台湾プロ野球データベース コラム集

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2022CPBLドラフト指名選手リスト 味全+富邦

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味全(指名7名)

林凱威(リン・カイウェイ) 米独立 178cm 79kg 26歳 右右 RHP

〇ストレート スライダー 健康 △コントロール

主要国際大会経歴(高校以降) 14年:U18アジア選手権 19年:プレミア12

 アメリカで経験を積んだ守護神候補。中学まではSSも、成徳高中の1年途中に投手転向。半年足らずで140kmを超えエースに成長、国内外スカウトの注目を集めた。高校卒業後にダイヤモンドバックスに契約金30万ドルで入団。16~17年はRkで経験を積み、18年はA-、19年はAでそれぞれERA3点台と一定の結果を残し、19年にはプレミア12代表に選出。昨年はA+で29試合 ERA4.78、今季は2Aで11試合 ERA4.41も5月にリリース。その後、米独立アトランティックリーグのロングアイランド・ダックスに入団し19試合でERA2.18。マイナー通算K/9が8.8と奪三振能力に優れる一方で、昨季と今季のBB/9が3.9と近年はコントロールにやや苦しんでいる。最速153kmのストレートに、メジャー級と高い評価を受けるスライダーは威力があり、カーブ、チェンジアップ、フォークも投じる。現在味全は伍鐸が抑えを務めているが、球威不足は否めない。大きな故障歴もなく頑丈であることもプラス要素で、即戦力としてダブルストッパーまたはセットアッパーとしての活躍が期待される。

 

冉承霖(ラン・チェンリン) 遠東科技大学 183cm 71kg 21歳 右左 OF

〇スピード 肩 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 サプライズ指名を受けた外野手。上位指名予想をしていたメディアはほとんどない中での2位指名となった。高校は台南海事でプレーし、19年に味全が久々のドラフトに参加した際は指名候補に挙がっていたが、大学での成長を見守るため指名を見送った過去がある。大学進学後は1年時は控えに回ることが多かったが、2年から成長を見せ、走力と強肩を強みとするOFとなり、今季の春季リーグでは打率.576で首位打者に。大きなストライドで三遊間に飛んだ打球が内野安打に、外野の深い場所に飛んだ際は三塁打になることが多い。ポジションがCFであることから陳晨威(樂天桃猿)と比較する声もある。味全は郭天信や林孝程など、似たタイプの俊足外野手が一軍で出場機会を得ているため、ポジション争いは厳しいが、ギャップを抜くパワーが身に付けば差別化できる要素となりえる。

 

吳君奕(ウー・ジュンイ) 中信金融管理学院 181cm 75kg 21歳 右左 RHP

メカニクス 奪三振能力 △スタミナ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 奪三振能力の高い右腕。5巡目で指名の鄭亦軒と共に、中信金融管理学院から初のプロ野球選手となった。高校までは投手以外にもCやSSとして下位打線に入ることが多かったが、大学では投手に専念し科学的なトレーニングを取り入れ体格が逞しくなり、エースとして活躍。球速は今年147kmをマークした。下半身がしっかりとしておりメカニクスはスムーズで、140~145kmのストレートは内外角の低めにコントロールできる。勝負球はストレートと同じ軌道を辿る約130kmのスライダーを組み合わせ、今年の春季リーグでは21IP/22Kと高い奪三振能力を示した。またフォークとチェンジアップも稀に投じる。先発としては回を重ねると球速が大きく落ちるため、リリーフ向きか。

 

林子宸(リン・ズーチェン) 国立体育大学 178cm 85kg 20歳 右右 3B/SS

〇パワー 肩 △アプローチ 3B向き?

