腕として勝ちパターンに入りたい。

 

陳翊瑄(チェン・イーシュエン) 中国文化大学 175cm 75kg 20歳 右右 RHP

〇スタミナ 内外角の投げ分け △体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 2年生にして中国文化大学のエースとなった右腕。大学入学後はリリーフがメインだったが、2年生になりエースとして先発の機会が増え、今年の春季リーグでは16イニングを無失点に抑え投手賞を獲得。上背はないが、先発として平均142km前後、最速147kmのストレートで、浅いカウントではカーブでカウントを稼ぎ、130km前後のスライダーとフォークをウイニングショットとする。ボールに角度がない分を、内外角の投げ分けで補っている。先発として長いイニングを投げても球速が大きく落ちないのも長所。体格には恵まれておらずアップサイドは見込めないため、イニングイーターとしての先発またはロングリリーフでの活躍に期待。

 

鄧佳安(デン・ジャーアン) 輔仁大学 183cm 80kg 19歳 右右 RHP

〇投球フォーム △コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 将来の先発候補。鶯歌工商から昨年輔仁大学に入学し、1年生での指名となった。今年の春季リーグでは5試合 14.2IP ERA0.61の好成績。上から投げ下ろすフォーム+ショートアームで球の出所が見にくいフォームが特徴。先発として140km前後のストレートに、カーブとスライダーを組み合わせ、稀にチェンジアップも投じる。ストレートは角度があるものの、コントロールにばらつきがある。スタミナは平凡で、先発として使える球種が不足しているため、まずはじっくりと育成していきたい。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

小楓康

https://www.sportsv.net/articles/95992

logic

https://www.sportsv.net/articles/93442