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 長打力が武器の内野手。高校時代は前半はOFを守り、後半は走攻守三拍子揃ったSSとして評価を受け、昨年の高校卒業時はドラフト参加を迷った末に大学進学。しかし大学では思ったような成績を残せず、三振の多さが目立った。打撃はスイングスピードが速く、長打を意識した引っ張る打球が多い。一方で流し打ちの技術やボール球に手を出しやすいアプローチの悪さは要改善。走力は平均レベルも全力疾走を怠らず、出塁後も常に先の塁を狙う姿勢が見える。肩は平均以上も守備範囲は平均で、大学入学後に体格ががっちりとし、敏捷性が低下していることから、3Bとしても安定感ある守備が難しくなっている。攻守に粗削りだが、プロ入り後は体重を落として、打力のある3B/SSとしてアピールできるか。3Bとしては范國宸(富邦)のような存在になれれば面白い。

 

鄭亦軒(ジェン・イーシュエン) 中信金融管理学院 188cm 96kg 22歳 右右 RHP

〇球威 リリーフ向き? △コントロール 変化球

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 困難を乗り越えた火の玉右腕。中学時代から最速141kmをマークするも、高校では投球フォームを崩しイップスとなり、3年間はほぼ野手としての出場に終わる。一時は野球を辞めることも考えるほどだったが、大学入学後はフォームショートアームに修正、科学的なトレーニングも取り入れ球速が大幅にアップ。ドラフト前に台鋼が独自に行ったテストでは、参加者最速となる155kmをマーク。がっちりした体格からリリーフでも平均150kmを投げられ、上にホップする軌道で空振りを多く奪う。変化球は全体的に質を高める必要があり、カーブでカウントを稼ぎ、右打者にはフォークで、左打者にはチェンジアップで仕留めるパターンが多い。コントロールに難があり、今年の春季リーグでは15.2IP/13BB。球威を生かすには、リリーフの方がチャンスがありそうだ。

 

許元泰(シュ・ユエンタイ) 国立体育大学 180cm 80kg 20歳 右右 RHP

メカニクス 球種 △コントロール 経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 これからの伸びしろに期待の右腕。16年にU-15ワールドカップ代表入り。穀保家商では主にOF、稀に投手としてプレーも、2年の終わりまでは金属バットの部でのプレーし、チームが強い時期と重なったこともあり注目度は高くなかった。大学進学後、投手に専念。上背は大きくないもののメカニクスがスムーズで、フォームは美馬学(ロッテ)にそっくりとの声もある。ストレートは先発時は平均137~142km。変化球は勝負球として用いる縦に割れるスライダー、カウント球のカーブ、フォーク、チェンジアップと豊富。課題はコントロールで調子の良い時はコースに決まるが、悪い時は突如はっきりとした抜け球を連発してしまう。大学2年になってから先発として実戦経験を積むようになったため、完成度は高くない。二軍で先発として経験を積んでいき、自分に適したポジションを見つけたい。

 

藍翊誠(ラン・イーチェン) 安永鮮物 190cm 90kg 24歳 左左 LHP

〇体格 △コントロール 実戦経験 球種

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 プロ入りの夢を叶えたエリート左腕。高校は男子校の名門である建国中学、大学は台湾トップの台湾大学化学学部を卒業。同大学初のプロ野球選手となった。昨年大学を卒業後、会社員として働くもオフィスでの生活が合わず退職し、2年後までにドラフト指名を目指すため、科学的なトレーニングに定評のある安永鮮物でプレー。チャップマン(ヤンキース)に似たフォームから投じるストレートは、大学4年時にパーソナルジムに通い最速130kmから142kmまでアップし、平均135km前後。変化球はスライダーを投じる。上背はありストレートに角度はあるものの、リリースポイントが安定しておらず、コントロールに課題がある。また安永鮮物ではほとんど実戦登板がなく、未知数な部分も多い。現時点の実力ではプロでは厳しいものと見られ、まずは二軍で技術を向上させたい。

 

 

富邦(指名12名)

黃保羅(ホァン・バオルォ) 平鎮高中 185cm 80kg 18歳 右右 RHP

〇コントロール 投球術 △故障歴

主要国際大会経歴(高校以降) 22年:U-18ワールドカップ

 未来のエース候補。中学までは野手としてプレーしU15アジア選手権に代表選出。高校入学後に投手転向するとすぐに金属バットの大会で活躍したが、2年になり肩の違和感で長期離脱し昨年12月に復帰。復帰後は球速もアップし、今年4月には自己最速となる151kmをマーク、今年6月の王貞治盃ではMVPを獲得した。長い手足から速い腕の振りで、先発時は平均142km~146km前後のストレートで内外角をしっかりと突け、130km前後の縦に落ちる勝負球のスライダー、カウント球である120km前後のカーブ、フォーク、チェンジアップと多彩な変化球を組み合わせ、少ない球数で打者を打ち取る術に長ける。高卒ではあるが完成度は高く、まとまりのある先発投手として、将来富邦の台湾人エースになれるか注目したい。

 

潘奕誠(パン・イーチェン) 台湾体育運動大学 185cm 75kg 22歳 右右 RHP

〇アップサイド △球威

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 意外な高評価を受けた右腕。これまで大きな実績は残してこなかったが、味全2巡目の冉承霖と並んで驚きの上位指名となった。富邦のスカウトの中では大学投手のリストでは5位以内に入っていたという。大学では主にリリーフとしてプレー。細身の体型から繰り出す最速148km、先発時は平均137~142kmのストレートは空振り率が低いのが課題。スライダーは曲がりが大きいもののコントロールに難あり。大学では大きな成長がなく、完成された投手とは言えないが、アップサイドに期待。体作りを行い球威が向上すればプロでもリリーフ向きか。

 

池恩齊(チ・エンチ) 新北市 173cm 76kg 19歳 右左 SS

〇守備 走力 △打力

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 守備に期待がかかるSS。吳俊偉(中信兄弟)は兄。もともと右打だったが、高校在学中に左打に転向。高校卒業後は社会人の新北市でプレー。SSとして守備範囲は広く、打球への反応も良好。走力も平均以上だが、打撃は非力で修正するべき点が多く、3巡目での指名はオーバーピックとの声も多い。高卒社会人で若く、二軍で打力をどこまで伸ばせるかが今後を左右しそうだ。

 

蔡佳諺(ツァイ・ジャーイェン) 開南大学 183cm 84kg 20歳 右右 OF

〇パワー

主要国際大会経歴(高校以降) 19年:U-18ワールドカップ

 主砲になるポテンシャルを秘める実力者。小中高で世界大会代表に選出され、19年にはU-18ワールドカップ代表として世界一を経験。国内大会でもタイトル獲得の常連だった。大学は中国文化大学に進学したが、出場機会を求めて開南大学に転校。がっちりとした体格から、スイングスピードの速さと爆発力で長打を生み出す。走力は大学で体重を増やしたことから平均レベル、肩と守備範囲も平均レベルなため、コーナーOFを難なく守れるだけの守備力は備えている。富邦OFの課題である「打てるけど守れない」を解消できる存在になれるか。

 

林岳谷(リン・ユエグ) 国立体育大学 178cm 70kg 21歳 右右 2B/SS

〇守備 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 華麗な守備が売りの内野手林英傑(樂天桃猿コーチ)はいとこにあたる。穀保家商時代から足捌きや打球判断に長けた守備型の内野手として高い評価を受けた一方で、打撃は大きく成長を見せず。大学では1年からレギュラーとなり1番打者を務め、2Bをメインに守るも去年からSSに挑戦。SSとしては守備範囲が広く華のあるタイプで、肩の弱さを送球の速さでカバーしているが、エラーが多く安定感については改善の余地がある。細身の体型ながら大学進学後はパワーに向上が見られたが、スイングのフォロースルーが大きすぎるゆえゴロの打球が多く、長打が出にくい。また外角のボールを体ごと追いかけ引っ掛けてしまう癖を修正したい。現状の打力では池恩齋と同じくプロで苦労する可能性が高く、富邦の穴であるSSを埋める存在になれるかは疑問。

 

周佳樂(ジョウ・ジャーレ) 輔仁大学 172cm 65kg 23歳 右左 OF

〇コンタクト △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 走攻守三拍子揃った外野手に成長したい選手。スイングスピードが速く、コンタクト能力に長ける。富邦はOFが右打者に偏っており、左打者のOFを確保するため指名したとみられる。目指す将来像としては陳文杰(中信兄弟)や郭天信(味全)のような上位打線を任せられ率も見込める俊足巧打タイプか。

 

林栚(リン・ジェンチェン) 美和科技大学 195cm 83kg 22歳 右右 RHP

〇角度 アップサイド △コントロール 線の細さ

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 荒削りの長身右腕。ボールの出どころが見えにくいフォームから、長身を生かした角度のあるボールを投げ込み、最速は146km。線が細く、上半身優位のフォームでコントロールに課題がありまだまだ粗削りだが、アップサイドは大きい。球威を生かして勝ち継投に入れると面白い存在。

 

郭泰呈(グォ・タイチェン) 彰化芸中 178cm 80kg 19歳 右左 RHP

〇フォーム 球種 △投手経験

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 彰化の二刀流右腕。投手兼OFとしてプレーも、プロ入り後は投手に専念するものとみられる。投手としては元々コントロールが悪かったが、約2年間かけフォームを修正し球速、コントロールが改善。3年以降もリリーフ中心の登板だったが、実戦でのイニング数を増やしていった。ショートアームを取り入れたフォームから、平均137km~140kmのストレート、トライアウトでは自己最速タイの146kmをマーク。変化球はスライダーとチェンジアップがメインで、最近はフォークも勝負球にしようと習得に励んでいる。投手としての経験が少ないため、じっくりとリリーフとして育成していきたい。

 

黃子宸(ホァン・ズーチェン) 嘉義大学 188cm 78kg 19歳 右左 RHP

〇体格

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 バランスに長けた右腕。南英商工では1学年下に阮裕智と尹柏淮がいたため、存在感は薄かった。長身を生かしたフォームから135km~140kmのストレート、スライダーを投じる。昨年の玉山盃では自己最速145kmをマーク。長身痩躯で身体的な伸びしろも見込めるため、今後の大化けに期待。

 

賴柏均(ライ・ボジュン) 輔仁大学 173cm 68kg 21歳 右左 SS

〇SS守備 △パワー

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 下位指名の隠し玉となりたい内野手新北市出身で、キャリアを通して新北市の学校でプレー。大学入学後はSSのレギュラーに定着。最大の武器は守備で、広い守備範囲を誇り、逆方向の打球も難なく処理でき強肩も併せ持つ。打撃ではバットコントロールは良好もパワー不足。その点では5巡目指名の林岳谷と重なる点が多い。富邦はSSの人材難に喘いでいるが、高い守備力で差別化できるか。

 

豊暐(リー・ウェイ) 台北市立大学 176cm 83kg 23歳 右右 C

〇パワー 肩

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 強打の捕手。「豊」姓のプロ野球選手は史上初。高校は平鎮高中に進学するも、同期は古林睿煬(統一)、江坤宇(中信兄弟)、林靖凱(統一)などがいる黄金世代であり、出場機会に恵まれず。そのため1年後に地元・宜蘭にある中道中学に転校した。台北市立大学ではC兼OFとして3年から出場機会を増やし、4年からは主戦捕手に。長打力と盗塁阻止能力に高い評価を受ける。小学校では右打、中学で左打に転向も、大学3年時に打撃で結果が残せなかったことから再度右打に転向した。張進德以外に打力が十分な捕手がいないチームに風穴を開けられる存在になりたい。

 

林華偉(リン・ホァウェイ) 穀保家商 180cm 81kg 19歳 右右 RHP

〇球種 メンタル △フォーム

主要国際大会経歴(高校以降) なし

 強豪校で火消し役を担った右腕。ドラフト指名時は氏名が富邦GM林華韋と同じ発音であることが話題となった。穀保家商では短いイニングでの登板がメインで、ピンチの場面でも落ち着いて勝負できる冷静さを持ち合わせる。球種は最速147km、平均138~143kmのストレート、キレのあるスライダー、チェンジアップ、フォーク、カーブと多彩。投球時に腕を振る際に体に近付きすぎているため、肩への負担がかかるフォームになっているのが気がかり。

 

参考

Taiwan Baseball Notes

https://taiwanbaseballnotes.com/

小楓康

https://www.sportsv.net/articles/95992

logic

https://www.sportsv.net/articles/93442